01-13 カエル~芋虫~魔物の氾濫
第13話 カエル~芋虫~魔物の氾濫
「げろげろげげーーーーーーーっ」
撃ち抜かれたカエルが絶叫を上げた。
ついでに後ろ足で立ち上がり、くるくると回転しながらパタリと倒れる。
「すげー、芸達者だ!」
『あー、うん、その感想は分からなくもないであります。しかし杭で貫かれた挙句ネタにされるとは、哀れ〝水弾カエル(ショットフロッグ)〟』
ショットフロッグというらしい。分かりやすい名前だ。
魔物の名前はこういった特徴をとらえたものが多い。名前から種類とかどんな攻撃をするとか類推できるようにだ。よいことである。
さて、アルビスの撃ち出したタングステンの銃弾は太さ1cm、長さ10cmほどのもので、弾体に溝を刻んだ効果か、ぶれることなくまっすぐに飛び、カエルの頭を貫いて地面に突き刺さった。
というか潜っていってしまった。
しかしこの砲弾は時間が経過すると元の魔力に戻って分解するので後顧の憂いはないのである。
そしてカエルはひっくり返って大の字に倒れ、ご臨終とあいなった。
『さっと仕舞うでありますよ。これはお肉として優秀であります。熟成に四、五日おくのが良いとされているでありますので当分大丈夫であります』
当分というのはストレージの時間遅延効果のことだ。その効果はおよそ360倍。
つまり一年経過すると収納の中では一日が経過するということになる。四、五日分というと現実世界では4年から5年ぐらいで食べごろになる。
もちろん保存期間というかおいしくいただける期間も数日あるのでこれ以降10年は食べごろで保存可能ということになる。これはすごい。
収納するべきだ。
ストレージを起動させて収納。魔法陣にアブダクショーーン(そう見える)されるカエルの死体。それはあっという間だった。
結構慣れたのである。
すると魔識覚にあらたな反応がうつった。
「またカエルだね」
一度現物を見ると魔色覚で見得る映像は鮮明になる。
その少し後ろからさらに動体反応がやってくるがこちらはもやっとした何かにしか見えない、まだ。
ただ大きさはカエルよりも小さいようだ。何かで見たような動きをしているが…後回しにした。
「バレット生成・銃身構築・射撃準備、照準セット。発射」
気分です(笑)
まあ、実用的な効果もある。
先ほどはかなり集中して操ったイメージと魔力だったが、一回成功させると次からは精霊のサポートが入るので魔法の構築はずいぶんと楽になる。
それに加えて言葉でイメージを補助してやるとさらに効率が上がる。
やり方はオリジナルだが、普通の魔法使いが呪文の詠唱をするのと同じ理由だった。
特に新しい魔法で効果が顕著で、魔法が格段に安定する。
なのでというわけではないだろうが、少しずつ改良もされていったりする。
さっきは空中に筒が浮かんで、そこから弾が発射される感じだったが、今回は筒を手で支えるような感じになっている。
つまり銃に似てきているのだ。
撃ちだされた砲弾は木を回り込んで顔をのぞかせたカエルの眉間を貫いて反対に突き抜けた。
「うーん、さっきよりいい感じ?」
『そうでありますな、イメージに安定性を感じるであります』
そういうものらしい。
そして次がやって来た。
「あっ、怪獣だ」
モス〇である。芋虫。大型。50cm。
先ほど見えた影はこれだったのだ。動きに覚えがあるはずだ。
『クリームキャタピラーでありますな』
キャタピラーというのは芋虫のことだよ。クリームは色のことか?
『あれは非常に』
「非常に?」
『おいしい虫であります』
…
……
………
「ムリムリムリムリムリムリムリ。あれを食べるとか無理!」
あー、日本人は昆虫食とはあまり縁がないからね。
アルビスもイナゴの佃煮とか、蜂の子とか、あることは知っている。
だが知っていると大丈夫は全然別の事。
蜂の子の炊き込みご飯をテレビで見て衝撃を受けたときの記憶がフラッシュバックした。
ぶるぶるとおぞけが走った。
でもクロノは空気を読まない。
『何を言っているでありますか。これは大変いいものでありますぞ!
まず大変栄養価が高いであります。またミネラルが豊富で免疫力や髪や爪の健康にもいいであります。さらに多価不飽和脂肪を含んでいて脳にもいいでありますよ。子供は食べるべきであります。お味に関してはオーブンで焼くだけで簡単に調理できる素晴らしいスイーツであります。
これを食べないというのは生命に対する冒とくであります』
はい、クリームはクリーム色ではなくクリームみたいな濃厚な味の虫。という意味でした。
「た…確かに…」
そしてアルビスはたじろぐ。
飽食の日本ではないこの世界。食べ物を無駄にしないというのは当たり前の思想だ。
こうして魔物との戦いがある以上、食糧確保は命がけな部分がある。
また常に豊作が約束されているわけではない。
そう言う感覚はここで育ったアルビスにも結構しっかり根付いていたりするのだ。
そんな環境で栄養価の高い食材を廃棄するのは許されない。ような気がする。
「よし、狩ってあとはストレージに入れておこう」
というわけで?…アルビスは先送りを選択した。日本人の得意技だ。
他にも日本人のお家芸が発揮される。
それは怪獣映画。
対象がそれっぽいので、イメージが映画で見たSFチックなライフルに引きずられた。
手に触れる魔力場の感触がそれっぽくなり、左手で銃身を支える感触、銃把の感触がよみがえり、肩にはパッドの感触も生まれる。そうなると構造もブルパップに近づき、パッドのあたりから加速力場が構築される。
やっぱり銃器は男の子の憧れ、アルビスだって昔はモデルガンを喜んだ。
レールガン。その名は自然と口を突いてでた。
魔力場によって光が屈折し、陽炎のような、透き通ったライフルがアルビスの手の中に生まれてたのだ。
そして引かれる引き金。
バスン! バスーン!!と発射音が二発つづく。
そう、連射すら可能になった。
二発の強力な弾丸は芋虫怪獣の頭部を粉砕せしめた。頭がないとまだ大丈夫な気がした。
往生際が悪いとか言わないように。
しかし一度腹を決めるとあとは早い。
アルビスは魔色覚で周辺をサーチして魔物を狩りまくる。
そして収納した魔物の数か20を超えたころクロノが声を上げた。
『これは変であります。いくら何でも魔物の数が多いであります』
昼寝の時間を利用して魔法の実験…狩りをしているのだ。それほど時間がかかっていない。なのにすでに魔物の数は20を超える。
狩りというのは実の所、獲物を見つけるのが一番時間がかかるのだ。
『ちょっと見てくるであります』
そう言うとクロノはアルビスに自分を召喚してもらい、森の奥に飛んで行った。
空飛ぶクジラ。うん。
そして息をつく間もなくマッハで帰ってきてそのままアルビスの顔に突っ込んだ。
お約束である。
感触としてはフェルトで作ったボールがぶつかったような軽い感じ。それでいてぷにぷにで水で出来たお饅頭のようなしっとり感。
「ふぱらひい(素晴らしい)」
『それどころではないであります。氾濫であります。魔物がいっぱいであります』
氾濫、それは魔物が大挙して魔境から押し寄せる現象。
辺境の人たちが最も恐れる災害だ。
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現在は四月です。
アルビス三歳と七か月
双子ちゃん一歳と三か月




