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美女と入れ替わったモブ男は溺愛されて困っています!【第二部完結】  作者: 花摘猫
婚約・トール編

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クリスマス会の後に、それは起きた。

翌朝。


ぽやぽやと目を覚ますと、ユリちゃんがいなかった。


リビングに向かうと、ぼさぼさの髪のままユリちゃんはシャッチョとカードゲームをしていた。



「朝からなにやってんの」


「あ、ユーキちゃん。めちゃくちゃユリちゃん筋がいいよ」


「こんなブサイクのままいたくないけど、やってみたらできちゃった」


「ユリちゃんがブサイクな時はないな~」



ニコニコとしながら話すシャッチョに、ユリちゃんはため息を落とす。



「こういう口車にのせられてゲームしてるってわけ」



会社のユリちゃんより今のユリちゃんの方が作ってる感がなくて好感度が高い。


シャッチョも微笑みながらユリちゃんを見ていた。



スタートパックで勝負しているらしく、のろのろとしているけど確かに学習能力が高そうだ。



(健全な趣味が見つかったなら良かった)



嬉しく思いながらキッチンに向かう。


トールが朝食を作っていた。



「おはよう~トールが作ってるんだ」


「おはようございます。白だし茶漬けだから。手間かけてませんよ。具も昨日の残りの刺身です」


具は自分で選んで乗せる式らしく、刺身といくつかの具が小皿に乗っていた。



(クリスマス会ってこんな感じじゃない気がするけど、これはこれでハッピーだ)



トールに言われて、みんなに声をかけてお茶漬けを食べる。


みんなボロボロのぐちゃぐちゃで、なんかちょっと臭い感じまでしていたが、幸せだった。













シャッチョは会社の用事で呼ばれて、早々に出て行った。


身支度を整えてから、ユリちゃんを駅まで送りに行く。


ユリちゃんの服装はキマっていたが、私はコートに下にトレーナーにジーンズというラフな格好だった。



「でも、竹下さんがあっちゃんなんてね。ユーキって呼んだほうがいい?」


「どっちでもいいけど、こっちの名前の友達は初めてだからな~」


「あ~。じゃあ記念にあっちゃんでいいか。もう名前が変わるわけじゃないしね」



あっさりと決まって、少し笑う。



「クリスマス会、楽しかったね」


「ただの飲み会だったけどね。またやりたいけど、結婚ってするの?」


「結婚?」


聞かれて、少し考える。


どう考えてもしそうだけど、来年な気がする。



「来年するんじゃないかなぁ」


「でも飲み会くらい結婚してもできるよ」


「やだ~! 好きだった竹下さんが結婚しちゃう」


「友達の方がずっと同じように仲良くいられるよ。それに、シャッチョとも仲良かったじゃん」


「それは、連絡先交換はしたけど」



少し照れ気味なユリちゃんの表情を見ていると、脈はありそうだ。



「あの人、仕事はグレーなとこはあるけど、誠実だしいい人でおすすめだよ」


「えっ! グレーって?」


「相手を守るためなら、多少、危ないところを歩くタイプ」


「私が恋人になったとして、ストーカーに襲われたら捕まえてくれる?」


「もちろん。相手の身柄がどうなるかは、ユリちゃん次第だとは思うけど」


「理想的だな~しかも社長だし。あり寄りのアリ……」


ユリちゃんの脳内で、良い悪いの天秤が激しく揺れているらしい。



(たぶん、受け入れるだろうな。冒険心がある子だから)



ぼんやり考えながら駅への道を歩く。






グッ



突然、何かが腕にくっついた感覚があった。



(……?)



腕を見ようとする前に、突然、腕を引かれる。



「え?」



後ろに、真一さんがいた。


その後ろに母親も。



「あっちゃん!!!!」



ユリちゃんが伸ばした手が空を掴む。


身体を引かれるまま、後部座席に押し込まれた。


母親が、こちらのカバンを体から外そうとするので、もみ合いになる。


体勢が整っていない上に、遠慮がない力にカバンを奪われる。


外されて窓から外にほおり投げられた。




自動車の外で、ドアを叩く声と、ユリちゃんの叫び声が聞こえる。


だが、次の瞬間には発車してしまい、声が遠くなった。



「なんで、こんなことっ」



言い終わる前に、何かの薬と水を飲まされる。


拒否したので、服が濡れてびしょびしょになった。



「……な、に」


「騒がれると困るの。別に怪我とかさせたいわけじゃないし」



母親は冷めた顔をしていた。


それに着ている服は、鮮やかな赤の花柄で儚げなイメージは一切ない。



(そうか。記憶の快活な雰囲気は、服のイメージもあったのか)



母親を迎えに行った時、トールは嫌そうな顔をしていた。


あれは、演出された弱さだと気付いていたからではないのか。



飲まされた薬を吐きたいと思ったが、吐く方法が分からない。


ドアを開けようと思ったが、ロックがかかっていて開けることもできなかった。


シフトレバーを引こうと思い前に乗り出す。



「やめなさい!」



母親に引き戻されて、何かが腕にはめられた。


ガチャ、と音が鳴る。



「もう。本当はね。こんなことしたくないのよ」



なんだと思って、手を見ると、手に簡易的な手錠がつけられていた。


そしてそれは、母親の腕と繋がっている。


こんなものまで用意されているとは思わなかった。



「……こんなことをした理由を教えてください」



腹立たしく思いながら母親を睨みつける。


母親は、呆れたようにこちらを見ていた。




「困るのよ。あなたと付き合ってから、亨が生き生きしはじめちゃって」



意味が分からない。


自分の子供が生き生きしたところで、なにが悪いのか。



「わたしと亨は仲が悪いの。真一と違ってね。だから、出しゃばってもらっても困るのよ」



最初から、二人ではめようとしたってことか



突然、異常な睡眠が襲ってくる。



「眠そうね。よく効くでしょ。私がもらってきた薬」


「睡眠……薬?」


「ええ。でも別になにもしないから安心して。真一が気に入ってるから、そばには置くかもしれないけど」



殴りたいが、力が入らない。


睨むが、気を抜けば意識を手放してしまいそうだ。



「真一もいい男だから、安心して抱かれなさい」


抗議するように、母親に蹴りを入れる。


だが、それ以上は抗えない眠気に襲われて、意識を失ってしまった。






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