02-04 出撃ワンワン王~神の怒りはおっかない。
第4話 出撃ワンワン王~神の怒りはおっかない。
「くそー、上に行ったやつらは何をしている。まだ子供を確保できんのか!!」
そのころ。
(ありゃ、上から回り込まれた?)
アルビスは至近に発生した敵の気配に驚いてた。
というのもベアトリス達の戦闘の方に意識を集中させていたので周辺警戒がおろそかになっていたのだ。
「おそらくこの辺りに隠れているはずだ。探せ!」
探せ、とか偉そうに言っているがなりは盗賊風で、従うものも一人しかいなのであまりかっこよくない。意味もない。
「探せったって、森の中ですよ、どこ探すんですか、たった二人で」
手下の方が現実的だった。
「グダグダ言うな、探すんだよ」
「めんどくせえなあ…いっそのこと周囲に火をかけましょうか? そうすりゃあぶりだせるっしょ」
現実的だがバカだった。
木の密集した森の中に火をかけるとか、ほぼ自殺である。
「ほう、いい考えだな」
バカ二号。
(すごい、ここまで知性の輝きの見えない人間も珍しい…くもないか)
まあ、この世界教育制度とかしっかりした物がないので平民がろくに教育を受けていないというのは割と普通だったりする。
脳みそだって人間の機関の一つで、しかも筋肉と同様に訓練しないと機能が上がらない機関だったりするのだ。
なのでこういう突拍子もないというか、アルビスからしてどうしてそうなる? みたいな発想をする人間は結構いたりするのだ。
村にもいた。
だから『古老』とか言って経験の豊富なジジイが幅を利かせたりすんのよ。
まあ、それはさておき危機的状況に違いはない。
(仕方ない、ここは魔法で…)
アルビスも大人の騎士と戦って勝てるとは思っていない。
だがやり様だというのもわかっている。
銃を使えば5歳の子供も大人を殺せるのだ。ニュースで見た。
そして銃型の魔法は手持ちがある。
(いきなり飛び出してショットガンぶっ放せば何とかなるかな)
よし、と、思ったところで…
「アル様、このままここに隠れていてください、あいつらは私が引き寄せます」
「あっ、ちょっと」
止める暇もあればこそ。
エミルが隠れていた場所から飛び出して走っていってしまった。
「いたぞ」
「おお、脅しが効いたか!」
いや、本気だった。
逃げるエミル。
そのままベアトリスとは反対の方に。
決死の覚悟だった。
(アル様たちから引き離して、でもベアトリス様に近づいてはダメ。なんとかベアトリス様たちが敵を倒すまで…)
「きゃーーー、いやーーー」
しかし計画はあっさり頓挫した。下から回り込んできたものたちが進みたい方向からやって来たのだ。
捕まれば時間稼ぎにもなんにもならない。
やむなく街道を反転。そっちはベアトリス達が戦っている方だが、仕方がないのだ。
(こういうのを頭痛がするっていうんだよな)
アルビスは頭を抱えたくなった。だが…
(はっ、これはチャンスか!)
そう、今、ここにはアルビスの魔法を秘密にしたいと思っていた人間が一人もいない。双子? それはもう諦めてます。
「エド、アーネ、よく聞いて、お兄ちゃんはお母さんたちを助けに行ってくるから二人でここで頑張れるかい?」
「「…うん、頑張るの」」
双子は互いの顔を見躱し、そしてべそをかきながらでも頷いた。いい子たちである。
「クロノここを頼む」
『お任せくださいであります。しかし大丈夫でありますか?』
それは精霊を離すことで魔法の処理能力が落ちることを心配してだった。
「まあ、何とかなるよ、使い込んだ魔法は普通に使えるし」
やはりなれというか、反復練習することで反射的に組み上げられるようになった魔法もいくつかあるのだ。そういう魔法は問題なく発動できる。
「フェンリルとフレスベルグもお願いね。クロノは隠者の手を使って結界を張って、二人はその補助。力属性が三人もいれば強力だよね。
あとエドとアーネの話し相手になってあげて」
『任せろー、見たいなことを言っているであります』
クロノの言葉を聞いて俺は隠れ場所から動き出した。
ただそのままじゃない。
インベントリを出して準備をする。
準備ができたらさあ、出撃だ。
◇・◇・◇・◇
エミルは兎に角全力で逃げた。
最初は敵が自分を見失わないように。とか考えたのだがそんな余計なことを考える余裕は本当になかった。
少しでも気を抜くと追いつかれそう。
「待ちやがれ」
というか本当にすぐそこまで迫られていた。しかも相手は六人に増えている。
「てか、逃げてんのは一人だな。しかもガキじゃねえぞ」
「ガキどもをかばってんだろ? おそらく元来た辺りにいるんじゃねえか?」
「何だって? じゃあ戻らなきゃ」
「おう、一人で戻れ、俺はあの女をとっ捕まえてガキどもがどこにいるのかじっくり聞いて見るぜ。体によ。すぐにしゃべらせて見せるぜ」
「あー、そりゃいい考えだな。俺もそっちの方がいいや」
「ほらほら、六人だぜ、追いつかれたら壊れちまうぜ」
「前から後ろから攻めまくってやるか、いつまで耐えられるか試してやろう」
「そりゃいい考えだ」
『そりゃクズの考えだ』
男六人が下衆な会話を楽しんでいた時にふいにかけられた異様な声。
殷々と反響して聞き取りづらく、それでいて脳を直撃するように意識に届く。
「誰だ!」
「げっ」
振り向いた六人が見たものは、直立したバロンだった。
バロンというのは獅子なので本来は横長の胴体を持つ四足獣なのだが、中の人がアルビス一人だから上半分がバロンの顔、その下に毛皮や葉っぱで作った身体という、体形的にはテルテル坊主に似た何かになってしまったのだ。だが元ネタを知らない人たちばかりだから問題なし。
アルビスはもちろん返事なんかしない。しかも相手が態勢を整える暇も与えない。
いきなりショットガンをその足に向かってぶっ放した。
とりあえず近くにいる二人。
ずががーん! と轟音が響く。
「ぎやーーーーーっ」
「いでーーーーーっ」
(おおー、意外と効く~っ)
アルビス君、コンラートがかなり強かったんで自分の魔法がこの世界の、戦士とか言う人種に聞くのか不安があった。
でも実のところ人間より魔物の方が頑丈なのだ。
魔物が倒せるなら人間も倒せるのさ。
二人の足はいきなりズタボロ。ちぎれかけたり大きくえぐれたりでもう立つことはできない。
かなりグロいがそれどころじゃないので気にならない。
残った四人はこのわけのわからない生き物の攻撃がわけわからなかったので警戒して動けずにいる。
だがエミルは叫んだ。
「小神様! ワンワン王様!!」
それは最近村で大事にされている小神様の像に瓜二つの存在だった。
アルビスは来ているミノのようなものの下からヘロヘロと手を振る。
それを何かの合図とみなしたのかエミルは回れ右して全力で駆けだした。
(あり? まあ、いいか、そのまま行けばすぐにお母ちゃんたちと合流するし)
「待ちやがれ!」
ずがががーん。
追いかけようとした男の足がまた吹っ飛んだ。
「そんな、精霊様が出て来るなんて…」
「罰だ、罰が当たる」
一部パニック。
「騙されるな、魔物に違いない。死ねーーーっ!」
一人が抜刀して突っ込んでくるが、そいつはいきなり転んだ。
そしてさかさまのまま宙に吊り上げられ…
ずががーんっ!
「ぎゃーーーーっ!」
足をふっ飛ばされて地面に落ちた。アルビスが隠者の手で釣り上げてショットガンをぶっ放したのである。
これで四人脱落。
「小神様だ…神を怒らせちまった」
「そんなわけあるか…」
「だって雷を操ってる。人間にできる御業じゃない」
(おお!)
アルビスはポンと手を打った。
(ショットガンの音を雷と勘違いしたのか。しかも雷をやたら恐れている)
ならば雷撃を使えば追い散らせるのではないか?
そう考えた。
考えて両手を掲げ、そのまますうと体を浮かせて魔法を練る。
(かみなり、かみなり、確か大気中の水分を冷やして、過冷却で、放電現象で、雷自体はプラズマだから…)
アルビスの魔力を受けて上空で雷が生成される。
知識があればその知識に沿って魔力がアルビスのイメージを具現化するのだ。これがアルビスの長所であり欠点。
パッと空に光の筋。
「ひいぃぃぃっ」
「たっ、助けて!」
カッ、ビシッ! ズガーン!!
雷が地面を打った瞬間男二人は全力で逃げ出した。




