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アルビス 自由なる魔法使い  作者: ぼん@ぼおやっじ


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01-15 戦闘~ボス登場~コンラートいいとこどり

第15話 戦闘~ボス登場~コンラートいいとこどり



「炎の精霊よ、炎の精霊よ、その猛々しい力よ、燃やし尽くす存在(もの)よ、その力を我に貸し与え給えーーーっ! 着火!」


 村人の一人が朗々と呪文の詠唱をして魔法を行使する。


(おおっ、なんかすごい呪文だ、どんな魔法だろう?)


 と思ったら松明というか集められた薪に火が付いた。

 普通に着火の魔法だった。


『えーーーっ』


『まあ、ああいうのはありでありますよ。呪文というのはイメージを補強するために使われるものなのは周知の事実。なのでイメージが明確になるならどんなのでもいいでありますよ。

 マスター殿みたいに呪文なしでも全然問題ないであります。

 あの呪文は彼が…イメージを掴みやすいのでありますな…きっと』


 それにしては仰々しすぎるのでは? と思わなくもないのだが、まあ、相手が薪なら反撃される心配はないから長くても派手でもいいのか? と妙な納得をするアルビス。

 ただ魔法としては正常に機能していて、集められた薪の火はたちまち大きくなり、魔法が得意でない村人たちはそこから長いトングで燃え盛る薪を掴んでカエルに向かって投げつける。

 カエルは火が嫌いで、火であぶられると方向転換して森に帰っていくようだった。


 中には直接魔法でカエルに火をつける猛者もいる。

 普通の人は魔法といっても生活に仕えるような魔法を二つ三つといった感じなのだが、中にはちょっと頑張った人もいるのだ。

 燃える炎を叩きつける火球の魔法なんかは火魔法の基本になる。


 土魔法も地味に役に立っている。

 石弾の魔法なんかが地味に痛いらしい。


 風はいまいち。

 むしろ弓を使う人の補助的な使い方で役にたっている。

 風で物を斬るとか言うのは実はかなり難しい魔法なのだ。


 そんな感じでダメージを受けると魔物も、つまりネズミや百足もじたばたするようで、逃げる者、動きが止まって、その所為でカエルに食われるものと確実に数を減らしていた。

 カエルに食われるものが存外多くて実はカエルが一番活躍していたかもしれない。


 ベアトリスはというと水魔法で百足を攻撃していた。


「フルクトスとの共同作業! 【水神の怒り、形を成して、我が敵を撃つ、ウォーターバインド】!」


 水の玉を飛ばし、その水が絡みついて敵を拘束する。という魔法で、あまり役に立ちそうもないのだが、百足には覿面に効いていた。

 水弾ではないからだ。精霊の水の権能【創水】で強力な洗浄剤を作ってそれを混ぜているので百足というか昆虫系には効果覿面だったりする。


 全身を包みこむ洗浄剤になぜか百足はのたうち回って即座にご臨終。

 理屈は分からなくても経験則としてそういうのが継承されているのだ。


「うーん、さすがお母ちゃんだ。あたまいい」


(これならもう心配はないかな?)


 そうも思うがやはり心配だから目を放せないアルビス。でもちょっと家の方も気になったりする。

 もう結構長い時間留守にしているから。


(うーん、どうしよう、これ以上いないと騒ぎになるかも)


 何かそんなことが心配になってくる。


 よし、仕方ないそろそろ撤収しよう。と思ったときにそれはやって来た。


 バキバキバキ、ズズーン。


 何かが樹木をへし折り、鞭のようなものを振り回して百足や鼠を粉砕する。

 残っていた多くない魔物たちもこの存在に粉砕されてスタンピードは収束する。

 まあ、喜べる状況ではないのだが。


 邪魔になる木々を押し倒しながら現れたそいつは…


「でっかいカエル?」


 やっぱりカエルだった。


◇・◇・◇・◇


ぬしね…なんでこんなところに」


 ベアトリスのつぶやきはアルビスにも届いた。というか聞き耳立ててました。


『主って何?』


『エリアボスでありますな』


 分かりやすい。


『何それ?』


 でも知らないものは知らない。


『魔境には魔力の流れの関係で区分ができるでありますよ。

 それをエリアと呼ぶであります。以前、話にでた魔境のレベルもこのエリアごとに決まるであります。

 そしてエリアにはそのエリアの魔力を一番多く奪い取る強い魔物がいるであります。これがエリアボスであります』


 というわけだ。 当然エリアレベルの高い魔境ほど魔力が潤沢で、その魔力を利用するボスは強くなる。

 今、ここにむかってきているのはそう言った魔物ということになる。


「なんか硬そう」


『そうでありますな。水もあまり効きそうにないでありますし…』


 カエルだからね。

 大きさは4メートルぐらい。イメージできないときは6畳間をイメージしてください。あんな感じです。

 しかもその背中はまるで岩のような突起がごつごつと生えていて、のっしのっしと歩いてくる。


 恐怖に駆られてか矢を射かける村人もいるが当然簡単に跳ね返されている。

 カーンとか音がしているから見た目通り硬そうだ。

 当然ベアトリスの魔法も効かなかった。


 アルビスにはわからなかったが消毒薬の水弾から始まって毒の水弾も使っていたのだが効果なし。

 ベアトリスはやむなく陣形を整えて後退するしかなかった。じりじりと。


「ここは僕の出番だね」


『そうでありますな。ヒーローであります。大人気でありますぞ』


 それは困るのだ。あまり目立ちたくない。それにヒーローは正体不明の方がいい。

 そう考えればまあ、いいかという気になった。


『入滅陣』


 そして最初に使うのは当然一番使い慣れている即死魔法。まあ、これもいかがなものかという気はするのだが、アルビスは躊躇なくそれを放った。


 カエルの周囲に暗い魔力が立ち上り、その身を包み込む。

 その魔力は縒り合わさって針となり、一本、二本と突き刺さり…


「ああ、砕けた!

 何で!

 あばばっ」


 思わず声が出てしまったが、幸いベアトリス達は結構はなれていたので気づかれずに済んだ。

 だがこれは大問題だ。


『魔力量の問題でありますな。ボスの魔力はかなり大きいのでマスター殿の即死魔法をレジストされたようであります』


『えー、そんなのあるの?』


 あるのである。でなかったら即死魔法最強伝説が始まってしまうところだ。


『当然であります。死の魔力は生の魔力で打ち消されるであります。というか対抗属性で打ち消し合うであります。

 強い方が勝つでありますよ。

 そして生きとし生きるものが生きるために蓄えているのは生の魔力であります』


 ふむと考える。


(そりゃそうだよな。もし逆に俺が受けたら即死魔法を受けたときに問答無用で死んでしまうのはいただけないものな)


『死属性だけではないでありますぞ、魔力を強靭に練り上げて強くしておけば状態異常魔法にも強くなるであります。

 いいことずくめであります。

 そうすると死属性魔力も強くなるであります』


「あり~?」


 分かったような、分からないような。


『げろーげろー』


 しかし思索はカエルの声で打ち切られた、こんなことをしている場合ではないのだ。


「仕方ないね、物理攻撃に切り替えだ。銃弾生成・銃身構築・照準セット…レールガン! 撃て!」


 ちょっと考えて魔法名を入れてみました。

 撃ちだされたタングステンの砲弾は一直線に飛び、カエルの外殻である岩のような皮膚を貫き見事にそれを撃ち抜いた。

 しかし…


「あれ? 今当たったよね」


『当たったであります。確かに貫通して穴が開いたでありますよ。ですがあっという間に穴がふさがってしまったであります。

 なかなか手ごわいでありますな』


「マジかー」


 即死魔法も物理攻撃も聞かないってどうすりゃいいの?


「いっそのこと強力な火炎魔法とか…」


『ここは村に近い森なんでやめておいた方が…』


 ごもっとも。


 しかしそうすると…

 しばし黙考。


「よし、思いついた」


 マジか!


「今度は銃弾の生成をじっくりやるぞ」


 そう言うとアルビスはじっと空中の一点を睨む。


『何をするでありますか?』


「カエルって寒さに弱いだろ? さっき火の魔法をいくつか考えてて思い出したんだ~」


 そう言うアルビスの前に形作られていくのは氷の弾丸だった。

 大きさはタングステンのものと同じぐらい。


『確かにカエルは冷気に弱いでござるが…』


「ふっふっふっ、ここからが本番なのさ、さあ、どんどん冷えるがいい、熱運動よとまれとまれー」


 アルビスが考えたのは氷の弾丸がカエルの体内で砕け、その冷気がカエルを冷やしていけば仕留められるのではないか? というものだった。

 ただ物知りのアルビスが考えたのはそれだけではない。

 弾丸を絶対零度まで冷やせばいいんじゃね? という無茶な発想。


 物質というのはどんなものでも細かく振動している。ミクロの世界ではね。

 この振動のもつ運動エネルギーがイコールそのものの温度なのだ。

 地球でも加速はできる。ご家庭にもあった。加速すればどんどん熱くなるわけで、とある変わり者の大学教授は金属でも燃やせる! といっていた。

 だが逆に直接減速する方法はなかった。冷やして熱を奪う形だ。


「だがしかーし、ここには魔法がある。魔法はイメージ、そして魔色覚であれば、分子運動だって見ることができる!」


 見えなくてもイメージはできるのだ。だが見ることができればより正確にイメージできる。干渉できる。

 目の前の氷の熱運動をどんどん低下させる。

 マイナス40度にもなれば立派な硬度だ。

 さらに冷やす。


「ううう、これ以上は…」


『いやいやいやいや、-180度近くになっているであります』


 まあいいか?


 ということで連続発射。

 作った弾丸は3っつ。意外と手間がかかりまくった。

 そしてわざわざ背中の硬いところを狙ったりしない。

 頭とか目の周りとかちゃんとお肉を狙う。


 三つの弾丸は目の後ろ、肩口に当たり、一発は外れた。


『命中精度がいまいちでありますな』


「うん、要練習」


 だが狙いはうまくいった。弾丸は今度は貫通はしないでカエルの体内で砕け、破片となって散らばった。そしてその近くには脳などの中枢神経もあったのだ。


 -180度の欠片は周囲の組織を凍結させ、致命的に破壊していく、しかも凍結した組織は再生もしないのだ。

 それは間違いなく致命傷だった。


 だが、カエルは鈍ちんだった。

 致命的なダメージを受けながらもまだ動く。


 そこまで観測できなかったアルビスは失敗したかと慌ててもう一度砲弾の生成を始めようと…


「ぬおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」


「あっ、父ちゃんだ」


 そこに現れたのはコンラートだった。


 コンラートはうおりゃーと剣を払うとカエルのおしりをしたから切り上げた。その反動か一瞬足が伸び、前転するようにひっくり返るカエル。

 コンラートはすかさずカエルの腹の上に飛び乗りその心臓に深々と剣を突き入れた。


「うおおおおっ、意外、父ちゃん強い!」


 なかなかひどい感想だ。

 だがこれでカエルは沈黙した。というかすでに死にかけではあったのだよ。見た目はともかく。だがそれを知っているのは状況を注視していたクロノだけ。

 あとコンラートが手ごたえのなさというかあまりの簡単さに首をひねっただけだった。

 だがまあ、そこらへんは騎士であり、領主であるコンラート。周りを鼓舞し、自身の力を誇示するために勝鬨を上げるのだった。


「とったぞーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!」


 まあ、そんな感じで。


 ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ 


現在は四月です。

アルビス三歳と七か月

双子ちゃん一歳と三か月


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