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アルビス 自由なる魔法使い  作者: ぼん@ぼおやっじ


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03-27 大団円までまだかかるみたい

第27話 大団円までまだかかるみたい



 さて、これで何とか大団円。かと思ったらパニックがやって来た。


「あなたたち、何をやっているの!」


 ママ登場である。

 子供達パニック。


 ほんの一瞬前まで意気揚々とドラゴンの周りではしゃいでいたのだがベアトリスには歯が立たないのだ。


「わーん、ごめんなさい」


「きゃーーー♡」

「うわーーー♡」


 双子は喜んでいる。


 ベアトリスは緊急事態ということで呼ばれて大急ぎでやってきたらそこにアルビス達がいたのだ。

 いや、知っていた。多分知っていた。


 なぜならレムニアが呼んだのはベアトリスだけではなくアルビスもだったから。

 当然アルビスをよびに行って脱走は発覚してしまったのだ。


 拳骨を食らって涙目のアルビスはベアトリスの後ろですまなそうに手を合わせるカナリアを見た。


(まあ、仕方ないやね)


 そういうものである。


 その後は全員で迷宮を出て、件の騎士は厳しい取り調べを受けることになったし、冒険者はもう、恨み骨髄で騎士をののしりながら受けた依頼に関して知っている限りのことをまくしたてた。


 捕まった騎士もあきらめたかのようにすべてを話した。


 自殺しても死なせてもらえないというのは、つまり取り調べが、永久に終わらない事であり、そして、いかなる拷問も躊躇なく実行できるということであるから。


 結果、塩ギルドの暗躍が明るみに出た。


 一応綱紀粛正を実行しているスクード領だが、商人やギルドと懇意な騎士がすべて処罰対象なわけではない。

 そんな理由だけで騎士を処罰していては人など使えないのだ。

 つまりそう言った外部とのつながりを完全に無しにするのは不可能なのだ。


 だから見つかったところを厳しくするしかないわけで、すぐさまスクード地方の塩ギルドのメンバーが拘束された。意外と素直に。

 彼らは捕まりはしたけれどたいしたことにはならないと思っていたのだ。


『どうせ奴らには何もできんさ』


 と高を括っていた。


 それは今まで塩の独占という特権の上で胡坐をかいていて、どんなことでも大概は塩の流通を盾にすれば許されてきたという現実が作り出した、行ってみれば精神が肥大した人間特有の、現実を見る能力の欠如。彼らにとって現実とは自身の思い込みに他ならないのだ。


 塩迷宮が誕生し、自身の利権が脅かされている。だから不正を働いてでもなんとかしようとしたくせに、それがうまくいくことを信じて疑っていなかった。

 だから今回の犯罪も『気楽』に行った。


 だがそのしっぺ返しは苛烈だった。証人がいるのだ。しかも生命線である塩は、スクードにおいて十分に供給のめどが立った。

 容赦のない取り調べにギルドのあらゆる意味で肥満した幹部たちは、自身の受ける苦痛を少しでも少なくするために、遠慮なく同僚を道連れにすることを選択した。


 死なばもろとも…なんて言う気合のある話ではない。『儂じゃない、あいつが悪いんだー』というしょうもない、幼稚な心働きだ。


 それによって出てきた証言には取調官たちがあっけにとられるほどだった。

 だが…


 ◇・◇・◇・◇


「やはりここまでか…」


 後日、王様はスクード城でレムニアと今回の調査結果を検証してた。


 王様なのでずっとここに居続けるなどできるはずもなく、しかし王城でこれをやっていると煩わしい連中が、特にギルドとつながりのある貴族が蠢くので行ったり来たりしつつ、いい感じでうっとうしい貴族たちを躱していたりする。


 特別な移動手段があるのだよ。


 さて今回の事件、スクード領の塩ギルドの職員を総ざらいして不正の証拠を積み上げてはみたものの、そこから先をたどることはできなかったのだ。

 スクードのギルド支部に捜査の手が入った段階で、王都の塩ギルドの幹部の何人かが不審な死を遂げてしまったのだ。残りは直接関係していなかった者たち。

 ろくな証言が取れなかった。


「やはりイライザ殿(第一王妃)は絡んでいるのでしょうねえ…」


 そう言うレムニアに国王は一度肯定してから否定した。


「あいつの意向が反映されたのは間違いないだろうが、何かを指示したりはしていないだろう。あれは典型的な甘やかされた貴種だ。

 何とかしろと喚き散らしただけだろう。

 実際に動いたのはその下で働いているやつらだ。

 忖度というやつさ。探しても証拠なんぞ出ぬと思う」


 ほぼ正解。


 二人は大きくため息をついた。

 竜核が帝国から持ち込まれたとしても、国が関与した証拠はないし、それをたどるのは難しいだろう。


「だがまあいいさ、スクードの塩ギルドはこれで叩き潰せた。

 スクードでの塩の流通を妨害することはもうできまい。

 これでスクードは聖域と言っていい。敵が手を出せない領域が確保できたのだからあとは先日の話通り、王国が直接塩を流通させればいいのだ。専売公社といったか? あの子の言った。

 あとは塩の採掘と販売を事業として軌道に乗せてしまえばいいのさ。


 迷宮はルール通りエレウテリア家の権利だ。

 採掘と販売の権利はスクード家が確保して、スクード家から王家が塩を独占的に買い取って国中に販売する。

 スクードから各地への輸送は王家の担当だな。警備の名目でスクードに戦力の支援もできるし」


「そうね、うちから王家に販売するとき、王家が各地に販売するときに多少の利益を乗せても十分に、今までとは比べ物にならないほどに安くできるわね。

 それに採掘、輸送が効率化すればコストは格段に下がるでしょうし、いきなり安くなりすぎてもと少し高めの設定にしてあるから、この金額でも王家と辺境伯家はかなりの利益を確保できるわよ」


 王様ため息。


「つまり今までどれだけ塩ギルドに搾取されていたのかということだ」


「余裕が出てきたら、周辺国への輸出も考えるべきね、各国の販売価格。現在の半分でもほとんど濡れ手に粟ね。まあ、もっと下げるけど」


 塩の確保手段が極端に限定されるというのはそれほどやばい話なのだ。

 それだけに国内の塩の価格も極端に低くはできなかった。これを低くするとテンバイヤーとか言う職業が誕生してしまうだろうから。

 まあ、金額は熟考するのだろう。


「あとはエレウテリア家の方だけど、こちらは予定通り…」


「まあそうだな。功績を考えれば侯爵でも惜しくはないがねまあ、それもできないから伯爵で、法衣伯爵で国からの俸禄は功績分を上乗せして…

 あとは迷宮の利用料として塩の販売額のいくばくかといった感じになるか」


 もしこの話を聞いていたらエレウテリア家の面々はきっと目を回していただろう。

 あまり大金に縁のない人たちだからね。


 三家の協力体制、権利関係も整ったので、あとは政治的な横やりは入りにくくなるだろう。

 あと敵の攻撃手段としては実力行使だけなのだが、こちらは十分な戦力を用意する気満々な二人だったりする。


「あと、問題は、アルくんだなあ…

 ん? アルくんと言えばドラゴンはどうなった?」


 そう言われたレムニアは後ろから資料を取り出した。


「はい」


 資料が多岐にわたるので説明を放棄したらしい。


「おお、これはほぼドラゴンだな、ここまで再生が進んでいたか…」


 そこにはドラゴンの死体を解体調査した様々な情報が記載されていた。


 まずドラゴンの魔核、つまり竜核は、一級品である。ということが目についた。


「竜核としては小さ目、まだ若い竜とおもわれる。ただし、迷宮の魔力を吸い上げて質は極上…と」


「アルくんは特に必要はないから上げるって言ってたわよ」


 そう言いながらもレムニアはその時の光景を思い出す。

 アルビスの隣にはぷんぷん状態のベアトリスがいたのだ。

 おそらくベアトリスの怒りを躱すためにこちらにおべっかを使った結果だと思われるね。


「あはは、まあ、そうであっても褒賞はちゃんと出すさ。

 それにドラゴンの素材もかなりいい状態で確保できたらしいじゃないか」


「ええ、調査した者の話では雑味がないからだといっていたわね」


 つまり生まれたばかりで、生きていくための無駄を全く経験していないドラゴンであるということ。余計なものが一切含まれていないのだ。

 竜の内臓などは高価な薬の素材として極めて貴重だったりする。そして前述のような理由で状態がかつてないほど安定しているのだ。


「骨や鱗、牙もいい状態ね、質も悪くない。本当に絶妙のタイミングだったわね、あれがドラゴンとしてほぼ完成した瞬間にアルくんたちが乱入してきて討伐。

 あそこで倒せなかったら迷宮を乗っ取られたか、あるいは外に飛び出して甚大な被害を出したか…

 それを考えるとやったやつらにはきついお仕置きが必要でしょう…」


 でも証拠がなければしかたがないのである。

 勿論別の形での報復はするつもりだけど。

 この王家は武闘派なのだ。


「ただこれをアルくんが討伐しましたといって、周りが納得するかどうか…」


「無理ね」


 だよなー。


「さて、そうなるとこれをどうするかも考えないとな…

 ちょっとアルくんと話してくるか…」


 王様はスチャッと立ち上がった。

 体を鍛えているからね、動きが軽快なのだよ。

 そしてアルくんを探して歩き出すのだった。


 □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □


 12月アルビス8歳3か月。双子5歳11か月


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