01-17 剣術~異変~オリハルコン(なんでやねん)
第17話 剣術~異変~オリハルコン(なんでやねん)
さて三つ目。これも勉強と言えないこともないが武術の修業が加わった。
(五歳の幼児に剣術教えるんかい!)
とか思ったのだが、ここはそういう世界なのだ。貴族に求められるのは知力と武力。無くては辺境では生きていけないと…
コンラートは言う。
「貴族は人々の先頭に立ち、剣をふるい、民を安堵し、彼らの生涯に責任を持たなければいけない。我等が貴族と呼ばれるのはその責務を果たすからなのだ」
と。
そしてコンラートは結構高名な騎士らしい。
「よいか? 自分のことを風に舞う羽だと思うのだ。敵の攻撃をゆらり、ひらりと躱し、的確な攻撃を繰り出す。それが幻舞剣の極意だ。
普通の流派は極意を一番最初に教えたりはしないのだが、我が流派は違う。
まず一番最初に見せ、それを常に心において修業するのだ。
それほどこの極意は難しい。そうせねば習得など夢のまた夢なのだ」
コンラートは体格のいいなかなかの大丈夫。
なのに動きは軽やかでまさに蝶のように舞い、蜂のように刺す動きだった。
(ちょっとすごすぎてどうやったら勝てるのか想像がつかない…)
地球でテレビで格闘技を見ていた時などは『俺でもできるんじゃね?』 なんて思ったことが何度もあるがあれはイメージだけだからそう思うのだ。
実際に体を動かすとなると全く思い通りにならない。
イメージに現実を追いつかせるにはかなり洒落にならない努力が必要なのだ。
しかし…
(走り込みとかストレッチとか、そういった基礎練習は全然しないんだな)
とちょっとあきれる。
そう言った基礎体力作りから始めるべきだと思うのだが…
さて、そんなわけでアルビスは剣術を習い始めた。
魔法があれば必要ないのでは? と思うかもしれないが、アルビス自身はもう好き勝手に魔法を使って、テケトーに魔法を作っていたりするのだが、周りの人は知らないのだ。
であればアルビスが将来魔法士になるかわからないということになる。
まあ、親が魔法士だと子供も魔法を覚える確率が高いといわれているから期待はされているが、それに一点張りするわけには行かない。
当然コンラートのような戦士になる未来もありうるものとして教育が必要になる。
そういうことなのだ。
そしてベアトリスがいる以上適当なところで魔法の修業も入ってくるのだろう。きっとみんなびっくりするんだよね。
と、まあ、こんな具合に毎日いろいろやることがあり、忙しい五歳児だったりする。
なので。
「うおおおおおっ、兄ちゃんはお前達に会えて幸せー」
弟妹は当然に癒し枠。
そんな穏やかな日々だったが、異変はじわじわと近づいてきていた。
◇・◇・◇・◇
「というと、具合悪くなったのは川の水を飲んだやつなんだな?」
「へぇ、間違いないです。ここらは川の水も綺麗なもんで、井戸で水を汲むのがめんどくさいやつはつい川の水を飲んじゃったりするもんで」
「あと、もう季節も温かいもんで子供たちが、川遊びをしていて具合を悪くするっていうのが何件か」
「で原因は毒だと?」
村人たちの話を聞いていたコンラートがベアトリスに向き直って問いかける。
ベアトリスはそれを頷いて肯定した。
現在は7月である。豪雪地帯とはいえ夏である。
川で水遊びができるぐらいには温かい。
この村の川は魔境から流れ出る小川に分流を作ったもので。かなり綺麗な水が引き込まれている。しかし飲料水には普通は井戸を使うので、川の水は使われない。ということになっている。
だがこの水で喉を潤す者は昔からいるし、水遊びで川に入って口にしてしまう子供もいる。
そんな時期に体調を崩す村人が続出したのだ。
具合の悪いものが出たら当然、医者の出番となる。つまりベアトリスの出番である。ベアトリスは即座に村人の治療にあたり。一つの結論を出した。
毒の可能性が高い。
しかも体調を崩したのが川の水を飲んだものばかりということはすぐにわかった。
井戸とかならともかく川に毒となれば川上に何かある可能性が高い
コンラートの指示ですぐに調査隊が編成された。
村の騎士と森に詳しい狩人、力自慢の村人らからなる6名。
全員が辺境暮らしなので、足には自信がある。
数日後、川をさかのぼっていった調査隊が一つの報告をもたらした。
「ヴェノムゲーターだと?」
猛毒ワニさんである。まんまや。
アルビスの家で緊急の会議が開かれた。
こういう時子供というのは便利なもので、どうせ話を聞かれても大した問題はない。とみんな考えているから盗み聞きをするまでもなく、同じ部屋の中にいたりする。
夕飯時なのでみんなご飯を食べたり、お酒を飲んだりしながら話をしていて、その隅でアルビス達もご飯になっている。
なので弟妹の食事の世話をしながらしれっと話を聞いていたりするのだ。
「しかしベノムゲーターとは困ったな…あれは討伐難易度『Cプラス』級の魔獣だぞ、さすがに戦力が足りん」
「Cプラスですか…えっとなんのことっすか?」
村の若者が首をひねる。アルビスも当然知らないことなので興味津々だ。
なので魔力で傘を作って音を集める。【耳がダンボ】である。
どんどん変な魔法を作るなお前。
「お前不勉強だな」
「はは、仕方ないさ、本来ならレベルⅡの魔境に出るような奴じゃない。
難易度Cというのはパーティー戦闘を想定しなくてはならない強さということだ」
コンラートの言によれば。
討伐難易度としてどの程度の戦力で当たればそれを倒せるかという基準があるということだった。
ランクはS、A、B、C、D、E、Fの7段階になっている。
S・極めて危険、喧嘩売るのはやめましょう。
A・国が総力を挙げた対応するレベル。
B・まとまった戦力、軍隊などで対処しましょう。
C・一流の冒険者チーム、あるいは複数のチームで対処するべき。
D・冒険者がチームを組んでいれば(パーティー推奨)大丈夫じゃね?
E・武装した大人なら行けるよ。
F・ただの村人でもなんとかなるなる。
といった感じになる。
『+』とか『-』とかはその中でも強目とか弱目とかの感覚的なもので正式な基準ではないけど結構多用されている。
『D+』となれば冒険者チーム、それもかなり腕の立つやつが必要になる。という感じになる。
ちなみにFには人畜無害な魔物も入ります。
「ご領主さまでも無理ですか?」
「ちと厳しいな。コンラート様が後三人もおられれば何とかなると思うが…村で討伐しようとなると、ある程度の犠牲は覚悟せねばならんだろう」
「うむ、領主としてそれは避けたいところだな」
「冒険者チームを雇うしかないわね」
「そうなるな」
ベアトリスの発言にコンラートが頷く。
冒険者というのは昔からいる何でも屋のような職業の人だ。
魔物の討伐、危険な地域での護衛、遺跡の調査、迷宮の探索。まだ人間の生活圏がこれほど確立されていない時期から連綿と受け継がれ、人類の未来を切り開いてきたり、単に事態をひっかきまわしたりする由緒正しい何でも屋だ。
危険を冒して金を稼ぐものということで冒険者と呼ばれる。
しかし問題もある。
「しかし腕の立つ冒険者を雇うとなると…どのぐらいかかるんですかの?」
「そうだな…最低線で…一人頭5金貨というところか…」
「かなりの額ですな」
冒険者は普通4人から6人ぐらいでチームを組む。
これは役割分担の問題だ。
そして冒険者にもランクがあって、計算の基準が一応ある。
コンラートは今回の討伐依頼なら一仕事で金貨25~30枚と考えた。能力的な要求を満たす最低限でだ。
ちなみに金貨1枚は日本円で20万円ほどと考えてほしい。
つまりヴェノムゲーターの討伐報酬が500万円(最低線)ということになる。
これを高額と見るか安いとみるか。強力な魔獣相手の命がけの仕事と考えるとこんなものだろうか…
「まあ、以前のロックバックフロッグの素材代がまだ残っている。あれに蓄えを足せば何とか届くだろう」
背岩大蛙というのは以前の氾濫騒ぎの時に倒したエリアボスだ。結構いい金になった。みたいだね。
「よし、いい冒険者を雇うには多いに越したことはねえ、儂らも少し持ち寄るべ」
村の老人が言い出した。
「そうだな、はした金でも集めればそれなりになるじゃろて」
「まあ、村があってのものだねだからな」
村人たちが村のためにお金を持ち寄る。その光景は見ていて小気味のいいものだった。
というかアルビスも心震える。ここで立たなきゃ男じゃない。いや、幼児だけど。
「母様、これあげるー、冒険者を雇うの~」
アルビスはトコトコと両親の所に歩み寄る。
ベアトリスにひょいと抱き上げられて膝に乗せられたのは予定外だったが、無理矢理振り返って小さな小袋を出した。
「あら、くれるの? アルビス何かしら」
話の流れからアルビスが村人の真似をして、冒険者を雇うための何かを差し出したというのはわかった。
子供のやることなので、当然それに期待などはしていなかったがその気持ちが嬉しい。
親としては思わず頬ずりをしてなでなでしたくなるというものだ。
その気持ちのままベアトリスは小袋を開けて中身を確認した。
びっくりして二度見した。
「え? ちょっとこれって」
「どうした?」
驚くベアトリス。覗き込んでくるコンラート。
そこにあったのは…
(ふっふっふっ、砂金なのだよ)
アルビスはほくそ笑んだ。
「「オリハルコンじゃないか!!」」
(え? うそ!)
知らなかったんかい!?
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現在は7月
アルビス5歳と10か月
双子ちゃん3歳と6か月




