02-07 秘密基地での生活~鑑定~採取祭り
第7話 秘密基地での生活~鑑定~採取祭り
「んあ?」
翌朝、アルビスは重圧を感じて目を覚ました。
首を起こせばそこには…
べそをかいたエドとアーネが抱き着いていた。
「おにちゃ」
「にいちゃま」
胸がこの上なく苦しくなる光景だった。
「おはよう、二人とも、大丈夫だよ、兄さまに任せておくれ。二人のことはきっと守って見せるから。
母様も無事だよ。
きっと母様に合わせてあげる。
だから、もう少し待ってね」
遠い記憶がよみがえる。
あれはだれだったろう。
母親が恋しくて、意味もなく母のことを訪ね。かと思うと何を言っても無視してただ立ち尽くして母を待つ子供。
思わず目に涙が。
それを見たせいだろうか、二人の目にも涙が盛り上がり、ぽろぽろと流れる。
「「うえぇぇぇぇぇっ」」
二人はさらにヒシとしがみついて鳴き声を上げた。
いたたまれない。
(あのくそ男爵、絶対殺す! ズタボロにしてやる!!)
幸い母の無事は確認された。
クロノがフルクトスと連絡を取ってベアトリスが問題ないことは確認できたのだ。なんか精霊ウィキに書き込みで連絡取れるらしい。
(ウィキっていうよりネットだな)
ただ残念なことにフルクトスは自分の現在位置が分からないということだった。
彼(彼女?)は二属性しか持ってなくて、マップのような機能は使えないし、人間の地名なんて精霊個人は気にしてないのだ。
となると今は移動の時じゃない。
まずはご飯だ。
「よし、ご飯を食べよう」
食材もかっさらえるだけさらってきたので結構ある。
だけど…
「あまり食欲があるようには見えないな…こういう時は汁物か?」
小麦はある。
野菜はある。実はけっこう今までかすめ取って溜めていたのだ。
肉がある。これは本当にたくさんある。
そして醤油とみそがある。
アルビスは肉入りすいとんを作ることにした。
ただしすべて魔法でである。
「これも改良しないとなあ…」
鍋を魔法で加熱して、小魚の干物(煮干しみたいなやつ)を粉にして出汁を取り、野菜と肉を煮込んでその間に小麦を捏ねて団子を作り一緒に煮込む。
そして醤油と塩で味付けた。
そう、当然のことだが醤油と味噌は作り方が分かった段階で作りましたとも。
魔法で発酵をコントロールするので完成は早いのだ。
「「おいちー」」
最初気が進まない様子だった双子だったが、ディアーネが一口食べ、おいしいと食べ始めればエドワードもそれに続く。
野菜も肉も炭水化物もとれるので完全食だ。
ただこればかりというわけにはいかない。
やることはいろいろありすぎる。
アルビスが七歳になるまでは町に行ってもどうしようもないと思われた。回収されて孤児院とかに放り込まれてしまうかもしれない。
それに敵の手がどこまで伸びているかわからない。
移動を考えれば3か月ぐらいはここで頑張らないといけない。
アルビスは計算する。
(パンは一か月分ぐらいか…小麦はあるからお好み焼き、うどん、すいとんなんかを混ぜれば当分持つかな…それでも一回は買い物に行かないと無理か?
いや、いっそ自分でパン焼くか?)
(パンだって発酵食品だ。発酵は死属性魔法だ。何とかなりそうな気がする。
肉は十分にある。
野菜がちょっと心もとないか…)
『それだったら外に出て鑑定をするでありますよ。魔境は食材の宝庫であります。
鑑定すれば食べられるものはいくらでも見つかると思うであります。
食材が見つかればそこから調理方法ぐらいは検索できるであります』
マジ便利だなウィキ!
『知恵の円環を持つものの特権であります。有効活用してほしいであります』
全部を検索などできないし、これを見ているだけで時間なんていくらあっても足りないからやはり情報は限られる。
ちなみに『レーン様』も検索をかけたが当然わからなかった。
人間の動向に関してはほとんどわからないらしい。この国の名前は分かるが現在の国王とかは分からない。それは精霊にとって些事だから。
逆に『ドラゴンを倒した偉大な王』とかはわかる。
機能としては百科事典(子供用)+メッセージ機能といった感じだろう。
精霊たちが共有している知識が蓄えられた場所で、有名なこと、簡単なことはかなり調べられる。
逆に専門的な知識はいまいち。という感じ。触りだけとか。
となるとやっぱり書類だよりだ。
アルビスは双子にご飯を食べさせながら持ってきた書類を見て、レーン様がどうやらアイゼンの町にいるということまでは突き止めた。
そこに手紙を出している形跡があった。
「うん、これでアイゼンに行く理由が増えたな」
「おにちゃま、おんもいく」
うーんとアルビスは考える。
この秘密基地ももう少しどうにかしたい。
だが双子から目を離すのも今はできない。
『ほら、鑑定であります』
「ああそうか、よし、表に行って遊ぼう」
「「うん」」
三人は外に出かけていくのであった。
◇・◇・◇・◇
魔法の練習は当然魔力強化から始まる。
二人を膝に抱いて、魔力ぐるぐる。
それが終わったら一人で同じように魔力ぐるぐる。
アルビスが強化されたためにこれは有効だった。
外から見て双子の魔力の状態が把握できたのだ。
(うおおっ、便利)
それで滞っているようなら二人を魔力で包んで周囲の魔力を密にして回してやれば呼応するように二人の魔力も動き始める。
これによって魔力神経が強化され、それはいつしかしっかりとした二人の力になる。
とクロノの助言がありました。
それが終わったらあとは隠者の手を起動させて魚とりとか山菜取りとかさせるのだ。
「これでいいの?」
『イイであります。権能というのは本来こういうもので、無条件で使えるので使いやすく、使っているうちに魔力との交感や制御の感覚が身につくであります。
魔法の基礎が身につくでありますよ。
その意味でも力属性は大当たりでありました』
そういうものらしい。
「きゃーーーーっ、おさかなとったのー」
「あー、僕も僕も」
どうもディアーネの方が活発らしい。
もちろん周辺の警戒も怠らない。
ここは村からカゼコマで2時間ほどの場所。歩きなら半日はかかる場所だ。しかもカゼコマがないと来づらい。敵が来る心配はないだろう。
魔境なので魔物の心配はあるが、それはクロノとアルビスが発見し次第仕留めている。
即死魔法待ったなしである。
さて、鑑定のほうと言えば…
「すごい食材の宝庫だ」
〇 ウクナマル茸…どんな料理もこの茸の粉末をちょっとかけるだけで格段においしくなる。うまみの塊ちゅう毒性はない。はず。
はずって何だはずって。
〇 魔境芋…山芋の魔境生息バージョン。芳醇な魔力で育つため大変美味で滋養がある。
〇 魔境山葵…薬味に最高。魔境の大変奇麗な清流に生息する。少し自分で動く。
〇 ユノの実。木になる木の実の一種。硬いからに覆われた中身は油分をたっぷり含んだ芳醇な実が入っている。ローストしてそのまま食べてもいいし、身を蒸して絞ると上質の食用油が取れる。
「ほぼクルミだな」
〇 ままベリー…赤い紡錘形の実のなる草。生食で美味しく、ジャムなどにしても大変おいしい。栄養価が豊富で一日一個のままベリーは医者を遠ざけるという。大変貴重。
「ちょっと変わったイチゴ」
〇 はじけ芋…握りこぶし大の芋。殻が硬く、そのままでは食べられない。火にかけるとポンと弾けて食べられるようになる。
「巨大ポップコーン。芋だけど」
〇 リゴーンの実…生食で美味しい。ソースを作るときのメイン食材。ソースの作り方は別紙参照。
「何だよ別紙参照って」
『つまりこれでありますな』
クロノがデーターを出してくれました。ソースの作り方が載ってました。
「これならいけそう」
他にも
〇 薬草…色々使えるベースの薬草。
〇 ヒール草…傷薬用
〇 キュア草…毒消し用
色々取れた。
というか取りまくった。
「なんでこんなに食材が多いのにうちの村はつつましやかだったのだろう?」
『いや、なかなかここまでは来れないでありますよ?
それに忘れられてしまった食材もあるであります』
精霊たちは覚えている。でも人間は手に入りづらいのでいつの間にか忘れてしまった。そういうものだ。
そういえば味噌とか醤油もそのたぐいだ。
その日は一日大忙しで夜はバタンキューでした。




