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美女と入れ替わったモブ男は溺愛されて困っています!【第二部完結】  作者: 花摘猫
婚約・トール編

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平日クリスマスでも、一緒なら楽しい

数日すぎたクリスマス当日。


今年は、イブもクリスマスも平日だ。


基本的にイベントというものは平日に付属してるなと最近思う。



「ごめん、今日お弁当無理だ」



簡単な朝食の準備を終えて、着替えに走る。



「いいよいいよ。買って食べるから。おしゃれしな」



今日はクリスマスイブでお泊りだ。服は決めておいたけど髪と化粧もちゃんとしないと。


あれから、母親が家から出て行ってからも、まだ三人で同棲していた。


忙しくて大変だったのと、なんとなくそのまま……という感じだ。



「俺らが忙しすぎてユーキに家事任せたけど大変すぎない? やっぱり仕事辞める選択ない?」



そう。一昨日から家事のすべてを任されている。


二人は来年の三月に会社からトールの家の事業を継ぐための勉強をしている。


結果、全員忙しさに限界がきて、話し合いを設けた結果、そうなった。


今はできるだけ家事をする代わりに一切の金銭面の負担はナシになっている。


だが、やっぱり忙しすぎるのは変わらないし、洗濯は溜まるし家も汚れがちになっていた。



「二人が稼ぎ頭になるんだから、やめたほうがいいとは思ってるけどさ~」



でも、この身体、履歴書に書ける仕事が今の仕事しかないし。


結局、身体の差でキャリアからは置いて行かれるんだなぁと思う。



「やめたら家計を結婚後に切り替えるので、お金の心配はしなくていいですよ」


「お金って問題じゃなくて……キャリアがなくなるのは怖いじゃん」



化粧をしながら言うと、二人はああという顔をしながら朝食を食べた。


母親たちがお金に困っているのを見ていると、家に入るのは怖い。


二人と別れるつもりも、そうなる可能性もある気がしないけど。


だけど、現実問題、辞めなければ住み良い生活がまわらないということも理解しはじめていた。












いつもどおり出社して、昼はユリちゃんとランチを食べる。


おなじみとなったパスタ屋でクリスマスプレートを食べていた。



「シャッチョと付き合ったんだ!」



衝撃の事実に、思わず大きい声を出してしまう。



「うん。可愛い子に虐められるのが好きなんだって。今までで一番気が合うかも」



そういう趣味があるのか。


それならユリちゃんは一番いいかもしれない。



「それにね。昨日ストーカーも追い払ってくれたから、引っ越さなくてよくなったの」



あ~、それで付き合ったんだ。



「よかった! じゃあ、今日も会うんだ?」


「うん。あっちゃんもそうでしょ?」


「なんか泊まるらしい。どこかは知らないけど」


「なんか、ちょっと前まで同じことを繰り返すような毎日だったから、最近新鮮」


「わかる。カードゲームとかぜんぜんやる時間ない。考えることが多すぎる」


「なんかさぁ。日常が変わると、楽しいけど不安もあるよね」


「わかる……そのうち仕事もやめようと思ってるし」


「えっ、あっちゃん仕事辞めるの?」


「2人が忙しすぎて家事がまわらないから私がやってるんだけど、大変すぎて」



それに、2人が辞める前に新人入れて辞めないと会社が大変だよ。今かなりの戦力だもん。



「どうせ子供できたら辞めなきゃいけないしさ」


「子どもか~……産んで一年くらいは死ぬほど大変らしいしね」


「2人のを1年おきで作ったとしても、2人のを2人ずつ産むと8年はかかるからたぶん過労で死ぬと思う」


「しかも小学校に入る年まで育てるのに15年くらい必要。怖くない?」



正直、ここまで考えた時は寒気がした。


それと同時に、だからトールが結婚結婚と急かすのかと理解はできた。



「ひぇ……怖ぁ。別にそこまで平等にしなくていいと思うよ」



心から引いた顔でユリちゃんは飲み物を飲む。


わかるよ。自分だってここまで考えたことなかったもん。



「こればっかりはその時にならないとわかんないよね」


「なんか……あっちゃんより年とってるから焦ってきたわ」


「いや、ユリちゃんは四人産まなくてもいいじゃん」


「私も相手も、そっちより年とってるからさぁ」


「なるほど……じゃあ一緒に覚悟決めよ」


「うぇ~ん……クリスマスにする会話じゃないよォ」



泣き真似をするユリちゃんを見ながら笑う。


正直、決断を避けたいことも多い。


だけど、連綿と続いていく人生で、自ら決断しなければいけないことは、常にある。


変わっていく人生の中、間違っても後悔しない選択肢を自分の意思で選びたいと思っていた。










仕事が終わって、三人で晩御飯を食べる。


二人の恰好もかっこよかったし、自分もユリちゃんに手直ししてもらって可愛くなってるとは思う。


向かったお店は、肩ひじはらずに気軽に食べられる洋食店の個室だった。


正直、あまりホテルでディナーみたいなのは性に合わないので嬉しい。



「もっと豪華なほうがいいかなって思ったけど、持崎部長がここがいいって言うから」


「クルージングとかヘリとか色々考えたんですけど、ユーキ君は喜ばないなと思って」


「カードゲームする人間だから、マナーとか気にしなくていいのが一番いいよ」



冬に船は寒いし、ヘリはうるさいだろうから声が聞こえないだろうし、やめてくれてよかった。



「結局さ、どこに行くかじゃなくて誰といくかが大事だよね」


「そうだねぇ」


「ここの料理おいしいね」


「評判いいみたいですからね」



三人でディナーを食べる。


コースみたいに出てこないから気が楽で話しやすかった。



「そういえばユーキ君ってどの大きさの家なら管理しやすいですか?」


「家? ああ、三月に家を引っ越すから?」


「ユーキ、こいつマジ止めてもぜんぜん聞かないから、聞いてやって」


「どういうこと?」


「いや、マンションとか建売じゃなくて、注文住宅にしようかと思って」


……?


まだ会社にも入ってなくて、引っ越しもする前なのに?



「気が早すぎる! し、お金もかかりすぎる!!!!」


「だろ? まだそっちの経営にも入ってないっつーのに」


「そうですかねぇ」


「なんか、時々トールって、金銭感覚ばかになるよね……前はそうじゃなったのに」



キングサイズのベッド買ったり、自動車買ったり。



「あれは、あんまりお金使うとユーキ君が気を遣うから合わせてたんですよ。だから貯金が増えたんです」


「とりあえず今はお金貯める時期だから、注文はやめよう。生活スタイルすら決まってないし」


「ほらー。だから言ったじゃん。ユーキはお前みたいにおかしくなってないって」


「別におかしくなってるつもりはないんですけどね」


「トールは普段賢いはずなんだけど」



頭が痛いと思っていると、賢いはずと言われたせいかトールはニコニコしていた。


褒めてない。褒めてない。時々やっぱりお馬鹿さんになるんだなぁ。






食事も終わり、クリスマスっぽい盛り付けのデザートが出てくる。


そろそろ終わりっぽいけど、本当に、こんなクリスマスになるなんて、思ってもみなかったな。



「なんか半年経ってないのに人生が変わりすぎてびっくりしてる」


「俺ら性別も変わってるもんね」


「今、人生で一番楽しいです。最高」


「わかる。充実感がある」



(幸せそうで良かったよ)



食事をしている二人を見ながらほんわかした気持ちになる。


だけど、実は自分のカバンの中身が気になっていた。



(このあと、ホテル行くけど、どうしようかな……)



一応、もこもこトナカイセットを持ってきた。持ってきたけど。


やっぱり他の買えばよかったか! でも見たいっていうから!


自分から買うっていうのもなんか、照れるし。


お風呂から出てくる時に明るくテテーンって出ていけばなんとかなるか!



せっかくのクリスマスディナーの最後は、そんな思考が占めて照れていた。


ロマンチックもなにもない。ついに私も手遅れになってしまったらしい。




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