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第三十一話 殿下のお話しです

 殿下は静かに自分の考えを述べられた。

「確かに、君は一般的な令嬢としては落第だ。だが、君には君にしかない良さがある。つまらない常識的なものさしは捨てて、君自身の魅力を諸侯や民にアピールしていこう」

「私自身の魅力?」

 そんなものがあるのかと、私は首を傾げた。

「君は傭兵だ。国の危機に、外国から駆けつけ、王太子と共に前線で戦い勝利した。私と手を取り合い、国を救ったのだ。この功績は、他の令嬢にはないものだろう」

「それはそうですが……戦えるというのは、令嬢としては印象が良くないのではありませんか? 国の危機に駆けつけたとか、国を救ったとか……少し大げさな気もします。私は仕事だから来ていただけですし」

 なんなら、殿下に会わないように、別部隊を希望していたくらいだ。

 それに、傭兵と令嬢だなんて、組み合わせが悪すぎる。

 貴族の令嬢というものは、なにか危機があったなら、自室にこもり、震えて泣いているくらいが丁度よいとされているのに。

「戦を経験した者たちは、物語を必要としている。私たちの将来のためにも、君には国の英雄になってもらおう」

「嘘じゃないですか」

「嘘じゃない。傭兵として戦ったことは事実だ。自信を持ってくれ」

 殿下は、にやりと笑った。

「フリージア。もし俺を受け入れてくれるなら、覚悟をした方がいい。君と一緒にいられるのなら、俺はなんだってしてみせる」

 策士のような顔を見せる殿下に、私は思わず背筋が寒くなった。

(でも、なんだか嫌じゃない。……私、こんなに殿下のことが好きだったのね)

 もし私が「英雄」だというお触れが回れば、私の欠点である「令嬢らしくない」部分も、きっと受け入れられるのだろう。

(……私が王妃だなんて、務まるのかな)

「フリージアも、カルデラを離れるのなら、話しておくべき相手がいるだろう。ヒース殿だったか。あの者はなかなかの人物だったな。ミールを付けるから、一緒に傭兵団の拠点へ戻りなさい」

 殿下はそう言って、にこやかに笑った。

(外堀が着々と埋められているわ……)

 仕方ない。ここまできたら、やるしかない。

 私は令嬢らしく礼をして、ミール様と共に城を後にした。

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