表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

心温まる

相棒

 トントントンとアパートの階段を降り、金子俊介は自転車の鍵を外した。我が相棒は赤のマウンテンバイクである。

 朝日方向にペダルを漕ぐと、スピードと共に鼓動も早くなった。

 春風が気持ち良い。

 いつものバス停に憧れの吉川さんが見えた。いつも白い日傘で立っている。大学の事務員さんで、大学院生の俊介とは同年代の顔馴染みである。

 笑顔で挨拶する。

「お早うございます。先に行きますね」

「おはよう。気を付けて」

 お互いに手を振った。空は青く、街の空気は澄んでいる。

 五分も走るとバスが追いついて来た。車内には吉川さんの姿が見える。

「よーし、バスには負けないぞ」

 両足に力を込めて速度を上げた。上り坂は苦しいが、気持ちは前向きだ。

 行け、行け、進め、風になれ。

 大学前のバス停で下車した吉川さんが驚いた。

「えっ、もう着いたの。凄い脚力ね」

 1キロは全力疾走だった。背中にうっすらと汗をまとう。

「はい。じゃあ行きましょう」

 俊介の胸は熱く心は静かである。

 大学は丘の上にあり、薄紅色の桜が満開であった。

 楽しそうな多くの仲間に混ざって歩道を登り、授業や先生たちの話をした。うんうんと笑顔で頷く吉川さん。

 そのとき何気ない「自転車が好きなの?」との質問が嬉しくて、俊介は将来の夢を語った。

「俺の夢はいつか自転車で世界一周することです」

 赤いマウンテンバイクを見つめて、まだ見ぬ世界を想った。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ