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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

歪んだ社会は今日も正しい

作者: 機文屋

澱んだ膿を吐き捨てるがごとき内容です。

オタク差別を知るオタク以外はブラバ推奨。


 なろうの復讐ものが好き。

 なろうの復讐ものを書く人たちと読む人たちが好き。

 割り切るには大きすぎる呪いや妄念を、一時だけでも和らげてくれるから。


 いい人間になって、いい作品を書きたいと夢見るときもある。

 ほんわか、ゆるふわ、スローライフで優しくて癒されて~、みたいな。


 でもたぶん、絶対に無理だろうなと感じている。


 今日は、そんな歪んだ俺の主観と妄念についてシェアしていこう。

 当時の感情を最優先に書くので、読んでて引っかかる箇所があったら申し訳。


――――――――

――――

――


 初夏に入り、本格的な暑さの予兆を肌で感じるようになった。

 毎年、暑くなってくるといつも思い出す。


 首つり自殺したネットの友人のことを。

 より正確にはネトゲから発展したゲーム仲間のひとりだ。


 その人は日本社会に再燃したオタク差別と、それに後押しされたイジメのターゲットになり、現実を苦にして首つり自殺してしまった。


 40代以上のカースト上位の人や、ゆるーく加害者で共同正犯だった多くの日本人女性にはピンと来ないかもしれないが……当時、日本の津々浦々には宮崎事件以来の「オタクはイジメ殺しても無罪」という空気が残っていた。地域や学校単位の小さな社会で、個別に、脈々と受け継がれていた。


 とまあ、今や女性比率が多いと言われる『小説家になろう』にケンカを売るような爆弾を投げてみたところで。正直、ここに住んでいる俺より年上のお姉さま方には理解できる人もわりといるのではないだろうか。


 なぜなら、オタク差別は女子も標的だったからである。

 自殺した友人はまさに女子だった。


 2009年。世にいうレイプレイ騒動が勃発。経緯はあまりにもゴミクソの胸糞すぎるので各自で調べていただくとして、道徳的に正しい活動家の皆さまは、ここぞとばかりにオタクへの迫害を全力で煽った。


 ある女性活動家は言った。


「レイプをシミュレートするゲームなんて絶対に許せない! 女の子を守るためにオタクは社会から排除されるべき!」


 二次元を規制せよ。二次元をたしなむ者を追放せよ。

 あれもこれも全部キモいオタクのせいだ。オタクさえ死ねばすべて完璧になる。

 滅ぼせ、叩け、ぶち殺せ。それこそが唯一にして絶対的な正義。

 根拠は〝社会的に正しくなくて〟私が不快になるからだ!


 おお、正しい。なんと正しいお言葉なのだろうか!

 マスコミも追随して、社会も追随した結果。


 オタクの女の子は死んだ。実質的には殺されたも同然だ。

 先ほど現実を苦にしてと書いたが……。


〝イジメ〟を苦にして〝自殺〟。

 この文脈から行間を類推していただくことは可能だと思う。


 『悪いオタク』はボコボコに叩かれ。

 差別され。迫害され。攻撃され。徹底的につるし上げられた。

 マスコミが絶対だった時代、少なくとも、影響を受けた複数の地域で。


 運のいいオタクもいただろう。不運なオタクも大勢いた。そして死んだ。


 女性活動家は叫んだ。「私たちの勝利だ!」と。

 その陰で俺の友達は、彼女らの引き起こした()()のせいで自殺した。





 まこと驚くべきことに。この流れには色んな人たちが便乗した。

 普段は不倶戴天の敵であるはずの人たちが。


 共産主義者と警察、左翼と右翼、マスコミと政府(三権)……。

 どいつもこいつも仲良しこよし、肩を組んで大はしゃぎしていた。


 特に三権の動きは驚きだ。


 立法は外国と国内の嘘つき団体に反論するどころか、背景の把握もしないまま、速攻でオタクの人権を売り渡した。与党も野党も右も左もない。どいつもこいつも全裸でケツの穴をおっぴろげて、クソ毛唐どものアソコをじゅぽじゅぽしゃぶるがごとく白旗を上げた。


 その中には国民を守ると主張して憂国右翼に大人気の女性国会議員もいた。

 俺たちは国民ではないらしい。


 その中には人権を守れー!と主張して反日左翼に大人気の女性国会議員もいた。

 俺たちには人権などないらしい。


 行政は? 自殺が増えたら「イジメはいけませ~んw」と注意喚起(爆笑)をうながすクソみたいなプリントを1枚だけ配ってきた。ペラッペラでやっつけ仕事感が丸出しの、明らかに責任逃れのやつだ。


 イジメに名を借りた殺人の代償は、全体へのプリント配布?

 リスクがなければ抑止力など働かない。つまりこれはメッセージだ。


 オタクなんぞ殺しても我々は真剣に受け取らないよ、というメッセージ。

 やる側の人間たちは確実にそう受け取っていた。現場からは以上です。



 ならば司法は? ……w

 もはや論ずるに及ばない。


 否、論じようと思えば100万字でも足りない。

 ただシンプルに言い表すなら、司法府は日本国憲法を鼻紙にして捨てた。

 法の下の平等など成立していないのだと、自らの振る舞いを持って世に示した。


 そりゃあイジメ野郎も安心してヤるだろう。


 その後ろでクスクス笑ったり、一緒に石を投げていたやつらは。

 成長して大人になり、今や『日本社会』の世論を構成しておられる。


 恋愛をして、いい会社に就職して、幸せな結婚をして。

 誰かのよきパパ、よきママ、よき隣人、社会人として。

 訳知り顔で、鼻の穴を膨らませながら、美しい正論と道徳を叫んでおられる。


 他人を踏みにじって殺したその口で。


 彼らは2020年代を生きている。

 俺はいつでも2009年からの数年間を見つめている。


 エセ人権、エセ愛国、エセ統治。

 キレイゴトを唱えるマスコミや一般社会。 


 あのとき、日ごろから秩序や人権擁護を声高に叫んでいたはずの人々は。

 間違いなく差別主義者で、全体主義者で、権威主義者で、ヘイト人間で。


 何にもまして邪悪な表情で絶対の『社会正義』を唱えていた。


 その道徳的で歪んだ顔つきは悪魔そのものだった。

 腐敗した独裁者そのものだった。自ら掲げた主張のすべてを裏切っていた。


 ――自らを〝正しいひと〟と位置付ける連中は、偽善者でクズで人殺しだった。


 結局のところ、誰がやったか、どうやったか、何名でやったか。

 それが罪に問われるか否かの要件だ。

 空気が許せば起訴すらされない。被害届も受理されない。


 だから安心したのだろうか。社会を構成する人々の主流派は。

 レジャー感覚で間接的な人殺しに熱狂していた。


 当時、どいつもこいつも「オタクは日本の一員じゃない」と熱心に叩いていた。

 〝日本の恥を罰する〟という大義名分を振りかざして。


 あの日、あの時期、俺たちは。

 間違いなく、国民としても、人間としても扱われなかった。


 ……そう思わずにはいられない体験をした。


 宮崎事件直後の氷河期世代の諸兄姉からすれば。

 ケツの青いガキがなにをと笑われるのだろうけれど。




 俺は学校なんてサボりまくりの廃ゲーマーだったからダメージは少なかった。

 人生全体へのダメージはなかなかだけど、それでもどうにか生きている。


 一方で、マジメなやつ、周りの理解が得られないやつ、ひたむきで一生懸命なやつらは、逃げ場のない刑務所へ送り出され、案の定、死ぬまでイジメられて力尽きたわけだ。


 差別されるとわかっていて、オタク差別の最前線にオタクが放り込まれて。

 あらゆる無法とゴミクズムーブのサンドバッグにされて。


 あのゴミみたいな数か月間、よくぞ耐えたものだとすら思う。


 お互いのためなら首を刎ねられても惜しくないと思える仲間が、どんな気持ちを抱えて地獄へ拷問を受けに向かっていたのか。


 対戦ゲームを「もう1戦やりたい、明日はサボるから」と冗談めかして要望する裏で、明日を迎えることへどれだけの恐怖に苛まれていたのか。


 今となってはもう、推測することしかできないのだ。



 「日本には差別がない」とふんぞり返る人がいる。

 「日本には差別がある」と鼻息を荒げる人がいる。

 「あいつは差別をした」と指さす人がいる。

 「我々は差別をされた」と被害者ぶる人がいる。


 そのいずれもが〝やった側〟であり、裁かれる日はいつまでもこない。

 近年の状況を鑑みるに――。

 オタク差別が清算される機会はもはや永遠に訪れないのだろう。



 今やオタクコンテンツは世界でも大人気だ。

 もはや被害者や犠牲者のポジションではない。

 結果的に、このルートでよかったのはわかる。

 わかるけれど……。


 歪んだ社会は今日も正しい。


 その歪みによって殺されたやつらと、その遺族、友人、同類たちには。


 いまだに今日が訪れないことを。

 俺は、夏が近づいてくるたびに思い出す。



もうまっすぐには戻らない。

〝正しい世界〟に居場所などない。

だからこそ。理不尽への反逆というテーマが心の底から愛おしい。

このサイトに巣食う、もしくは巣食っていた、作者と読者を愛している。

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