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アルビス 自由なる魔法使い  作者: ぼん@ぼおやっじ


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02-14 辺境の村~イレミア~胃袋をつかめ

第14話 辺境の村~イレミア~胃袋をつかめ



 アルビスがおとなしく村についてきたのにも理由はある。つまり情報収集だ。


 いかんせんしばらくの間魔境で悠々自適(変だよそれ)の生活をしていたので下界(?)の情勢のあれやこれやに全く疎くなっているのだ。

 なので少しでも情報が欲しい。


 なので。


「僕たちは西の方から歩いてきました」


 と言ってみたのだ。


「西のほうというとダフニア男爵の領地か…」

「うーん、あのあたりはあまり好い噂は聞かんよな」

「うちの男爵様も困っておっただよ」

「しかし上におるタフォス子爵ちゅうのがまた…なんというかなやつでの」

「こら、お偉い人をそういうもんじゃない、聞かれたら一大事だでよ」

「しかし、それで子供を捨てざるを得んかったのか…哀れな」


 はい、村の異変に関する情報は全くありませんでした。


(しまった…この人たちみんな情報弱者だ)


 ネットはおろか電話すらない環境だ。お隣とは言えおそらくダフニア男爵は事態を隠したいはず。それで情報が入ってくるなんてことまずないのである。

 こういう時に情報というか噂話を媒介するのは行商人とかなのだが…


「行商人だかね? いやー、うちは小さいでね。それに隣の大きな町まで2時間もあればいくだよ。買いに行った方が速いだね」


 こうなると買い出し部隊に目端の利いたのがいないと情報は絶望的だ。

 がっくしである。


 ただその間も話は進む。


「やっぱり村では無理があるじゃろ」


 老人が言う。


「んだな。一人ぐらいならまんだあれだけんど、三人は無理だべ」

「となるとやっぱり男爵様の町の孤児院がいいだな」


「よし分かっただ。五日後に買い出しに行く予定だっただな。そん時に町さ連れていって男爵様に相談してみることにするだ。

 それまでは家で面倒見るだよ」


「んだな、それでよかろべ」


 というわけでアルビス達のあずかり知らないところでアルビスの待遇が決まったりしたが、まあ、元から従うつもりなどないから別にいいのだ。


 そしてやってきましたクマさんの家。

 木のほらではなかったが、木の家だった。

 はっきり言うと丸太小屋。少し大きめ。


「お父さん、この子たち誰?」


 そして出迎えてくれたのはアルビスと同じぐらいの女の子だった。

 クマさん、森で迷子を拾ったと。しばらく預かると説明した。


「うわー、うれしい。この村って子供が私だけなんだよね。私、イレミアっていうの。よろしくね」


 イレミアも当然アールヴだ。可愛らしい女の子だが髪の色が茶色なのでやはり耳以外は人間との差異は見受けられない。

 瞳が明るい緑色でそれで印象的だ。


「アルビスです」

「アーネだよ」

「エドだよ」


「ディアーネとエドワードです。良しなに」


「うわーーーっ、かわいい。むっちゃ可愛い」


(うん、そうだろうそうだろう。この人はいい人だな)


 本気かアルビスよ。

 しかしアルビスには深慮遠謀があった。


「どれ、まだ少しはやいだから、薪でも割っておくか」


「うん、じゃあ私はご飯の支度だね」


 そういうとクマさんはアルビスたちの頭をなでてから外に出ていった。

 なかなかの気遣いである。

 そしてアルビスはクマさんが出ていったのを見て思った。

 ここだ。と。

 ここでイレミアを手懐けるのだ。と。


 別にイレミアに非道を働こうというのではない。

 人心掌握は胃袋から。


 そうしないとこの村のご飯はまずすぎる。双子が切れるかもしれない。


「じゃあ、今日は僕が御馳走するよ」


「ふえ?」


 目を白黒させるイレミア。


「ででででも」


 とか言っているから、アルビスは双子に指示を飛ばす。

 アルビス⇒クロノ⇒双子の精霊⇒双子。という流れで念話はできるのだ。

 アルビスの指示を受けた双子はイレミアに絡みつき、台所から引き離そうとする。


「おねーちゃんこっち」

「はやくはやく」


 美味しいご飯を食べられるかどうかの瀬戸際だ。

 双子の頑張りはすごかった。と言っておく。


 その隙にアルビスは鞄から取り出す振りをしつつアルミラージのお肉を用意。

 まず切れ目を入れて平たく開く。

 さらに包丁(のような何か)の背でたたいてステーキ肉のように伸ばし、小麦粉をまぶしてたっぷりの油で空き上げる。

 油はあらかじめニンニクのような香辛料で味をつけておくのを忘れずに。


 肉が焼きあがったら残った油に醤油と蜂蜜を入れてソースにして味を調え、さらにたっぷりの葉野菜を敷き、肉を乗せてソースをかければ出来上がりである。


「わっ、吃驚した!」


 いつの間にか双子とイレミアが後ろで眺めてました。


 当然ご飯は大好評。焼き立てのパンがあったのでギブアンドていくと言えなくもない。

 クマさんもあまりのうまさにうーむとうなった。


「おいしい美味しい、こんなの食べたことないよー」


(ふっ、落ちたな)


 まあそれは分からんが、とりあえず胃袋はつかんだ。たぶん。


 お肉の残りは進呈しました。宿泊料です。

 件の日の前にとんずらこくつもりだからこんなものでいいでしょう。


◇・◇・◇・◇


 翌日朝、クマさんとイレミアの朝は早い。のだが、アルビスの方が速かった。

 タンクベッドの魔法で加速睡眠をとっているので三時間で十分な休養が取れるのだ。

 体に悪そうなので緊急時しかやらないが。緊急時が頻繁にあるような気もするが。


 朝食の支度をしようとイレミアが起きだすと森から鳥の卵とか果物とかを採取したアルビスが返ってきたところだった。


「あっ、おはよー、すぐ食事の支度するね」


「おはよー…あれ?」


 なんか変じゃねと思ったイレミアだったが、アルビスとしては食事を人任せにするつもりはなかった。だって普通においしくないんだもん。


(いやー、家にいるときも大して変わらない食事だったんだけど…なれって怖いよね…)


 魔境に引きこもっているうちに味覚が完全に日本型に更新されていた三人。これからの人生を考えて少し途方に暮れたくなるアルビスだったりする。


 まあでもご飯がおいしいのはいいことさ。

 クマさんはおいしいご飯を食べて仕事に行く。

 昨日の様に魔境を歩いて調査と普段の間引きをするのが彼の仕事だ。この村の責任者だしね。


「ここのところ魔物の様子が少しおかしいって、パパ、気にしてるから」


(おおっとーっ、パパよびか~。かわいいじゃないか)


 あまり効かない呼び方ではある。

 自分とこも父様、母様だったから。まあねアルビスは心の中でとうちゃん母ちゃんって呼んでたけど。


 改めてイレミアを見る。

 かなりの美人になりそうな女の子である。


(クマさんが茶色の髪だからたぶん母親に似たんだろうね)


 微妙に失礼。

 昨日の家族紹介の時に聞いたが母親は既に亡くなっているらしい。

 つまり現在は二人ぐらし。


(さらりと言っていたけど、つらくないことはないよね、7歳にしてもまだまだ母親が恋しい年ごろだ)


 そう思うと不憫さもあって少しは力になってやりたいと思うアルビスだった。


(双子のことも随分かわいがってくれているしね…そうだ。いいこと思いついた)


 アルビスのいいことか。なんか斜め上な気がするんだけどね。


□ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □


8月/アルビス6歳11か月 双子4歳7か月


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