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アルビス 自由なる魔法使い  作者: ぼん@ぼおやっじ


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02-25 興味深い錬金術~北の門の門衛さん

第25話 興味深い錬金術~北の門の門衛さん



 あさ、といっても日は完全に上っていて働き者はみんな働きだしている。

 なので町は朝の喧騒より一歩引いた感じの落ち着きを持っていた。


「にいちゃま、どこ行くの?」


「うーん、そうだな、北の城壁の外は魔境だというし、浅い魔境の人の来ないようなところに取り敢えずテントを出して、そこでつぎの秘密基地の場所を探す感じかな?」


 テントといってもボールハウスのことだ。


「ぼく秘密基地好きー」

「わたしもー」


「うん、わかるわかる。秘密基地はロマンだよね」


「「ねーーっ」」


 分かってないだろお前ら。

 そんな緩い話をしながら冒険者ギルドに向かう。

 どうせ北に行くにはギルドの前を通るのだ、薬草関係の依頼がどんなもんだかチェックを入れようと思ったのだ。

 たのだが…


「こら、なにをさぼっとるか、朝の仕事はまず掃除からだ、掃除もまともにできんやつがいい仕事ができるか! 先輩たちもみんな掃除をしてきたんだぞ!」


「「「すんません」」」


 道を歩いているとそんな声が聞こえてきた。怒鳴り声ね。


 なのでそこを見てみると『マイセン流錬金道場』という看板の掲げられた大きな建物があった。


「おおー、錬金術」


 これもロマンだ。つい声に出る。

 その声が聞こえたのだろう、掃除をしていた子供たちがこちらを向いた。

 アルビスよりも少し年かさなぐらいの子供達だ。


「何だガキども、お前ら錬金術に興味があるのか?」

「だめだめ、魔法ってのはな、選ばれた者のみが使える…なんだっけ?」

「選良の…なんだっけ?」


 アルビスは思った。

 魔法以前に普通のことを勉強しろ。と。


「まっ、まあいいや、ここは錬金術をおしえる道場でな、俺みたいなエリートしか本当はかかわれないんだぜ。でも、まあ、特別にお前らにも見せてやるよ」

「ちょっとだけな」


 何が見れるのかわからないけどちょっと興味がある。


 なので双子の手を引いて中に入ってみると工房+展示棚みたいなものがあってそこにばらした魔道具が陳列してあった。

 アルビスがよく使う照明の魔道具とかもある。

 ばらされた状態で。


「うおおおおぉっ、すごい。おもしい」


 正直な感想だった。

 アルビスの読書家は知識欲からきている。

 この世界では本はほとんど手に入らないが、まあ、その分魔法の研究をしてきたわけで、その実践の一つの形である魔道具のその基盤ともいうべき魔法陣がむき出しになっているのは実に興味深かった。


 ちょっとだけ双子そっちのけ。

 ここは魔道具工房だったようだ。


「錬金術って魔道具を作る魔法なんですか?」


 アルビスは浮かんできた疑問をぶつけてみた。


「いや、そうじゃないぜ、例えば魔法薬を作るのだって錬金術だし、魔法素材を合成したりするのも錬金術さ。

 でもこういった魔法陣構築は『d‐oss』の制作にも使われるすごい技術なんだ。

 ヤッパ錬金術の王道は魔剣の製作にあるよな」


 存外素直に答えてくれたがつまり自分たちが一番すごいということを言いたいらしい。


 ふんふんと適当に相槌を打ちながらアルビスはそれを注視する。

 魔法陣というのは魔力を流すと自動的に魔法を発動させるものであるようだった。

 魔力は魔石で賄う。

 効率が良いとは言えないが充電池のような魔石で魔力を注いでやるとそれを取り込み、その魔力がなくなるまで効力を発揮し続ける。そう言う構造のようだ。


 アルビスはそこにあるたぶん生活に役立つだろう魔法陣をつぶさに観察し、構造を解析、記憶…


「にいちゃま、いこうよ」

「おにちゃま、はやくー」


 双子が飽きてしまった。


(まあ、仕方ないか、ほったらかしにしちゃったしね)


「はいはい、わかったよ」


 アルビスはその子供に向き直って。


「ありがとうございました。とても面白かったです」


 そう言うと双子の手を取ってそそくさと外に出る。


「え? あっ、ちょっと…」


 なぜか追いかけてこようとする男の子。しかしその行動は実を結ばなかった。


「またさぼっているのか! 何度言ったら分かるんだ!!」


 奥から出てきた先輩の雷が落ちた。


「ちっ、違います。あの、知らない子供が入り込んで、その、展示品をいじってたので…注意を。いま、今です、出ていったばかりで…」


 そう、彼はアルビスを出汁にしてさぼろうとしていたのだ。

 万が一怒られたときの防波堤。

 彼は先輩を引っ張って門の外に…


「ほら、あそこに…あれ?」


「誰もおらんではないか、このうそつきめ!」

「展示品も全く異常ないですね」


 もう一人の先輩がさらに止めを刺す。

 そしてゲンコツが降った。


「ぎゃーーーーっ」


(全くたちの悪い子供だな)


 それを遠めに確認しながらアルビスは独り言ちた。

 先輩二人が向かってきていたのは魔識覚で当然わかっていた。そしてかなりイライラしている感じなのも。


 何が起こるかわかったわけではないが、逃げた方がいいと外に出た瞬間双子を連れて死角まで高速移動したのだ。


『まあ、あそこまでとげとげしい感じの人間には近寄らないのが吉であります』


「同感だね」


「しかしいいものを見た。あれを天井につければ蛍光灯シーリングライトのことみたいなのも作れそうだよね、それにコンロは電熱線みたいなものだった。

 他にもあったし、今度試してみようかな。

 ミスリルがあればできそうだよね」


『単純な術式は精霊ウィキで公開されているはずであります。調べれば少しは分かるのではないでありますか』


「うん、楽しそうだ」


 高度な情報は一般的ではないのか認知度が低いのかウィキでわかるのは基礎的なものがほとんどだ。だが技術は基礎の組み合わせという構造を持っている。

 根気良く調べればできることは増えるだろう。

 まあ、そこまで時間があれば。だけどね。


「「おにいちゃま」」


「ああ、はいはい行こう行こう」


 双子に引っ張られてギルドに向かうアルビスだった。


◇・◇・◇・◇


 ギルドにつくと目に付くのはまず北側へのゲートだろう。


 お城の所にもゲートがあるのだが、一般人が…といっても冒険者だが…出入りするのはこちらのゲートになる。

 北側は魔境なので、そこで採取した荷物を持ち込むためのゲートと考えていいだろう。

 ゲートをくぐるとすぐにギルドの保有する広場で、毎日たくさんの魔物素材がここに持ち込まれてはギルドの中に消えていく。


 ここは大都市なのでお肉の需要は際限がなくてどんな獲物でも食用のお肉であれば常設扱いになっているのだ。

 それは薬草るいも同じ。


 たくさんの若い冒険者がここから北の魔境に進み、日帰りだの、泊まり込みだので日々の生計を立てていたりするのだ。


 ちなみにお湯のあるお風呂もここの近くにあった。

 魔境で汚れて、解体で汚れて、そういう人が体を洗う場所。

 うん、全然普通の御風呂じゃない。あきらめた。


(自分で作った方がいいや)


 閑話休題


 さて、今アルビスも弟妹の手を引いてそのゲートをくぐろうとして…門衛の人に目を剥かれてた。


「ええっ、坊やたちが魔境に行くのかい?」


 門衛はギルドの関係者ではなく辺境伯家の兵士だった。

 この重要な施設を民間に好きにさせるほど辺境伯家は平和ボケしてはないのだ。


 そしてその兵士は子供が子供を連れて、北に行こうとしているのをどうしたものかと困惑しまくっていた。

 まあ、普通そうだよね。


 北側は魔境に面していて、というかすでに町の北側はレベル1の魔境に食い込んでいるのでこのゲートをくぐって北に行くことができるのは冒険者に限定されている。

 あと、冒険者の連れ?


 これは冒険者が子連れで働いている場合などもあるから仕方がない部分ではある。


 にしても…


「えっと、君が冒険者で…このチビちゃんたちが連れなんだね…でもどうしたものか…」


「ぼくらは薬草を取りに行かないといけないのです。生活のために

 それに弟妹を置いていくわけにはいかないです」


「うん、なんというか資格は満たしているんだけど…ほかの冒険者の人に付き添ってもらうとか?」


「善意だけで付き添ってくれる人がいますか?」


「うっ」


 まずいないだろう。

 いや、いないわけではない。たぶん。だがそれだって一回や二回という感じだろう。

 アルビスたちが薬草を取りにいくたびに善意の冒険者募集なんて、そもそも冒険者が成り立たない。


 何とかしてやりたいがその兵士には何も手がなかった。


 後ろから投げ尽きられる早くしろの怒声にやむなく三人を通した門衛さん。

 アルビスたちが返ってくるのを気を付けてみていようと、せめてそれだけはしようと心に誓うのだった。


 まあ、アルビスは魔境にお泊りする気満々なんだけどね。

 かくしてアルビスは、この国で最も有名な魔境の一つ、『北部霊峰魔境』に足を踏み入れたのだった。


 □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □


9月/アルビス7歳/双子4歳8か月



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