02-10 双子の権能パートⅡ~ケラウノス~歩く迷惑の旅立ち
第10話 双子の権能パートⅡ~ケラウノス~歩く迷惑の旅立ち
「な~ぜ~だ~~っ」
「「ん?」」
双子が見事なシンクロニシティでコテンと首を傾げる。
「うわ~むっちゃ可愛い~」
思わず我をわすれるアルビスだったがしっかりしろと言いたい。
「はっ、いかん、そうじゃない」
そう、問題は双子の第二属性。そして精霊だ。
まず属性に関して。
双子は水属性を目指して水魔法を頑張っていたし、普段使いという意味では土属性が一番遊びに向いていた。
なので二つ目の属性はこのどちらかだと思ったのだ。
だが蓋を開けてみればエドワードが【火】そしてディアーネが【風】の属性だった。
ちなみに二人ともこの属性はあまり使っていない。
『それは二人属性相性の所為だと思うのぴょ』
とシマエナガそっくりのふわふわの小鳥が言う。
ディアーネの精霊『フレスベルグ』だ。
(これはどう見てもフレスベルグじゃないな…)
『うちのご主人は火との相性が良いようなのわん』
そういったのは豆柴の子犬そっくりなワンコだった。
(これをフェンリルと呼ぶのもどうだろう…)
ヤッパ見た目って大事だよな。
見えなかったのが敗因だとアルビスは思う。
属性が二つになったことで二人が【精獣召喚】を使えるようになったので、見ることができるようになった。見てびっくりだったのだ。
それはさておき、精霊たちの話によると人間にはもともと相性のいい属性というのがあるらしいのだ。
偶然精霊の獲得条件を満たし、特に魔法をえり好みするようなことなく卵がかえるとこの相性のうち最も適性の高いものが現れるということがあるらしい。
なので回復属性や、時空属性などもまれに存在することがあるという、低確率だそうだけど。
つまり空間収納をもった魔法使いも世界中を探せばいるようだ。何人かは。そう、そういうレベルでね。
さて、その二人の権能だが、火の権能が『操熱』風の権能が『風歌』という。
ちょっと試してみた感じだと【操熱】は自分の触れた存在の温度を制御するというもので、例えば水を熱湯に変えたり、逆に低温にしたりできる。
鍛冶屋さん垂涎の能力で、これがあれば金属類の加熱なども自由自在なんだとか。
そりゃ仕事がしやすかろう。
アルビスは考える。
(じゃあこれでどういうことができるだろう)
魔法はイメージだ。権能もイメージだ。
火とはプラズマであるから。
そして魔力は万能であるから。
「エド~っ、魔力をこう集めてさ~」
アルビスはエドワードにプラズマを作らせて制御させられないかと思ったんだが…
うまくいきませんでした。
「むう。プラズマレールガンは遠いな」
一応自分が使える属性で見本を作って見せたんだが…さすがにプラズマは難しかったか…
四歳児に何を期待しているのかな?
「まあ、地道に勉強させよう。知識は力だ」
自分の知っている科学知識を教え込む気満々である。
一方ディアーネの風歌は範囲内の風を操る能力だ。
アルビス風に言えば大気を操る能力だ。
であれば空気の質を変えたり、濃度を変えたりとか…うん、無理でした。
これはディアーネがその知識を持っていないためだと考えられる。
だってこの権能、ディアーネの周囲の大気を良好なものに変える力もあるのだから。
「これもちゃんと勉強すればできるようになるかな」
なるだろう。魔法は理解とイメージだ。
「しかしすごいな、風魔法使いって怖いことできるんだな」
はい、それは勘違いです。
この世界には大気の成分に関する知識なんて存在しませんからね。
アルビスの教育を受けてディアーネやエドワードがどんな魔法使いになるのか。ちょっと末恐ろしいという感じがする。
そしてディアーネの権能だが…
「索敵範囲としては僕の魔識覚よりはるかに広いね」
制御範囲内にある者は察知できるらしい。そして範囲が広い。
この権能で何ができるだろうか。とアルビスは考える。
渦巻く風で遠くにいる対象を包み込むとかできるらしい。
さらに権能の範囲が広がったことで、ディアーネの隠者の手が届く範囲が広がった。
何百メートルも離れたところにいる鳥を捕まえるとかできてしまった。
これはこれですごい。
そして…
「隠者の手で物理的な干渉ができるのであれば、自分を浮かせたりできないだろうか?」
できました。
ディアーネは風で出来た羽衣に乗るようにすいすいと空中を歩いて見せたのだ。
「風に乗りて歩むもの…」
いや、それは危ない。
「わーいわーい、風に乗りて歩むものだー」
権能というのは他の権能と重なるとちょっと違った効果を発揮するものらしい。
さすがにその名前はかわいくないので『天女の羽衣』という名前にした。なぜかオリジナル魔法として登録された。
翌日、一晩寝てアルビスはまた思い付きを試した。
エドワードの触れたものの温度を自由に制御できる権能を、ディアーネがやったように隠者の手にのせたらどうだろう。というもの。
はい、あっさりできました。
隠者の手の届く十数メートルほどの範囲だけどエドワードは離れた位置から凍結させたり、加熱したりできるようになってしまった。
触れるものを灼熱に変える【ヒートタッチ】触れるものを凍てつかせる【フリーズタッチ】の誕生であった。
怖いって、マジ怖いって。
この二つの権能は双子の進む方向性を明確に分けたといっていい分岐となったのだった。
◇・◇・◇・◇
さて、人にばかりかまけるのも、心情的にはうれしくてもそれだけではやはりいけないのだ。
なのでアルビスは二つ目の精霊武器の設計を敢行しました。
「まあ、シリーズは揃えなくちゃだめだよね」
コレクターの性。
シリーズとはギリシャ神話。
コレクターというのはしょうもない生き物なんだ。この瞬間アルビスの装備関係はギリシャ神話に準拠することが決まった。
そして考える。
「うーん、ギリシャ神話…ギリシャ神話…今できるようになったのは…そうだ、雷がある!」
そしてギリシャ神話には雷に因んだものがある。
例えばトライデントも嵐を起こすので、関係がないわけではない。だが、より直接的に雷なものがある。
その名も雷霆、ケラウノス。
ケラウノスというのは雷霆って意味ね。そのまんまなんだ。
これはゼウスの使う武器で、形とかははっきり言って無い。
雷そのものだと言われている。
しかし雷とは電気である。電気とはつまり荷電粒子の元である。
「つまり荷電粒子を自由に操れる武器か?」
思考の飛躍である。飛躍しすぎともいう。
もしこのケラウノスに固定されたイメージがあるとするならば、それは手で握って使うものであり、投げつけるとすごい。ということだろう。
なぜならこれをモチーフにしたゼウスの絵画などは大概雷を握っている絵になる。
神話の性能としては投げれば世界を焼き尽くす。とか言われている。
だから前回同様。アルビスは莫大な雷の塊をイメージして【ケラウノス】と名付けた。
またその段階で生成が始まり、今度は一か月ほどで実体化した。
それは金色に輝く槍だった。
謎力によって槍の形に固定された高出力の荷電粒子。
その槍で殴ると大木が木っ端微塵になって燃え上がった。
斬るようにふるえばその軌道の、その延長線上にあるものは何でも真っ二つになった。
投げれば…怖いのでこれは思いとどまった。
「これは武器じゃなくて兵器だね」
しかも大規模破壊兵器だから取扱注意でお願いしたい。
まあ、便利ではある。
ひゅんと振るとカエルが超高温の力場で真っ二つ。
加減すれば伐採も簡単。
素材がザクザク。
「おにいちゃますごい」
「にいしゃまかっこいい」
弟妹の中でアルビスの株は爆上がりを続けていたりする。
これが一番うれしい。
そして季節は流れた。
8月に突入したのだ。
そして準備も整った。
「ううっ、お出かけすゆの?」
「また帰ってくゆ?」
「大丈夫だよ、ここは僕らの家だ。
入り口もふさいでおくから見つからない。
また帰ってくるよ」
「「ううっ…ぐすっ」」
慣れ親しんだ住み慣れた我が家だった。
住んでいる間に生活空間としてのグレードはアップしまくっていた。
地球レベルで。
ここから離れないといけないということはなかなかにふんぎりがつかない事ではあった。
「でも母様をさがさないといけないからね」
「「そうら」」
「母様を迎えに行ってあげないと」
「うん、母様、迷子だから」
えっと…何らかのパラダイムシフトが起きたと思われます。
まあ、そのぐらいたくましい方がいいよね。
三人は迷子の母を迎えに行くために旅立つことになった。
無謀なことに魔境を突っ切る形で領都アイゼンを目指すことにしたのだ。
それはものすごく危険な旅だと、アルビスは思った。しかし行かなければならない。双子と母の未来のために。
そしてアルビスの想像通り、とても危険な旅ではあった。
ただし、魔境に住む魔物たちにとって。
アルビスたちは自分たちがかなり規格外なのを全く理解していなかったのだ。
歩く迷惑が今旅立つ。
大丈夫か?
とても心配だ。
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現在8月。
アルビス6歳11か月
双子4歳7か月。
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