第四話 ひとまずは休暇です 二
カルデラに到着したのは夕方に差し掛かるころだった。ずっと揺れる荷馬車に乗っていたのでお尻が痛い。よぼよぼした足取りで荷物を抱えて外に出ると、懐かしいスパイスとカレーのにおいがした。ああ、やっと帰ってきたんだな。そう思うとほっとした。不思議だ。十三年間フェリス王国の実家で過ごして、家出をして、たどり着いたカルデラにいるのはまだ5年ほどなのに。こんなに、故郷みたいに、カルデラが懐かしいなんて。
軽い馬車酔いも、荷馬車から出て自分の足で少し歩くと楽になるようだった。
しっかりと大地を踏みしめて、私たちのホームまで歩いていく。そんな私のそばを、ノアは荷物なんかお構いなしに、玄関のほうへ駆け出していた。
「ニーナ姉さん!!」
「ノア!!無事だったんだね!!」
ニーナは飛び込んできたノアをしっかり抱きとめてハグをした。
「姉さんこそ、僕がいなくて寂しかったでしょ」
「大丈夫だよ。心配してくれるなんて、ノアはやっぱり優しいね」
そう言って微笑みを交わし合う姉弟。ニーナは私にとってもお姉さんみたいな存在だ。入団したばかりのころ、市井の常識もほとんど知らなかった私を、ノアと一緒に、なんとか傭兵としてやっていけるくらいにしっかりと教育を施してくれたのだ。傭兵団には女性は少なかったから、女性ならではの相談事ができたこともありがたかった。私もきれいであったかい人柄のニーナが大好きだ。再会を喜ぶ二人のところへ、私も寄って行った。
「ニーナ、ただいま」
「フリッグ。ノアがくれた先触れに、レモンケーキ食べたがっているって書いてあったから、作っておいたよ」
「え!!」
「よかったね、フリッグ。姉さんのレモンケーキは絶品だもんね」
「ありがと~!!ノア」
「僕だって役に立つでしょ?わかったら、もう先輩を子ども扱いすることはやめるようにね」
「先輩でも子どもは子どもよ。危ないこととか、させたくないからそれは無理」
「こらこら。こんなところで喧嘩しないの。ヒース。おかえりなさい」
「ただいま。留守の間、変わりなかったか」
「これ。ボンじいさんから手紙が来ていたわ。あと、カルデラの自治会長が相談事があるとか。早めに行ってあげて。あとは……」
夫婦であるふたりは、なにか話し合いながら建物の中へ入っていく。それに続いていくと、大きく開けた部屋に出た。食堂を兼ねた大広間だ。すでに食事の準備は始まっている。手伝いが必要そうな状況だ。荷物を置いたら手を洗って、支度を手伝おう。
私は重い荷物を抱えなおし、自分の部屋へ向かっていった。




