第十七話 手紙を受け取りました
(説明は、これくらいかしら)
少々脱線した感じはあるが、団長に説明すべきことはすべて伝え終えた。
そんな私に、団長は一つ頷いて、私の頭をぽん、として、よしよしと撫でた。
「事情があるとは思っていたが、お前、苦労してきたんだな。そりゃあ、アスターが血相変えて頼み込んでくるわけだ」
もし気安く頭をなでる手が、団長のものでなければ、私はきつく振り払っただろう。
でも、今の相手は団長だから、私はなでなでしてもらうことが、多少くすぐったくて恥ずかしいものの、嫌な気持ちはしない。団長のことは、お父様と同じくらい大切なひとだから。
団長が話した聞き覚えのある名前に、私は尋ねた。
「そのアスターさん、もしかして、私を団長に紹介してくれた人ですか?」
「そうだ。アスターが王国の騎士だった頃、一緒に仕事をしたんだ」
私は息を飲む。助けてくれた人たちの名前を、私は全部は知らない。ある人は慎み深く、またある人は、身の安全のために明かせなかったのだろう。
「そのアスターっていう人、無事ですか?幸せに暮らしていますか?」
「くたばったっていう話は聞かないから、多分無事だろう」
私を逃がしてくれたランドバルク家の使用人のことが、ずっと気がかりだった。私を助けたことが、義母たちに知られないか、心配だったのだ。
よかった。
私を陰ながら助けてくれたその人が今も無事で、本当によかった。
「つまり、お前はジーニアス王子と面識があったんだな。再会したのは先の戦か?」
「はい。同じ弓兵として配属され、再会しました」
「そうか。……話したくない事情を聞いて悪かったな」
そう言って部屋を出ようとする彼に、私は慌てて尋ねる。
「一緒に中を見なくていいんですか?」
「俺は団員の交友関係に口出ししない主義だ」
「……ありがとうございます」
部屋を出ていく団長を見送って、私は封筒をじっと見つめた。
細かくて美しい字。
中にはこう書かれてあった。
「返事を聞いても、私の気持ちは変わらない。一度、ゆっくり話したい。近々カルデラに行く機会がある。その時、会ってくれないか」
(……会えば、私は強制的にフェリス王国に連れ戻されるのかもしれない。それが怖いわ)
戻ってきた自室の机で私はため息をつく。
もし、なんの障害もなければ、王子お言葉を、素直に受け入れられるのだろう。
でも、現実はそう簡単ではない。悩ましい気持ちが胸を締め付ける。
そっと手紙を机の引き出しにしまい、私はろうそくの明かりに息を吹きかけた。
(返事はまた明日書こう)
先に眠っているマリンが、寝返りを打つ音をが聞こえた。
深呼吸をひとつ。今日の出来事を胸にしまい、私も眠りについた。




