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第三話 ひとまずは休暇です 一

 次の仕事は、フェリス王国の南西に位置するハルラ砂漠でキャラバンの護衛をするらしい。

 フェリス王都からハルラ砂漠へ向かうちょうど経由地には交易都市カルデラが存在する。

 カルデラには傭兵団の本拠地があり、そこで団員たちは少しの間、休暇をもらえることになった。

 もちろん、私も休暇がもらえる一人である。嬉しくて、スキップしてしまいそうな気分で帰路につく荷馬車の中で過ごしている。

「ご機嫌だね。フリッグ」

「休暇が嬉しいのはノアも一緒でしょ?もう1年も従軍していたんだもん。私、毎日配給される食事を食べながら、カルデラに帰ったらなにを食べようかって考えてきたんだから。クルラおばさんのところのドーナツ、中央通りのアーモンドパイ、ニーナが作ってくれるレモンケーキ!休暇の間に、食べられるだけ食べるのよ」

「相変わらずの食い気だね。色気がない」

「あらあら。色気ってものがなんなのか、私はいまいちピンとこないんだけど、ノア君はその年で本当に分かってるの?」

「うるさいよ。フリッグだって僕と年は4歳しか違わないだろ」

 馬車の中でうきうき気分を持て余している私の話し相手になってくれているのは、ノアという名前の、14歳の男の子だ。傭兵団のなかでは貴重な魔法使いで、ニーナという年の離れた姉がいる。傭兵団の中では年のわりに経験も長い方だった。


私にとってノアは年下だけど、入団時にお目付け役として付けてもらった直属の先輩にあたることから、かなり世話を焼いてもらった自覚がある。


それに、団の中では割と年が近くて、性格の相性も良かったのだろう。今では私とノアの関係は先輩後輩の垣根を超えて、気心が知れた、気の置けない友達と呼べるものになっていた。

 だから今回も軽いノリでからかうと、大人ぶりたいノアは遠慮なく、ふてくされたように言い返したのだ。

 私はのんびりした気分で、荷馬車のなかで寝転がった。その隣で、ノアは魔導書を開き、今度は精霊相手にお喋りを始めた。ノアは精霊と仲が良い。それはそのまま、彼が優秀な魔導士であることを示している。

「ニーナ姉さんにもう連絡行ってるかな。もし帰ってくるって先に分かっていたら、ごちそう作ってくれるんだけど。団長ったら、連絡忘れることもあるもんね。ねえ、どう思う?団長に言っといたほうがいいかなあ」

 ノアと精霊の会話を聞き流しつつ、私はあくびをした。今日は心地よい快晴だ。熱すぎるわけでもなく、お昼寝をするにはちょうど良い気候だ。

 かくして私たちの傭兵団が有する馬車は、カルデアに近づきつつあった。

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