02-13 クマが出た~アールヴだった~村についた(メシマズ)
第13話 クマが出た~アールヴだった~村についた(メシマズ)
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魔境を暢気に歌を歌いながら進むご一行。
アルビスはよく歌を歌う。それも日本の歌を。
日本人というか地球のあのあたりの文明人にとって歌はそして音楽は身近だ。
全く歌を聞かない日などまずないし、音楽好きなら何かしている間でも音楽は流れ続けているだろう。
まさに音楽は絶えない~世界なのだ。
なので当然のように記憶が戻ったアルビスの頭の中にも常に音楽はあったりする。
それでも一応気を付けてはいたのだが、まあ、聞かれるとまずいかな? みたいな感じで。だが現在はそういうことはない。
双子はいいのだ、むしろ双子に聞かせるのに一生懸命歌うという感じが強い。なので歌詞は改変、翻訳してある。曲はパクリだけど。
特にうまいというわけではないが音痴でもない。普通。
でも歌手になるわけではないのでOKなのだ。
クジラに乗って空を進むネコと女の子と男の子。その前にはひゅるひゅると言うつむじ風に乗って進むアルビス。
なかなかファンタジーな光景だ。
だけどそれが受け入れられるかというと別の問題。
「なななななっ、なんだべ、なんだべ。こげなところをお子様たちが進んどるだ。
しかも奇怪な歌サ歌いながら!」
グサッと何かがアルビスに刺さったような気がした。
アルビスは瀕死ダメージを受けた。
と、言うわけでアルビスたちを見て驚いたのは近くに住む熊…じゃなくて狩人のおっちゃんだった。
「驚いただよ、魔境を暢気に、歌いながら歩いてくる子供がいるだなんて…
そげなことするんは儂らアールヴぐらいだと思っただよ」
クジラはすぐに隠れたので見つかりませんでした。
「坊主たちは何でこんなところを歩いているだ?」
「えっとですね、僕たちははぐれた母を探しています。そのために領都のアイゼンに行かなくてはならないのです。そのために旅をしています…って、えええええっ、妖精?」
今更そこに気づいた。
「何じゃ、坊主はアールヴを見るんは初めてか?」
そういうとおっちゃんは帽子を取って耳を見せてくれた。長い尖った耳だった。
アルビスは初めてだったのでカクカクと首を振った。
双子はフルフルと首を振った。横に。
「はえ?」
「お隣のユラちゃんと同じ耳」
「村にもいたんかい!」
はい、全然気が付きませんでした。
というかこのファンタジー世界、人間以外の種族がいるという認識がなかった。
ただ話を聞くとアールヴというのも人間もほとんど変わりはないらしい。
この世界で人間と呼ばれているのは三種族あって、それがアールヴ、ドヴェルグ、ユマノス(人間)の三種類だ。
アールヴというのは普通に言うとエルフということになる。耳が長くて色白で、小柄で華奢といったイメージがある。
だが目の前のおっちゃんは…
(クマだな)
アルビスは思った。
ごつい。
この世界のアールブというのは人間とあまり違わないのだ。
しいて言えば魔法的な適性が違うぐらいか。
この世界の人間は魔法適性を持っているものが少ないが、比率的にアールヴたちはその可能性が高い。
代わりに属性相性が偏っていて、風、水と相性がよく、火、土の適性が低い。
なので森を好んで住処としているのだが、そこらへんはやっぱりエルフか?
さて、そのおっちゃんの名前はククマ・ソーンといった。
見た目的に『人間と変わりはない』を体現しているような人だった。
なぜなら見た目がクマだから。
背が高く、体格がよく、獣の毛皮で作った服を着ていて無精ひげ。
一言でいうと『THE・マタギ』な感じのおっちゃんだ。
鉄砲はないから背中には強弓と腰にはでっかい鉈を佩いている。
ククマさんは気のいいおっちゃんでアルビスたちの話を腰を落ち着けて聞いてくれた。
そんなにあるわけでもない弁当まで分けてくれて。
お返しはミックスジュースでいいでしょう、あれなら水筒に入ってます。
「いや、旅は分かっただども、なして魔境をいくだ?
あそこは危ないだぞ?」
彼は心配するがアルビスにとっては敵(人間)に見つかるかもしれない街道よりもずっと安全なのだ。
しかも獲物が自分から寄ってくる。
しかもしかもこの辺りの獲物はアルビス的な感覚では正しいお肉である。
つまり魔境はいいところなのだ。アルビスの真似をしてはいけません。
だがそれをそのままいうわけにはいかない。
「いつの間にか?」
「「?」」
三人そろってコテンと首を傾げる。萌える~っ!
「あれまあ、歩いているうちに迷い込んだんだかね…危ないだなあ」
そんなわけないのである。
「わしはこの近くの村でマタギをやっとるククマというもんじゃ。
いくら何でも子供達だけで魔境を進むなんぞ危なすぎるだ。
仕方ない、いったん戻ろう。坊主たち、ちゃんとついてくるだぞ」
男はそういうとアルビスや双子の頭を不器用にしかし優しくなでてゆっくりと歩き始めた。
アルビスは現在位置をマップで確認する。
知恵の円環に精霊ウィキからデーターを落として、それを意識上で確認するのだ。
村はごく近く、歩けば30分というところだろう。
(飛べば5分だけどね)
まあ、付き合いも大事だから。
いかつい見た目とは逆にククマは気づかいのできる男で、三人のペースを気にしつつ歩きやすい道を進んでくれた。
それをもってアルビスはこのおっちゃんをまともな人だと判断することにした。
「おめーたち、なかなか健脚でねえか。大したもんだな」
「ありがとう」
「「とう」」
ペースを落としているとはいえ苦も無く後をついていくアルビスたちに感心するククマだったが、これは種も仕掛けもあるのだ。
魔力修業を続けていると身体能力は上がっていく。
体が自然と強化されていくのだ。最適化されていくといってもいい。
そのうえでさらに魔力を循環させれば動きはブーストされる。身体強化だ。
もともとの身体能力+魔力による身体強化。さらには隠者の手による見えないサポートがあるのでスペックはむっちゃ高い。
双子もつたないながら魔力修業を続けるようになり、確実に成長しているのだ。
この程度わけもない。
逆にアルビスは双子の修練のために手を貸したいのを我慢するまである。
そんな四人がたどり着いたのは隣の男爵領の領地、その村の一つだった。
このスクード辺境伯領においては当然トップは辺境伯様なのだが、その下に四人の子爵がいてある程度の範囲を任されている。
その領地が細かく分割されて男爵と準男爵が治めていて、男爵と何人かの準男爵が集まって一つのグループを作っている。
つまりここはダフニア男爵のグループとは別のグループということになる。
そしてなんと、ククマさんはこの村の責任者。騎士爵のひとだった。
「おう、クマさん、どうしたね」
やはりククマはクマさんと呼ばれているみたいだ。
(あの見た目で名前がククマだから当然の成り行きだな)
アルビスは大いに納得した。
「オウ、すまん。森で子供を拾ったんだ。話をしたいから長老たちを集めてくれ」
ククマがそういうと、はあ、珍しいこともあるもんだ。と村人は呟き、すぐに村の中に走っていった。
アルビスは村を観察する。
(うちの村よりも小さいな。全部で20戸ぐらいか?)
すべての家が5人家族としても100人にしかならない。
そんな村で老人二人と男4人が集まって話し合いがもたれた。
そこでアルビスはいろいろ話を聞かれたのだが、まあ、ある程度ごまかすしかない。
しかしアルビスもまだ6歳だ。
しかも美幼児でちょっと華奢だからもう少し下に見える。
そんな子供だから話がよくわからなくても…まあ、仕方ないで済んじゃうんだよね。
子供って得だなあ…とアルビスは思った。
一面ではということだけどね。
その証拠にちょっと変な方向に話が進んだ。
つまり小さな子供が魔境をさまよって(ほんとは暢気に旅してた)いて、しかも親とはぐれたという。
となると可能性は限られてくるのだ。
村人たちは思った。
『かわいそうに、魔境に捨てられたんだな』
と。
それ以外に考えられる可能性は…まあ、ないよね。
アルビスたちは村の人が出してくれた心づくしの料理を…おいしくないなあなんて思って食べながら様子を観察していた。
あっ、双子が食べるのやめちゃった。
このところ舌が肥えてきてたからなあ…




