02-21 親切な料理長~ホテルマンをけむに巻く
第21話 親切な料理長~ホテルマンをけむに巻く
いきがったおっさんが現れた、いきなりの攻撃。
てな感じで男がいきなりケリをかましてきた。
幼気(?)な子供にいきなりヤクザキックとかまともじない。
だが男はそのまま足を空振りしてそのままぶっ倒れた。
「あ? あれ?」
(うん、うまくいったな。うちのチビたちに手を出そうなんてただじゃおかねえ)
アルビスは無駄に気合を入れた。
気合を入れて男の耳のあたりで無属性魔力で振動を作り出した。
男がぶっ倒れたのはこの微細振動魔法で三半規管を乱されたからだ。
「おっ、おい、どうしたよ。大丈夫か」
ぶっ倒れ、勢いよく頭を打った男に仲間が駆け寄る。男はというと立ち上がろうとして倒れるを繰り返している。
そのうちに。
「ヴっ」
口を押え、ついで…
「ぼげえぇぇぇぇぇぇっ」
(あっ、いかんおう吐中枢まで刺激してしまった)
耳のあたりにはいろいろ重要な機関があります、気を付けましょう。
「この酔っ払いが、なんてことしやがる」
厨房からコックが現れた。
コックの攻撃。
ドゲシッ!
倒れた男の鳩尾に会心の一撃。
鳩尾にケリを食らった男は回転しながら地面を転がり、被害が拡大した。
「きゃーーーっ」
「くせーーーっ」
「死ねこの馬鹿」
食堂は閉鎖されてしまいました。
「なんてことだ、うちのちびちゃんたちがおなかをすかせているというのに」
アルビスは欠片ほども責任を感じてません。悪いのは全部あいつらです。
「「おにゃかすいたの…」」
「おう、坊主たちも災難だったな。よしよし泣くな、ここはよごれちまったが中はきれいだぜ、どうせ今日は商売にならねえ、ちょっとこいや」
そう言うとコックはアルビスたちを厨房の隅の賄いようのスペースに連れていってくれた。
無精ひげを生やしたおっちゃんだったがここの料理長だった。
そして子供好きだった。
さすがにモップまでは厨房にいれるわけにはいかなかったが、アルビスたちはまかないのよくわからないごった煮とパンをごちそうになった。
よくわからなかったが。
「おいちい」「ねーっ」
好評ではあった。
料理長のマギイ・レマは一生けん命ご飯を食べる子供たちを温かい目で見つめていた。
◇・◇・◇・◇
「おいちかったねー」
「「ねー」」
ディアーネの評価にアルビスとエドワードが追随する。
それを見たマギイは満足そうに頷くのであった。
この間何事もなく…というわけにはいかなかった。
警備部の責任者とか言うのがやってきて話を聞いていったりしたのだ。
マギイは『酔っ払いがリバースして蹴ったらひどくなった』と話た。
直接の原因はアルビスの三半規管アタックに寄るのだが、男は酒を飲んでいたので酒のせいになった。
まあ、あの状況ではしかたがないだろう。
げろ男はそのまま収監されてトラ箱のような場所に放り込まれたらしい。
もちろん今回の被害は男のパーティーに請求される。踏んだり蹴ったりである。いや、蹴りは未遂か。
そのうえで『酒は飲め、だがのまれたらタダじゃおかねえ』と、通達が出されることになった。
理不尽な要求である。
「先代のギルド長は気合の入った人でな、そもそも子供に絡むようなバカを野放しにはしなかった。今のギルド長も真面目なんだが、なんちゅうか融通が利かなくてよ。ルールルール、決まり決まりしか言いやがらねえ…そのくせ…」
戻ってきたマギイはそう愚痴をこぼした。
どうやらマニュアル至上主義でルールブックに載っていればOK、乗ってなければNOという人らしい。
「3年前なら坊主たちみたいな子供も何とかしてやれたんだがなあ」
アルビスから事情を聞いたマギイはさらにそう愚痴をこぼした。
七歳の子供がさらに小さい子供二人を抱えて冒険者になろうなんて異常事態なのだ。これを知って放っておけるような奴はまともじゃない。
できることに限りはあっても何かをと考えるのは不自然なことではない。
マギイは食い物に困ったらそっと裏からやってこいとそうささやいた。
なかなか親切である。
なのでアルビスはちょっと相談してみることにした。
「何だ太陽の牙と知り合いなのか。うーん、あいつら結構有名だからこの町にも来るんだが、あいつらのホームグラウンドはここじゃないんだよな」
「じゃあ、お手紙とか出せますか?」
「おう、そいつは大丈夫だぜ。ただ金はかかるが? よし、ここは俺が何とかしてやろう」
マギイは膝を叩いた。
他にも探している人がいると言ったら尋ね人の掲示を勧められた。
お金は持っているので出すと言ったのだが。
「子供がそんなこと心配するんじゃねえよ、おいちゃんに任せとけ」
そう言って胸をドンとたたく。
胸をドンじゃなくて札束で顔を張り倒して素早く話を勧めたかったのだがそうもいかないらしい。
まあ、前に進んだからいいだろう。ということでアネモネあてに手紙を書き、救援を求め。さらにベアトリスの名前で『レーン様、こちらベアトリス、連絡求む。厨房、マギイ・レマまで』と張り紙を出した。
とりあえずできることは現状ではこの程度だ。
「マギイ小父さんありがとう。これはお礼です」
そうお礼は大事。
普通はね。子供の場合はお礼の言葉だけでいいんだけどね。
でもアルビスは中身があれだから。
収納からクリームキャタピラー数体と、カエルを数匹出して渡しました。
「坊主、収納持ちか…うーん、それはすさまじいアドバンテージだが、あまり人に見られない方がいいものだ。とりあえず、そうだな、何か売りたいものとかあったら俺に声かけるんだ。
いきなりカウンターで出したりしちゃだめだぞ」
「いえ、そこまでしていただくわけには」
「何気にするな、この芋虫は高級食材なんだぜ。一匹で、坊主たちに一か月ただ飯食わせてもおつりが来るぜ。とにかく何かあったら俺の所にこいよ」
「「「うん、ありがとう」」」
なかなか世の中も世知辛いばかりではないようである。
◇・◇・◇・◇
町に出てまずなすべきは宿泊先。
なんだけど…
「意外とストリートチルドレンが多いな…こんなものなのか?」
表通りはそうでもない。
だが路地や脇道に小さな子供らしい反応が見え隠れする。
「所詮は蛮族か…」
アルビスはちょっとがっかりする。
村はよいところで、孤児などもいたが、小さい子は年寄りが面倒を見たり、大きくなった子はエレウテリア家が仕事をさせていたりでちゃんとセーフティーネットがあった。
だからこの世界は結構しっかりしているのでは? という気がしていたのだ。
だがこの大都市に来ると生き届かないところが多々見受けられる。
どうもああいうのは個人の資質によるところが大きいようだ。
そして都市などは大きくなると当然に小回りが利かなくなる。
この町が荒れているということは、この町を治めている領主があまりよくないということだろう。
そう思うとあまり過度な期待はしないほうがいいかもしれない。
(でもお姉さんとか、小父さんとか、いい人もいるっぽいから、どれだけ信用できる人と良い関係を作れるかかな)
そうは思うがなかなかうまくはいかない。
例えば。
「よう、ガキグゲゴゴゴゴゴっ」
肩を怒らせて威圧してくる大人とかいるのだ。子供相手に嘆かわしい。
鑑定で■悪いひと・強請り集りの常習犯■とか出るので先制攻撃とばかりにアルビスは相の腹のあたりの空間を針を刺してひねるようにねじってやった。
すると男は腹を押さえてうずくまり、脂汗を流している。まともにしゃべれないらしい。
(蛮族は獣と一緒、容赦する必要なし)
あとの後遺症がどうなろうと知らないのである。
「おにちゃま、どこ行くの?」
「うーん、今日泊る所を探しているんだけど…どこにするかな?
美味しいご飯があるところがいいよね」
「おいしいご飯はおいしいよね」
うん、その通り。
「よし、とりあえず、このあと一番目のホテルに入ってみるか」
一応、道行く人に良いホテルを知りませんかとか聞いてもまあ、相手にしてもらえないのだ。
子供のお遊びだと思われてしまうらしい。
なので大通りの、作りのいいホテルに足を踏み入れた。
受付がこまごまとした作業をしている。男のようだ。
「すまない宿泊はできるかね」
「あっ、はいだいじょう…ぶ?」
まあ、振り返ったら幼児がいたら驚くよな。
「三人だ、一晩頼む」
「あっ、はい、はい?」
「いくらだね?」
「あ、ええっと、一晩…あれ、えっと。坊やたち、大人の人は?」
「私が保護者だよ」
「あえ?」
さらに混乱した。
かまわずに畳みかける。
「これが身分証だ、いくらだね?」
「あっ、はい、当ホテルはルームチャージ方式でして、お客様、お子様三人様でしょうか」
「後日連れが来ることになっているが今日は我々だけだ」
ここまで堂々とされるとホテルマンもなんかそれでいいような気がしてきた。
アルビスのしゃべり方があまりに子供離れしているので、何かあるのかと深読みしたからだ。
こうなればアルビスの勝ち。
話し合いの結果上等な二人部屋、食事付き、一泊4銀貨6銅貨で宿泊することができた。
食事は部屋に運ばれるタイプだ。かなり高級。
(まさか泊めてくれるとは思わんかったわ)
アルビス内心吃驚だった。
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9月/アルビス7歳/双子4歳8か月
【酩酊】……顔の周辺で微細な空間振動を作り出し、三半規管を攻撃する魔法。思い付きでやったらできた。
【穿孔】……空間属性魔法。目標の体内で細く針のように空間をねじってやるという凶悪な魔法。ものすごく痛いらしい。




