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アルビス 自由なる魔法使い  作者: ぼん@ぼおやっじ


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02-26 霊峰魔境~普通の駆け出し冒険者

第26話 霊峰魔境~普通の駆け出し冒険者



「風光明媚」


「ふーこ?」

「めび?」


「うん? えっとね、奇麗だなってこと」


「「うん、きれーーっ」」


 と子供らが言葉を交わす通り霊峰魔境はとても美しいところだった。

 門を出てすぐはなだらかな坂で、緑の草と色とりどりの花が咲き、草原のような景観だった。そこをしばらく進むと木々が多くなり。森といっていい様相を呈する。


 しかも水が豊かでところどころに湧水とそのながれる小川がうねっていて、泉や湖が点在している。水は鏡のように澄んで空や森を映している。


 そしてその森の向こうには白く峻厳な山々が連なり、ひときわ高くそびえるのは天界につながるといわれる霊峰アファナシア。この国の名前にもなった神話にも出てくる美しい山だった。


 そんな草原をポテポテ歩く三人の子供と…ネコ。


「モップってさ、いつの間にか姿を消しているよね。

 そんでいつの間にか合流してるんだ」


「「う?」」


 アルビスは不思議に思ったが、双子はそんなものだと思っている。ネゴ基準がこいつだからな。


「うなーおおぅぉっ」


「何言ってっかわからんて…まあ、なあ…」


 異世界の猫だからそんなこともあるかもね…で納得するアルビス。

 ここに常識を持ったやつはいないのだ。

 そんな草原だが、アルビスたちの他にも割と年若い冒険者が徘徊している。

 草をかき分け、あるいはむしりまくってはいずり回る若者たち。


 何をしているんだろう?

 と思った。


 なので素直に聞いてみた。


「何しているの?」


「何って薬草を探しているんだよ、みりゃ分かるだろう?」


「んーん、全然わからない」


 片っ端から草を毟ってそれを放り捨てるを繰り返しているのだ。

 桜吹雪ならぬ草吹雪で遊んでいるようにしか見えなかった。

 少なくともこれで薬草が見つかればすごいと思った。


(まあ、これもギルドがいい加減だからだよな)


 アルビスはここに来る前、ギルドに寄ったときのことを思い出した。

 アルビスはこの辺りで取れる薬草の見本でもないかとよってみたのだ。


 だがなかった。それどころか。


『そんなことは先輩冒険者に習って覚えるもんだよ、そんなことも知らないか?』


 とか悪態をつかれた。

 マニュアルがあれば効率が良くなるのに。と思ったが、未開文明じゃこんなものかとも思う。

 地球にだって仕事はやって覚えろ。とか、先輩の仕事を見て盗めとか言う前時代的な会社も多かったのだ。

 芸術的、感覚的なものならそれしかないのかもしれないが、マニュアルがあればだれでもできることにまでそれをやるのは三流だとアルビスは思う。

 作者も思う。


(にしてもすごい作業だ)


 アルビスたちの見ている前でその冒険者(若輩)は草をむしり続ける。

 その後ろでむしった草の中からなにがしかをより分けて仕舞う冒険者もいる。

 どうやら三人のチームらしい。


「草むしり?」

「きれいになる?」


「お前ら何にも知らないんだな。ここはもう魔境なんだ。草なんか毟ったって二、三日で元に戻るよ。この辺りは俺たちの狩場だから勝手にとるなよ」


 ということらしい。


「おーっ。地虫が這いずってるぜ」

「ご苦労なこったな」

「頑張れよ、小銭稼ぎ」

「おー」


 そんなことをしていたら別の冒険者のチームが通りかかった。

 草を毟っていた冒険者たちに声をかける。というか皮肉っている。

 年齢的には少し上ぐらいだ。


「うるさい、お前らだって少し前までは草むしりだったじゃないか、ウサギぐらい俺たちだってそのうち狩れるようになる」

「「そうだそうだ」」


「そんなガキども交えてか?」

「ぎゃははは、何年後だ?」


 うん、あまり中はおよろしくないらしい。

 その後『お前らのせいで言い負けたじゃないか』と、追い払われたので…


「よし、今度は目標変更だ。あいつらを追いかけるぞ」


 今度は四人組のほうを追いかける。

 もちろん近づくと絡まれそうなので魔識覚を利用して遠距離追尾だ。


 その四人組の冒険者はしばらく山を登ると広々としたお花畑のような場所に出た。そしてその中で散らばると何やらごそごそと動き回って…


「でたぞー」


「いた、穴ウサギだ」


「逃がすな!」


「追い込め」


 どうやら兎狩りをしているらしい。

 ウサギと聞いてアルミラージを思い浮かべたアルビスだったが、ここのはそれとは違うらしく、30cmぐらいのブチの兎だった。


 小石をまとめて投げつけ、ひるませた後、こん棒を持った少年が殴り掛かり、見事に躱されてつっころび、みんなで右往左往。


 物陰から見ていて(あんなんで取れるの?)

 と思う。

 もちろん取れません。


「網―――っ」

「まだ広げねーよ、はえんだよ、バカ!」


 高校生ぐらいの男の子がウサギにあしらわれてワタワタする図。


「へたっぴ?」

「よわよわ?」


 双子の感想が辛辣だ。

 当然彼らはその兎に逃げられてしまった。


 アルビスは真剣に思う。


(これって何かのギャグ?)


 アルビスは今まで他人の強さというものを冷静に観察したことがなかった。

 コンラートは強かったし、自分の相手をしているときは当然手加減していると思っていた。

 ミジンコ男爵の部下は弱かったが、攻撃は長距離魔法だったし、そもそも悪役の下の戦闘員だから、なんとなくパンチ一発で吹っ飛んで不思議はないような気がするのだ。戦闘員てそういうものだから。


 あとクマさんは普通に強かった。


 だが戦って勝てるか? という話だと勝てると思う。

 相手の攻撃の届かないところから魔法を撃ち込めばいいのだ。だが、対峙して戦えば負けるだろうとも思っていた。


 なので高校生ぐらいの少年たちがウサギに翻弄されるのはちょっと衝撃的。大きい人間はもっと強いような気がしていたのだ。


 衝撃は次の戦闘の見学で決定的になった。

 少年たちはパニックウリボウに出くわして、なんと蹂躙されてしまったのだ。


「畜生、なんでこんなところに強い魔物が出るんだよーーーー」


 少年たちの悲痛な叫び。


(ええーーーーーーーーっ、マジ?)


 アルビスの心の叫び。


「「お肉に負けた」」


 双子のおなかの叫び(?)


 少年たちは荷物から何かの塊を投げ、どうやらそれは餌であったらしく、パニックウリボウが群がっているうちに撤退していった。

 たぶん狩りの道具だと思われる縄を編んだ網のようなものもおきっばなしで。


「普通のひとってあんなに弱いの?

 いやいや、まてまて、たぶん、彼らが特別に弱いんだ…」


 いいえ、彼らぐらいならこんなものが標準だよ。

 なんとなく信じられなくて屁理屈をこねてしまうアルビスだったりして。


◇・◇・◇・◇


「ひょっとしたらこの辺りの魔物が特別に強いのかもしれない」


 まだ現実を受け入れられない。


「だから慎重に攻めよう」


「「はい!」」


 うん、それはいいことだ。


 アルビスたちは山を登り、いつしか森の手前、木々が少しまばらなあたりに差し掛かった。

 目を閉じて魔識覚で気配察知をする。

 目を閉じて周囲を意識すると額の中央に力が集まり、脳裏に周辺の地図が、ワイヤーフレームのように浮かび上がる。

 そこに浮かび上がる光の点は次第に形をとって動物、魔物だと理解できる形になる。


 だが今探しているのはそれではない。薬草が欲しいのだ。


 アルビスはワイヤーフレームの立体地図を睨みながら薬草を思い浮かべる。

 魔力がさっと広がったような気がした。風のように吹き抜ける魔力。


 そして地図の中に浮かびあがる反応。


「見つけた、薬草だ」


 最近覚えた魔識覚の使い方だった。今日も大変調子がいい。


「よし、まずは薬草取りだ」


「はい、がんばりましゅ」

「いっぱいとるぞー」


 薬草取りなどは母に鍛えられていて三人とも基礎は出来ている。

 場所だけ指定してやれば…だいたいうまくとれる。うん、だいたい。


 アルビスは精霊ウィキを参照しながら今まで見たことのない薬草をいくつかみつけて回収。大変好調だったのだが…いつの間にかパニックウリボウも見つけてしまった。

 というか、なぜか突撃してきた。


「ぷぎーーーーっ」


 そしてアルビスたちを見つけ早速パニックを起こして走り回るウリボウたち。

 逃げりゃいいのに大体一定の範囲内を全力で走り回る。


「危ない!」


 アルビスはとっさに双子を抱え上げ、空に逃げる。カゼコマが即座に発生してアルビスを空中に支えた。

 先ほどの戦闘の印象から警戒したのだが…


「「おもしろいのー」」


 三人の眼下を全力で右往左往するウリボウたち。

 あんまり強そうに見えない。


「アーネ、風であいつらの動きを押さえて」


「はいです」


「エドは動きが鈍くなったウリボウの頭を…ちょっと加熱してやりな」


「はーい」


 ディアーネの操る風がウリボウの動きを疎外する。隠者の手が混じっているためにウリボウたちにしてみれば空気の抵抗力が増してゲル状の液体の中にいるみたいな感じになる。

 途端に動きが鈍くなってさらにパニック。


 そこにエドワードがヒートタッチでウリボウの頭を加熱する。

 生き物を構成するたんぱく質は実はかなり熱に弱い。

 正常に稼働できる範囲が狭いのだ。


 特に高温は42度を超えたあたりから致命的なダメージを発生させる。

 頭部を、つまり脳をたちまち100度近くまで加熱されたウリ坊は次々に倒れていった。


 そしてあと二頭。というところでアルビスは双子をクロノの背に預け、二人の魔法を解除させて下に降り立った。


「「ぷぎぎーーーっ」」


 さすがにやばいと思ったのか即座に逃げにかかるウリボウたち。

 だがアルビスの方が速かった。


 魔力で身体強化された体はあっという間にウリボウに追いつき横からの掌底。もちろん魔力を帯びた攻撃で、掌底は衝撃波を起こしてウリボウの体内を破壊した。

 そしてさらにもう一匹。

 今度は突進を躱しながら手刀をその首筋に。


 無属性魔力の力場をまとった手刀はそのままウリボウの首を切り落としてしまった。


 しばし呆然とたたずむアルビス。

 そして…


「あれ? ひょっとして俺って…強い?」


 衝撃の事実だった。


 □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □


9月/アルビス7歳/双子4歳8か月



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