02-24 動き出すあれこれ~そしてぼろが出るあれこれ
第24話 動き出すあれこれ~そしてぼろが出るあれこれ
食事は見事だった。
というか見たことのないレベルで素敵。
「「きゃーーーーーっ」」
子供たち大喜び。
「にいちゃま、すごいねえー」
「おいしそうだよー」
テーブルの上に並べられていく料理は見た目に美味しそうだ。
バスケットに積まれた柔らかいパン。
そして山盛りのサラダ。
ポタージュのようなスープ。
料理は三品で小さ目のお肉を焼いたステーキ。
イセエビみたいなエビをゆでた物。
鮎みたいな魚の塩焼き。
かなり手が込んでいると言えよう。
ステーキにはちゃんとソースがかかっているし、エビは下味がしっかりついている。魚の塩加減はばっちりだ。
アルビスはとりあえず一口ずつ味見をして、もちろんサラダは魔法で浄化して全体の安全を確認する。
「「あーん」」
すると双子が両脇に寄ってきてひよこみたいに口を開いていたりするのだ。
お肉を小さく切り、魚をほぐし、エビは…
「これをつけるか」
もちろん空間収納から出したマヨネーズをつける。
どれもおいしいが薄味で子供が喜ぶのはお肉ぐらいだろう。
マヨネーズをつければエビだって大人気に早変わり。
「この辺りは水が豊富だから魚料理が多いんだろうな…」
肉二人分、エビと魚は一人分を分け合って食べて、当然のように残ったパンも合わせてインベントリにしまう。
魚はアユのような香りのいい川魚だったが、絶妙の味付けだったが、子供にはちょっとわかりづらい感じの味付けでいまいち人気がなかった。
子供舌だからね、はっきりした味付けがいいんだよ。
それでも三人ともお腹いっぱいの大満足のお食事だった。
モップの分は別料金ということなのでお断りした。
自分で持っているからね。
それでもペットも泊まれるのだからかなり高級なホテルなのだ。
そして高級なベッドでぐっすりお休み。もちろん使うベッドは一つだけだった。
◇・◇・◇・◇
このホテルならしばらく宿泊してもいいかも…
と、思わないでもないアルビスだったが一つだけ、致命的な欠点があった。
それがトイレ。
そう、ここのトイレも恐怖トイレなのだ。
双子びびりました。
やむなくおまるが出動。
「にいしゃま…ボールのトイレ行く」
「ここ怖いの」
「うん、怖いよな」
田舎のそれよりは幾分ましだったが、やはり怖い。
アルビスはもう平気になったが、双子にはまだ無理のようだ。
となると。
「うん、仕方がないからここは引き払うか」
といってもおそらくどこでも同じだろう。
であれば…
「しばらくキャンプ生活で、いい場所を見つけてまた秘密基地を作ろうか」
「「きゃーーーーっ」」
秘密基地大人気。
その日の朝、冒険者ギルドに向かう用もあったので朝の内にアルビスたちはチェックアウトをしました。
◇・◇・◇・◇
「は? 四歳ぐらいのお子さんを連れたお客様ですか?
いえ、そのようなお客様はおられませんよオーナー」
答えたのは支配人でオーナーと呼ばれたのはフリーマだった。
支配人もばかではないので、彼女がいう四歳ぐらいの子供には心当たりがある。
それを伝えようとしたのだが…
「いない? 嘘だろ」
と言われてしまうと嘘ではありません。というしかない。
ただ即座に軌道修正。
「オーナーがおっしゃる子供というのは銀髪の七歳ぐらいの男の子と、金髪の双子のお子さんのことでしょうか?」
「そう、そうだよ、ちゃんといるじゃないか。
何でいないなんて言うの?」
「申し訳ありません、子供ずれのお客と聞かれたもので…この三人のお子さんたちは、三人だけでの宿泊でした。
保護者は七歳ぐらいの兄上で、他の保護者はおりません」
「え゛?」
フリーマはいかにも意外なことを聞いたという風に驚いた。
支配人は三人がやってきて、いかにも子供らしくない様子で宿泊を要請され、受け答えに問題がなかったのでそのまま受けたという話をした。
「え゛え゛?」
さらに意外だったらしい。
調べれば身分証の控えから冒険者である事と、名前がアルビスであることが判明した。
だがそれだけだった。
フリーマが支配人の所にやってきて子供たちのことを聞いたのは、アルビスたちがチェックアウトした後だったのだ。
確かに気になる話ではある。
レムニアがまた会いたがっていたのでできればというのもある。
だがそれは出来ればであって、どうしてもではないのだ。
そして現在フリーマには調べないといけないことがある。こちらは急務だ。
「わ~かったわ。すまなかったね。そうだ。もしまたここに来るようなことがあったら…そうだな、サウナのおばちゃんたちが会いたがっているから連絡が欲しいと伝えてくれ」
「ハイ承知いたしました」
なので子供たちのことを調べるのは『ついで』でいいと判断する。
自然な流れだった。
◇・◇・◇・◇
一方、城に戻ったレーンこと、レムニア辺境伯は報告を聞いて顔をしかめた。
それはダフニア男爵からの申し送りでエレウテリア領のコンラートが魔物の討伐で負傷。彼のもとに駆け付けようとしたベアトリスが夜間の無理な行軍によって事故にあい行方不明。コンラートは死亡し、遺言にエレウテリア領を頼むと言い残したので現在自分がこの領地の監督をしている。
というものだった。
ここまでだったら怪しくはあっても決定的な疑惑とは言えないものだったろう。
だがダフニア男爵は決定的なミスを犯した。
エレウテリア領に入ってすぐ、これから統治しなくてはいけない魔境の調査を大々的に行ったところ、今まで地中に埋まっていた塩の鉱脈らしきものを、運よく発見したというのだ。
これは自分の功績であり、塩の採掘は自分が主導するので許可願いたいと添えられていた。
書面でこの鉱脈がいかにも自然に地中にあって、自分でなければ見つけることは出来なかっだだろうと自分の功績を書き連ねてきていた。
これに合わせてもう一通。アグニア・タフォス子爵の名で、書面の通り間違いないので配慮願いたいという書面が届いていた。
「あの愚か者が!」
報告を受け、書面に目を通したレムニアは書面を握りつぶしてそう吐き捨てた。
おびえたのは報告を持ち帰った調査員だ。
そしてタフォス子爵というのはレーンの弟で、この一件にいろいろ口を出していたらしいと推測された。
情報がうまく回らなかったのは子爵がくちばしを突っ込んだせいだったのだ。
調査員はその後投入されたものなので関係はないのだが、何か不味いことをしたのかと恐る恐る自分の主の顔を見る。
「いや、良い、下がれ」
調査員を下がらせるとレムニアはその場にいる側近を近くに呼び寄せた。
老若男女、六人ほどがレムニアのそばに寄ってくる。
「何かあったのは間違いないですな」
「そうだな、だがそれに気づかないというのが問題だろう」
「上が優秀すぎるから下が育たんのよ、苦労が足りんのさ」
「こうなると、どこに穴があるか、心配になりますね」
「ここだろう?」
一人が握りつぶされた手紙を指さす。
「わが弟ながら何を考えているのか…どこまでかかわっているか詳しく調べねばならんな」
レムニアはそういってため息をつく。続けて。
「ダフニア男爵の報告が嘘なのは自明の理だ。
塩の鉱脈はこちらですでに動く準備もできている」
「つまり男爵はその手の話を全く知らずに鉱脈の横取りを行ったということだ」
「たまたま見つけて、欲をかいたということですか?」
「いや、それならばエレウテリアの領地を取り込むタイミングがおかしい。他領の併合などやぶをつつくようなものだ、よほどの利益が見込めない限りやろうなんてやつは現れんだろう」
つまり事情を知っているものから見れば男爵が塩の見つかったエレウテリア領の乗っ取りをたくらんだように見えるということだ。
であれば当然コンラートをはじめとするエレウテリア家の者たちの命運は…
ということになる。
「何にせよ、信じられる人員を動かして情報を集めよ。
ダフニアにも弟にも気取られぬようにだ。
もしわたくしの思っている通りならば、ただではおかん」
居並ぶ者たちが平伏するなか、レーンはギリリと歯をきしませた。
◇・◇・◇・◇
「てえ、ことなんですけど、どうするんですアーマデウス師範」
「つっても俺は動けんからなぁ」
「まあ、首都防衛司令官ですからね」
「いつもどおり、俺のやり方で情報を集めるさ…」
そう言うとアーマデウス・ルーヴェは背中を丸めてとぼとぼという感じで流いていった。
彼がアルビスと運命の出会いをするのはもう少し先の話になる。
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9月/アルビス7歳/双子4歳8か月




