01-18 上司は役立たず~オリハルコンて高い!~冒険者到着
第18話 上司は役立たず~オリハルコンて高い!~冒険者到着
「やはりか」
コンラートは忌々しそうに舌打ちをした。
その手には一通の書簡が握られている。この辺りの領地の取りまとめをしているダフニア男爵からの書簡。というか返信だった。
「やはり冒険者に依頼を出したのは正解でしたな」
「うむ、どうせ仕事をする気などないに決まっているからな」
ひどい評価だがダフニア・アポビータ男爵の評価としては至極正しい。
事なかれ主義。自分だけが可愛い。役立たず。ごますりだけが上手。
そんな評価。
なので上にいる子爵の評価は高いが、下からの評価はメタボロそういう人物である。
そう言う人物ではあるが、この辺りの領主たちの取りまとめ役、リーダーで、本来であれば今回のようなケース、強力な魔物が出たというような場合には主導するのが仕事だったりする。
だが過去の事例からも基本的に何もしないのは分かっていた。
『現場で対処できるだろう』
『領地貴族というのは自分の領地を守るのが仕事なんだぞ』
『あー、上の判断を仰いでいるからしばらく待て』
本当に何もしないのだ。
コンラートもそれは分かっていたので男爵への連絡と並行して冒険者を頼む依頼を出した。
男爵からの返事を待ってからだと被害が広がると考えたのだ。
「今度レーン様に会うことになっているからその時にでも話ししてみようかしら?」
ベアトリスが用事のついでにもっとえらいひとに話してみようかと提案するが…
「うーむ、それもなあ…
個人的な友誼で偉い人を動かすというのは…」
コンラートは堅物である。
ベアトリスはそれも知っているのでこの場は同調することにした。
「だがアルビスのおかげで状況は悪くない。というかかなりいい、まさかあいつらが仕事を受けてくれるとは…」
「それもあなたの後輩なんだから、少し融通を聞かせてもらってよいような気がするけれど…」
「馬鹿を言うな、後輩だからこそあまえるような事は出来ないのだ」
コンラートは堅物である。
しかし後輩にあまえないというのは立派かもしれないが、5歳の幼児の厚意で事態の解決を図るというのはいいのか?
ベアトリスはため息をついた。
子煩悩で面倒見がよくて、騎士の鏡のような性格で、結構イケメンだからよい旦那ではあるのだが、欠点のない人間などいない。ということだ。
「ところで領主さま、オリハルコンはどのぐらいで売れたんでございますか?」
「ん? いや、あれは売ってない。連中が現物をそのままほしいというので現物プラス金貨10枚で話が付いた。
オリハルコンは貴重だが、あまりにも品薄だからな、金を出せば買えるというものでもない。であれば現物が欲しいということだった。
現物があれば武器、防具の強化に使えるからな。
現場としてその方がいいのだろう。
わたしももし現役のころにそんな話があったら飛びついておったよ」
コンラートはワハハと笑った。
そう、コンラートはもともとこのエレウテリア準男爵家の嫡男だったが、若い頃に『腕を磨いてくる』と言って冒険者になり、とある傭兵団に参加していた、引退前の数年は団長を務めたほどの腕だ。
ちなみに傭兵団としての仕事の途中でベアトリスと出会って恋に落ちたりとかもしている。
なかなかいい人生だ。
「というわけでオリハルコンは50グラムが現物での報酬となるな。あと38グラム残っているが、これは村のために保存して…」
ぺシッという音が響いた。
「あれはもともとアルビスのものでしょう?」
まあ、そういうことだ。
「しかしだな、子供にあんな高価な物を預けておいてもよくないと思わんか?」
「ええ、思いますわ、でもそれとあなたが自分のものとするのは別のことです」
「いや、自分のものではなく村の…」
「同じことです! あれはアルビスが自分で集めた物なんですからアルビスのために使われなくてはいけません」
ここら辺は感覚の違いというものだろう。
コンラートは領主家に所属するのだからその行動は家のため、領地のため。という感覚がある。
ベアトリスにもそれは分かるが、個人のものは個人のものとして処理されるべきだと考えている。
「ではあなたは冒険者時代に稼いだお金をすべて家のために使ったのですか?」
「うっ!」
とこういわれればぐうの音も出ない。
実際当時稼いだ金は酒や女に費やしてしまったのだから。
「そうだな、それはそうだ、うん、そうに違いない。これは当面預かっておくということで…アルビスが大人になったらアルビスに還元しよう。
そうだ、アルビスの武器の強化に使うのもいいな」
コンラートはいかにもいいことを思いついたように膝を叩いた。
「ぶきー?」
そしてアルビスはちょっと興味を引かれた。
「そうだぞ、武器だ、ほら、これが父様の武器だぞ」
そう言うとコンラートは脇に立てかけてあった剣をすらりと抜いてアルビスに見せた。
それはすらりとしたかっこいい片手剣だった。
(うわっ、結構複雑なつくり!)
魔識覚でそれを見てアルビスは唸った。普段は危ないといって見せてもくれないのだ。つまりいまは話をごまかしにかかっているということだ。
コンラートが見せたそれは武器の形をした魔導器でd‐oss(device - offensive sorcery system)俗にドスと呼ばれるものだった。
これは魔法士でない人たちが戦うために開発されたもので、魔法士の魔法の代わりをする魔導器だ。だから『魔導武器』と呼ばれる。
平たくゆうと魔法陣を組み込んだ武器防具の類で、『威力up』『軽量化』などを基本として、火を発したり、風を飛ばしたり、衝撃を発したりと魔法のような効果を使用者にもたらしてくれる。
他にも一時的な加速とか腕力強化とかもよく使われる。
魔法士でない人が魔物と戦えるのはこのd‐ossがあらばこそ。という感じだ。
現状では魔法士とほぼ同等。遠距離なら魔法士有利、近距離なら魔戦士(d‐ossで戦う人)有利という評価。
ここの実力差というのはあるけどね、平均するとそんな感じ。
ちなみにオリハルコンはこのd‐ossを作る際の希少な素材で、これがあるとないとではd‐ossの性能に大きな差が出るといわれている。
だから魔戦士にとってオリハルコンは価格以上の価値がある。
「魔導武器を持った少年剣士…うん、なかなかいいな。これだけオリハルコンがあればかなりの剣が作れるぞ」
コンラートは自分の空想の世界に行ってしまってニマニマと楽しい未来予想図で遊んでいる。
完全に意識がそれたな。
ベアトリスは仕方ないなあ、とばかりにため息をついた。
その夜。
アルビスはベアトリスからお金を渡された。
なんと金貨三枚と銀貨四枚。
結構な大金だが…
「なぜ?」
「うんとね」
ベアトリスが言うにはアルビスが渡したオリハルコンは88グラムあったということだった。
これは大きな町で調べてもらった正規の結果だ。
そのうち50グラムが今回の報酬になった。
そして残りが38グラム。
このうち8グラムをコンラートが換金していたらしい。その代金が3金貨4銀貨。およそ64万円相当。
アルビス君頭の中で日本円に直してますよ。まだ金貨とか価値が把握しきれてないんだよね。だからいったん日本円にしないとよくわからない。
で計算する。
(え? 8グラムで64万円? つうことは、1グラムが8万円? そんなすんの?)
するのである。
一応相場でそうなっているが、実の所依頼を受けた冒険者の判断通り、オリハルコンはお金を出せば買えるというものではない。
運よく市場に出回ったときに出くわせばそのぐらいが底値。ということだ。
これだってオークションに掛けられたりするともっと跳ね上がる。
グラム8万円は売ろうと持ち込んだ時の売値ということだ。
「このお金はアルビスのものだから、お母さんが貯金しておくね、あと残りのオリハルコンもね」
そう言って部屋を出ていくベアトリスを見送りつつ、アルビスは思った。
(よっし、オリハルコンをもっとたくさん集めよう)
まあ、作り方は分かっちゃったしね、川の中にある金を見つければ作れるのだ。
翌日元気に川に遊びに行ったアルビスが見たものは! 夢中になってオリハルコンを探す村人たちの姿だった。
はい、そしてやってきました冒険者。
「先輩待たせましたね、太陽の牙傭兵団、ただいま到着です」
さわやかな兄ちゃんが歯をキラーンとさせて挨拶をした。
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現在は9月
アルビス6歳
双子ちゃん3歳と8か月




