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アルビス 自由なる魔法使い  作者: ぼん@ぼおやっじ


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02-17 初ゴブリン戦~旅立ちと別離

第17話 初ゴブリン戦~旅立ちと別離



「なによこれーーーーっ」


「クジラです」


「しらないよーーーーーっ」


 空に元気のよい声が響く。

 もう少し静かにして欲しいものだとアルビスは思った。

 現在は戦場に向かっている所なのだから。


 そんでもって『間もなく戦闘宙域に到達します』という状況なのだから。


 あの後今にも走りだしそうなイレミアを担いでクジラに乗せて空に飛び立った。

 クジラの頭にモップ。その後ろにエドワードが乗って、エドにつかまってイレミアが乗っている。


 アルビスはカゼコマで空を飛び。

 ディアーネは天女の羽衣で空中を進んでいる。

 まだちょっと不安定なのでアルビスにつかまっている感じだ。


 そしてまず最初に見えてきたのはスミだった。

 より正確に言うと木の枝の中に隠れるようにして縮こまるスミに向かって投石をしまくるゴブリンたちというべきか。


 ククマの戦場は既にここから離れているようだった。


「まあ、まずはあれを助けようか」


 投石とはいえ十数体のゴブリンからの集中砲火ではダメージもばかにならない。


「みんな少し高度をとろうか?」


「だいじょぶー」


 アルビスの提案にディアーネがふんすと息を吐いて答えた。

 これは高度をとらなくてもいいの意味だ。


(うーん、本人もやる気になっているしな…いざとなれば俺がフォローすればいいか)


 そう決めてアルビスはゆっくりと高度を下げる。

 それに続いてクロノもそしてアーネも高度を下げてくる。

 位置取り的にはアルビスが前に出て背中にディアーネをかばう形だ。


 そしてマシンライフルの魔法を構築する。

 ちょっと未来的デザインのアサルトライフル。三点バーストを繰り返すことができる。フルオートはできない。弾の生成が追い付かないから。


 準備を終えたアルビスはマシンライフルを連射してゴブリンを射殺していく。


 タタタンッ! タタタンッ! タタタンッ!


 バッタバッたと倒れ伏すゴブリン。


(それにしてもこれがゴブリンか…)


 小人というよりは猿だった。緑色の肌の1メートルぐらいの猿。

 顔はどす黒く醜く歪んでいて可愛らしさの欠片もない。

 おまけに目がガラス玉みたいに無機質で気持ち悪い。


 追記すると羞恥心もないのか腰蓑とかもしてなくてブーラブラである。


(うわー、なんであそこだけでかいんだ? マジキモイ)


 そんな生き物だった。

 それがぐぎゃぐぎゃ言いながら石を投げているのだ。


 最初の斉射で数匹を屠ると今度は空の上のアルビスたちに気がついたゴブリンたちはいっせいに目標を変更して上に石を投げつけ始めた。


「おお、野生動物の強さかな」


 投石は結構な勢いでアルビスたちに向かってくる。

 位置的には4階ぐらいの高さをしたから狙う感じなのだが勢いが衰えない。

 石も大きいので当たればただでは済まないだろう。


 こうしてみるとゴブリンというのは結構な危険生物のようだ。


 だがその石はアルビスに近づくとスーッと逸れてて外れて行ってしまう。


「うん、じょうずだよ」


「えへへー」


 これはディアーネの風だった。

 エネルギー属性を加えられた彼女の風はみんなの周りを囲み、とんできた石をやんわりと逸らしていく。

 権能なので精霊による半自動なのでかなり器用に防御をしている。


『これなら弓矢の攻撃は簡単に逸らせそうでありますな』


 クロノの分析にアルビスも頷く。

 ただの風なら実体弾を反らすのは大変かもしれないがエネルギー属性の魔力、つまり粒子のような力場をはらんだ風だ。実はかなり存在感がある。


「にいちゃま」


「うん、届くんならいいよ、森の中だからフロストタッチにしてね」


「あい」


 いい返事である。


 アルビスは少し地上の掃討速度を落とした。

 エドワードを参加させるためだ。

 エドワードの魔法フロストタッチがゴブリンたちに触れていく。

 するとゴブリンの動きは途端に遅くなり、その体に白い霜が降りたようになって最後は油が切れた機械のようにギギギと動いて倒れるのだ。


(とりあえず二、三匹やらせればいいか)


 そう考えたアルビスは近場にいるそれを除いてすべてのゴブリンを射殺していく。

 ここにいたゴブリンを殲滅するのに大した時間はかからなかった。


「なななななっ、なんなの? なに? すごいよ、これ。これが魔法なの? 私の知っているのと違うよー」


 まあ、そういうこともある。


 目を見開いて興奮しきりのイレミアだったが、あんまり興奮しすぎて親父さんのこと忘れているみたいだ。


「ああ、そうだった、父さん!」


「大丈夫、すでに向かっている。現在クマさんはゴブリン三匹と戦闘中だ。結構てこずっているみたいだね」


 ゴブリン三匹で? と首をひねるイレミア。父親の実力を知る彼女からしてみるとゴブリンごとき10や20で問題になるような感じはしなかったのだ。


 だが見えてきたのはゴブリンの上位種。


 回り込むように動いて射線が開いたのを堪忍してアルビスはハイパーライフルをぶっ放した。移動中に切り替えておいたのだ。

 150センチぐらいのゴブリンの頭がはじけて吹っ飛んだ。


「さっきのゴブリンよりは進化しているのかな?」


 さっきのは体形がほとんど猿だったが、こちらは猿人といった風情だ。より直立していてしかも剣を装備している。いや、〝いた〟か。


 一番体格がいいのはクマさんより背が高く、こちらは完全に直立した姿勢で腹の出た体格のいい人間みたいな体形をしている。

 背は2m越えだろう。

 クマさんはそんな三匹を相手取ってまともにやり合っていたようだ。


「ホブゴブリンにゴブリンコマンダー…かな?」


 イレミアの解説はちょっと頼りないが、その通りです。

 ゴブリンの進化個体、魔物というのは条件を満たして上位種に進化することがある。

 猿から猿人だからまさに進化っぽいな。


 そしてどれもなかなかの強敵である。


 そのうちの一匹が吹っ飛んだのはまさに好機だった。


「うおおおおっ、カットイン!」


 ガタイのいいククマの身体が速い動きでぶれて見える。

 剣鉈が淡く光りククマの斬撃がゴブリンコマンダーの足をとらえた。

 膝裏をとらえてダメージを与える。これではもう逃げられないだろう。


 さすがにここまでと見たのか最後のホブゴブリンが逃げにかかる。


「えい」


 しかしその動きはディアーネの繰り出した風によって疎外され、じたばたとするのみ。

 それにアルビスがライフルでとどめを刺す。


「うん、素晴らしい連携だった。二人ともぐっじょぶ」


「「わーい」」


 たくましい辺境の子供がそこにいた。


 その間にククマは倒れたゴブリンコマンダーの剣をはじき、暴れる手足に少しずつダメージを与え、最後にはその首を撥ねて止めを刺していた。

 完全勝利であった。


◇・◇・◇・◇


「坊主たちは不思議な子どもだなあ」


 アルビスを前にしてククマはしみじみそうつぶやく。

 ククマにはイレミアがしがみついている。やはりかなり心配していたのだ。


 アルビスは現在ククマの治療中。

 お得意の【ハイ・ヒーリング】を使っている。


 ククマの怪我は、致命的なものはなかったがそれなりに多かった。そして深かった。

 あのゴブリンコマンダーはかなり強敵だったのだ。


 けがと言えばスミもいしでぼこぼこにされて怪我をしていたが、アルビスとしては直してやるつもりだったが助かった後村に走っていってしまった。

 救援を呼びに行ったのか、あるいは逃げたのか。

 ただスミの位置からではゴブリンがわけのわからない攻撃で次々に倒れていったように見えたかもしれないので逃げた公算が高いかな。とアルビスは思った。


 でも、そんなに元気に逃げられるなら別にいのだ。


 そうこうしているうちにククマの怪我は治っていく。

 この魔法のいいところは相手の状態を観測しながら必要なところに、必要なイメージで生命属性の魔力を流せるところにある。


 治癒力を増強するとかではい継続とかな治癒魔法なのだ。


 例えば傷についた細菌類を死滅させ、破壊された細胞を分解し、傷をふさぐために細胞分裂を加速して修復する。

 そういう継続的な治療がかけられるのがこのハイ・ヒーリングのいいところ。

 まあ、敗れた服とかは治らんけど。


「素晴らしいだな、完璧に治っとるだよ」


「さもありなん」


立ち上がり腕をぐるぐる回して調子を見て、すでに完調を取り戻したことを確認。


「さあ、帰ろうか」


 ククマはそういうと踵を返して、そしてついてこないアルビスたちを振り返った。


「じゃあ僕たちはここまでですね」


 ククマはウムと頷いた。やはり普通の子ではないとククマには分かったのだ。思い込みかもしれないけど。


「えっ、どうして、みんなで家に帰って…」


 慌てるイレミアにククマは告げる。


「この子たちにはいかねばならない理由があるだよ。

 旅人というのはそういうものだで、笑って送ってやんねばなんね」


「ええーっ、やだよ」


 イレミアが一歩前に出ると三人は既に空中にいた。

 アルビスが空に立っていて、双子は猫とともにクジラの背に乗っている。


「じゃあ、イレミア、教えたことちゃんと役に立ててね」


「「ばいばい、おねえちゃん」」


「あっ、まって」


 すーっと遠ざかるアルビスたち。


 アルビスたちにとってイレミアは初めての仲の良い友達であった。

 村ではやはり領主さまの一族だったから。

 それだけに別れがたい。

 だが母を助けねばならないのだ。


 どんどんと距離が離れる。


「またーっ、またきっとあうからーーーーっ。

 きっとだからーーーーっ」


イレミアの耳には三人の『またねー』の声がちゃんと届いた。

 しかしその時にはアルビスたちの姿は森の木々にさえぎられ、見えなくなっている。


「本当に不思議な子供達だった…」


 ククマとイレミアはしばらくの間そこでアルビスの飛び去った方を見上げていた。


◇・◇・◇・◇


「あっ、いかん、討伐報酬さ渡してやるのを忘れていただ」


「もう、だめだなあ、とお父さんは!」


「ふーむ、これは何か考えねばなんねえな」


□ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □


8月/アルビス6歳11か月 双子4歳7か月


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