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アルビス 自由なる魔法使い  作者: ぼん@ぼおやっじ


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04-02 免許皆伝? (いいえまだです)

第2話 免許皆伝? (いいえまだです)



「というわけで、王都というところに行ってきますね」


『ぎゅーーーっ』(なんだってーーーっ(意訳)(たぶん))


 アルビスの報告にアファナトスはムンクの叫びと化した。


 ここは相変わらずの霊峰アファナシア。

 アルビスは週一でここにやってきて、修業とおさんどんの時間を過ごしていた。

 冬の間も週一で通ってはいたのだ。空飛べるからね。可能なのさ。


 ちなみにアルビスたちがアファナトスに弟子入りしていることは公然の秘密である。

 なぜならこの国の始祖はアファナトスの弟子だったから。

 つまり王権神授の一形態なのだ。

 王家がどうとか血筋がこうとか面倒臭いのである。


 アルビス達がなぜ王都に行くことになったかというと、まあ、王様からの招待だった。

 先日、王様と会う約束の日、王様はやってこなかった。

 王都で急な用事が発生して、来ることができなくなってしまったのだ。


 なので王様の部下という人がやってきて、実務者レベルの御話し合いが進められたのだ。


 ベアトリスが『女伯爵』に叙されるにあたり、叙爵式がとりおこなわれる。その打ち合わせのためだ。

 これによってエレウテリア家は『王家の臣』という身分になり、スクード辺境伯とは『同僚』ということになる。


 ただ貴族としての寄り親はスクード辺境伯レムニアであるし、臣下としての立場も塩の安定供給のための国王直属の家臣ということになるので、結構気楽な身分である。らしい。


 ただ、お披露目の意味を込めて王都で叙爵式――現在の爵位はスクード家から与えられたものなので陞爵とは違う――が必要になる。

 もちろん子供たちも全員参加であるのだ。


 迷宮でのトラブルも諸々仕置きも終わって、これからどうするのか方向性も整った。

 その一つとしてこの叙爵式が企画されていたのだ。


 先日の約束はその打ち合わせだったのだが、急につぶれた。理由は『勇者が誕生したから』だった。


 これは大事で、王様が王都を開けて出かけるということができなくなってしまったらしい。


 アルビスにしてみれば勇者というのも何のことかよくわからないのだが、大人の説明によれば、王国には『神器』と呼ばれるすごい武器があって、これを使うことのできる者に『勇者』の称号をあたえるというのが昔からの習わしらしい。


『へー、ほー、そうなんだー』


 というのがアルビスの感想。

 自分が迷惑をこうむらなければどうでもいいのである。神器というのには心惹かれたが、王都に行けば見ることができるだろう。と悠長に構えている。


 他にもドラゴンの処理も終わった。

 終わったと聞いた。


 ここら辺もあの日に話を、という約束だったので、詳しいことは分からないのだが、ドラゴンのあれやこれやが高額で買い取ってもらえたのでいいのである。

 少なくともアルビスたちの権利としてドラゴンは処理されたのだから。


 なので問題は目の前の奇怪生物である。

 彼は、最近アルビスが甘やかすので欠食児童ならぬ欠食魔獣となっている。いや、これは字面だけ見るとやばいな。


 まあ、そんなわけで現在アファナトスはこの世の終わりのような衝撃を受けてよろめいているのだ。


「だいじょうぶ?」

「まってられる?」


 双子が覗き込むがアファナトスはがっくりと膝をつき、うなだれてしまっている。


 カナリアとモップは冷めた目で見ている。モップの目にはたぶん恨み節が揺れているな。


 だがまあ、我らがアルビス君には抜かりはない。


「というわけでご飯を大量に作って用意してきたから、ちゃんとしまっておいて、曜日を決めて食べるんだよ」


 お弁当である。

 おさんどんというよりここまでくるとおっかさんである。


 アファナトスも空間収納は使えて、しかも時間経過はないのだ。作ったものが劣化する心配はない。

 ないのだが…


『きゅっきゅきゅ♪ きゅっきゅきゅ♪ きゅきゅーーーーーーっ♡』


 カレーやらステーキやら唐揚げやらカツやらを嬉しそうに歌いながら自分の空間収納(インベントリ)に収納するアファナトス。


 アルビスは思った。

 こいつは絶対あればあるだけ食べてしまう。と。

 所詮はけだものであった。


◇・◇・◇・◇


「じゃあ、準備があるから今日はこの辺で」


『きゅっ!』(まて)


「何です?」


 なんとなくニュアンスで意思疎通。


『きゅー、きゅきゅきゅっもきゅっきゅきゅきゅーーーーっ』


 無理でした。


《通訳するであります。

 アファナトスが言うには、修業は一つの段階をクリアした。よって、初級の修了を認めて、授けたいものがある。

 ついてこい。

 と言っているであります》


「わかるんかーい」


《向うが分からせようとしている時は通じるであります。

 必要がないときはなんとなくで済ませているようでありますな》


 アルビスや子供たちとはなんとなく意思疎通ができているからね。


 そんなわけでアルビスたちはアファナトスのお家――傍から見ると大神殿――に入っていって、扉の前に案内された。

 そこで脇によけるアファナトス。

 どうやら開けろということらしい。


 なので扉に手をついて、力の限り押して…


「うごごっ、おもいーーーっ」


《それ引き戸であります。しかも上であります》


 つまりすさまじく重たい扉を、重力制御で上に持ち上げないと入れない部屋。

 アファナトスと、それに準じる重力使いでないと開けられない扉。単純で完璧な防犯設備だ。


 アルビスは空間を制御する。

 空間の歪みを制御して重力を軽減し、扉を軽くする。


 だが勘違いをしてはいけない。重さが無くなっても慣性は働くのでそれだけで扉は動かないのだ。

 なので扉に手をかけて引き上げると…


 するするするーっ。

 と開きました。すさまじく立て付けがよろしいようで。


『きゅっ』(よろしい)


 アファナトスは開いた扉の隙間からトコトコと中に進んでいく。

 アルビスたちもそこに続く。

 扉はバトンタッチしました。すごく簡単に支えてます。さすが。

 そして部屋の中は…


「うおっ」

「わあー、きれいなの」

「すごいねえ」

「きれいです」


 そこは、アファナトスの宝物庫だった。

 とてもきれいだった。

 ただし正面だけ。


 正面だけきれいにディスプレイされていて、とてもきれいなんだが、両脇にはゴミがぶっ積んである。


 しかも天眼で、きらきらしてみえずらいところを透かし見ると…


「魚の骨?」


「あ、にいさま、金色の漫画肉なの」


「こっちはセミの抜け殻がある」


 つまりアファナトスのアファナトスによる、アファナトスのためのコレクションルーム。


「あまりお近づきになりたくない感じだ」


 正直な感想だった。

 だがアファナトスはそんなことにはお構いなしで、奥から箱を持ってくる。


「きゅっ」


 そしてその箱を開けるとそこには、かわいい感じのアイテムが。


 小さい三つの赤い球と、大きい赤い球を組み合わせて足跡っぽい形があり、その後ろの薄金色のワイヤーと鳥の羽毛のようなもので作った台座に固定したような5センチほどのオブジェクト。

 手作りの勲章というのが的確な表現か。


 アファナトスはそれをめいめいに渡す。アルビスのものだけ足跡が青い。


「きゅっ」


「ああ、はいはい、僕が付けるのね」


 アルビスは後ろのワイヤーを使ってそれをみんなに装着してやる。小さなリングがあって、それを変成で衣類に通す仕様になっている。

 双子は大喜び。

 カナリアはなぜかくねくね動いて、妙にじれた感じで、アルビスの手におっぱいが強く当たったりするのだが、アルビスは紳士である。できるだけ知らんぷりで胸にその勲章をくっつけて…

 くっつけて…

 くっつけ…


「ええい、そんなにじたばたしたら付けられないじゃないか!」


「そんな、アルさまがこんなに近くにいると思ったら、いてもたってもいられなくて…」


 カナリアは危ない方向に進んでいるらしい。


「きゆきゅっ。きゅきゅきゅーーーーーっきゅっきゅっ。きゅー。きゅきゅきゅきゅきゅっ。ぴっ」


 そしてアファナトスの長口上が始まる。

 通訳はアファナトスの依頼で召喚されたクロノ。


「えーっ、君たちが私の弟子となって、早、数か月…その間…


 (どこかの校長先生並みに話が長かったので省略します)


 でありますので、君たちが、アファナトス道場の初級過程を修了したことを証し、ここに第一弾の修了証明を授けます。


 ご飯係はその功績大であるによって、その努力をたたえ、中級の修了証明を授けます。


 だそうであります」


 ここでアルビスがアファナトスにご飯係と認識されていた事実が判明。

 まあ餌付けに成功したという意味では正しいのかもしれない。

 ため息。


『きゅっ』(あとねえ)


 アファナトスは脇のガラクタを置いてあるところにトコトコ走っていくと、そこにある物をがっちゃんがっちゃん掘り起し、一つのアイテムを取り出した。


『きゅーっ、きゅきゅーっきゅつきゅゅ』


《カナリア嬢にはこの武器を授けるといっているであります。

 まだ精霊武器が使えないでありますから、代わりにこの武器を使うようにと。

 貸し与えた練習用の武器を振り回せるようになったのならこれも使えるだろう。

 これは『神器・ミョルニル』である》


 アルビス君ギョッとした。


「なんかすごいのが出てきちゃった…

 でもミョルニルってあんなだったか?」


 ちょっと変わったデザインだね。


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