02-20 アイゼンの町~観光~冒険者ギルド
第20話 アイゼンの町~観光~冒険者ギルド
少年の名前はテトといった。年齢14歳。成人前だ。チンピラというには若いので、アルビスは町の不良少年? みたいな認識でいる。そのわりには臆病な感じなのだが。
そのテトの案内で冒険者ギルドに向かう。
これが結構大変だった。そして面白かった。
ゴンドラに乗ったりとかして。
このアイゼンの町は北側に峻厳な山の連なり、連峰があり、その緩やかな裾野に広がる大きな町だ。
アルビスが入って来たのは南の大門で、ここから国内に向けて街道が伸び、各地とつながっている。
しかし町の本体はむしろ北側にあるといっていい。
この町は北の連峰=魔境からの資源とその加工によって栄える冒険者と職人の町なのだ。
立地が坂道なので町自体が階段状で、一番上がお城や行政機関。その周辺に冒険者のための施設や商店などが集まっていて、これはここを治めるスクード辺境伯が代々武闘派であることを物語っている。
二層目は職人が多く暮らすエリアで、武器職人、防具職人はもちろん、工芸品を作る芸術家的な人や、医薬品などを作る錬金術士なんかもたくさんいる。
一番下が商業エリアで、一般的な住人、南側で農業に従事する人、商人、特産物を扱う紹介などが軒を並べる。
つまりこの町は北からの脅威(魔境)から国を守る防壁の意味があるのだ。
あと特筆すべきは子の連峰から流れてくる水の豊富さで、山自体に水場が多い。町にも水は引き込まれ、大きな水路や水堀が作られ、常に上から下へと水が流れている。
水の都といった印象が強い街なのだ。
そして移動手段は馬車か船。
アルビスたちは双子が「おふねのるー」と言ったのでゴンドラに乗って第三層。一番上を目指していた。
船で行けるのかというといけるのである。
水を使ったエレベーターがあるから。
下から進んでいくと段差に到達する。
そこには背の高い箱が作られていて、船はその箱の中に入っていくわけだ。
すると入り口のゲートが閉まる。
その箱には常に上から水が流れ込んでいて、ゲートが閉まると水の出口がなくなり徐々に水位が上がり、合わせて船も登っていく。
20分ほどで水位が上の階層と同じになり、そこからまた船で進んでいく。という構造なのだ。
操作する人以外でコストのかからない素晴らしいエレベーターだった。
とろいけど。
小型のゴンドラを一台借り切って上を目指すアルビスたちだったが、思いがけない水の旅に三人とも興奮しきりだった。
「きゃーーーっにいちゃま、にいちゃま、おみずきれいなのーーー」
「スライムがいるよ、おにちゃ、すらいむーーーー」
魚がいるよー、見たいな話だ。
スライムという魔物はこの世界では一般的だ。
周囲の有機物を吸収して生活している魔物で、人畜無害。水路や川などに放すと水のろ過に非常に役立ってくれる。
ヘドロを取り込んで有機物をこしとり、奇麗な水と砂を吐くのだ。ミミズみたいだな。
なので生活排水なども流れこむはずのここの水は結構澄んでいて、たくさんの魚も住んでいて、暢気に釣り針を垂らすやつもいる。
「中にはここで魚を釣ってくらしているやつもいるんだぜ」
テトは観光ガイドにとりあえずクラスチェンジしていたりする。
『じゃあなんでお前は不良なんかやってんだ』 という話なんだが…
「俺釣りの才能なくて…魚釣れないんだ…」
まあ、そういう人もいるよねー。
そしてやってきました三階層。
役人とか騎士とか貴族とか冒険者とかごっちゃに暮らすエリアである。
辺境伯の城は三層、中央から東に建っていて、大きな水堀に囲まれた石造りの大きな城だった。まるで水の上に立っているように見える城だ。
作りもドイツの山城をとても大きくしたような見た目で、それ自体が手の込んだ城郭都市のように見える。色は真っ白。観光地としても有名なのだ。
「今度ゆっくり見に来ようねー」
「「ねーーー」」
「ワハハ、朝早くがいいんだぞ、水がないでいてな、鏡みたいに城がうつるんだ。向うの山々もな。大きくなったら見に来ると言い。ここにきてそれを見ないなんて…まあ、地元のやつだけだな」
そうそう地元民って名所めぐりしたりしないよね。
そして冒険者ギルドは西側、端っこにあった。
これは持ち込まれる魔物素材の解体などで大量に水を汚すので、水のラインが別になっているからだ。
もちろんこの流れにもスライムや魚が沢山住んでいて、自然に浄化される。ありがたやーである。
ちなみにスライムは5cmから20cmぐらい。丸くて青くて透き通っていて、水の中をすいすい泳いでいる。タコとかイカと同じように水を噴射する形で。見た目的にもかわいいといっていい。
地球にもぜひ欲しい生き物だ。
「えっと、ここが冒険者ギルド」
テトがおずおずと口にする。
誓約はギルドまでの案内なのでここまでである。
「よし、ご苦労。いってよい。これは駄賃」
そう言うとアルビスは銅貨を四枚渡した。
日本円なら二〇〇〇円前後である。
「え? いいのかこんなにもらって」
(あり? 多かったか?)
この世界は物価が安いので暮らしやすい。食費だけと考えれば一日銅貨二枚あれば楽に暮らせるのだ。
銅貨四枚は未成年の子供がギルドで仕事を請け負って二日間頑張って働くぐらいの金額だ。
アルビスは案内に三時間ぐらい使わせたので時給換算でそんなもんだろうと思ったが実は結構大盤振る舞い。
(まあ、返せとは言えんよな)
アルビスは現金にも笑顔で手を振るテトを見送りギルドに足を踏み入れた。
◇・◇・◇・◇
「これでにいさまは冒険者になりましたー」
「「わーい、しゅごいのー」」
好評。
アルビスの冒険者申請はあっさりと受理された。
まあ、それはありがたいのだが、七才の子供が四歳の子供を連れていて、冒険者やります。とか言って、それがあっさり通ってしまうあたり『大丈夫かこの国』と思ってしまうアルビスだったりする。
まあ、まともな人もいたのだが…
登録受付に座っていた若い女性受付嬢。
名前はクロエちゃん。
彼女はいくら何でも子供のアルビスをそのまま冒険者として承認していいのかと考え、上司に相談したのだ。
だが上司の返事は『七歳になれば登録できると決まっているんだから七歳なら問題ないでしょ、余計なこと考えてないで仕事をしなさい』というものだった。
クロエはものすごく不本意そうな顔をしていた。
そして冒険者として登録作業をするときに『何か困ったことがあったら自分に相談するように』と念押しされたのだ。
他にもアルビスを気にしている職員はいるらしい。
だが全体として余計なことはしない。という空気がギルドを満たしていた。
これは考えてみればありがたいのだ。余計な詮索をされずにすむ。
だが…
(大丈夫かここ、なんかこの町というか国、印象が良くないなあ…)
なんて思う。
働いている者はその空気に甘んじて事なかれ主義でやっている者、やる気がなくて仕事をただ漫然とやっている者。もしくはそういった空気の中でもできる限りいい仕事をしようとしている者。色々いるように見受けられるが、まともな人は肩身が狭そうな感じがする。
自分が気にすることではないと思いながらもちょっといろいろ心配になるアルビスだったりする。
なので。
(せめて、いい人か悪い人かぐらい見わけがつくと楽なのにねえ…)
と、アルビスは思う。
『鑑定してみるといいでありますぞ』
と、クロノは言う。
(えーーーっ?)
青天の霹靂だった。
で試しに鑑定してみた。
※ ※ ※ ※
【名前】クロエ・アベルフィ
【種族】人族
【性別】女
【年齢】17歳
【評価】お人好し・子供好き。優しい。
【備考】ちょっと有能。ものすごく心配しているよ。
※ ※ ※ ※
と出ました。
パラメーターとかは出ない。
これはあくまでも精霊たちがその人をどう評価しているか。ということなので、こんな感じになる。
で、調子に乗って周りを見てみると■悪い人■ ■スケベ変態■とか■いつも泥棒しているよ■とか言う評価の人がちらほら見つかったりする。
(なんて便利な)
気づかれずにそれらを見ている精霊たちの評価なので、独断と偏見に満ちていても信用はできるのだ。
というわけで『このお姉さんは信用できる』と判断したアルビスだったりする。
「にいしゃま、おなかへったの」
「にいちゃま、ごはんは?」
「おっといけない。待っている間に結構時間が経ってしまったね。どうする? 奥に食堂があるみたいだけど、食べてみる?」
「「?」」
食堂が分かりませんでした。
村には食い物屋はなかったしね。
だがみればたくさんの人がご飯を食べている。
感じとしてはレストランというよりも牛丼屋が雰囲気近いかもしれない。
大量に作ってあるおかずをパッパッと盛り付けて出す感じの店だ。
ギルドの施設である。
この冒険者ギルドだが、大都市のギルドらしく、かなり大きい。
三階建てのショッピングセンターのようなものをイメージしてもらえるといい。
一階が一番広く、解体のための施設や訓練施設、各種物置、素材の保管庫などがあり、建物と外の運動場のような場所がセットになっている。
二階には受付がありその奥に事務しごとのためのスペース。書類の保管庫。そして食堂もある。
三階は偉い人の執務室と会議室、貴重品保管庫などになっている。
二階にはなんか大きな仮眠施設もあってその企業? の凶悪さがうかがえるつくりだ。
アルビスたちはその食堂に進むと並んで注文をしようと考えた。
考えたんだが…
「おう、どけガキ、邪魔だ」
順番飛ばしの馬鹿が出た。
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9月/アルビス7歳/双子4歳8か月




