王城に敵を引き込んだ裏切り者を白馬の騎士が成敗してくれました。
私はルヴィの胸に抱かれて、その暖かさの中で泣きに泣いてしまったのだ。
こんな温かい胸に抱かれるのは久しぶりだった。
今まで溜まっていたものを全て流した感じだった。
そもそも、3年前に留学してから、私は心が休まる時なんて一時も無かった。
ほとんど友人もいない中、必死にハウゼン王国の王女として、また、未来の王妃としてしゃかりきにやってきたのだ。
王太子妃教育も王妃様は結構厳しくて、どれだけ泣かされたことか判らなかった。
その中、友人を作り、私なりに必死に頑張ってきたのだ。
でも、そんな中、少数民族の反乱が起こったのだ。少数民族が反抗的だというのは時たま聞いていたが、まさか反乱を起こしてくるなんて思ってもいなかった。
そんな中、両親からは心配する必要は無いと言う手紙は来ていたのだ。
私はその言葉を完全に信じたわけではなかったが、心配しないようにしていたのだ。それがいきなりエンゲルの大軍が国境を破って攻め込んだと聞いた時、驚きのあまり気絶しそうになった。
そして、必死に援軍を出してほしいとアヒムに頼み込んだのだ。
でも、アヒムには「自業自得だ」
と言われたのだ。
そして、両親が殺されたと聞いた時は思わず気絶していた。
気づいた時は部屋に一人だった。
私は両親のことで泣きたかったが、泣けるような状態ではなかった。
私はまだ、この国の王太子と婚約しているだけで、結婚しているわけではなかった。いつ、この身がどうなるか判らなかったのだ。
心無いクラスメートたちは私が婚約破棄されて、エンゲルに引き渡されるのではないかと噂してくれた。それも、現にそうなりそうになった。
泣くどころではなかったのだ。
そして、私の友達もほとんど話してこなくなったのだ。そんな私を憐れんで陛下は侍女と騎士をつけてくれた。でも、その侍女達はどことなく、よそよそしかった。
「ふんっ、自分の国が無くなって、いつまでもここに居座れても困るのよね」
今までへいこらしていた侍女頭がそう他の侍女達と話していたのを物陰で聞いた時は青くもなった。
でも、国を無くした私なんか、どこにいけと言うのよ。私は余程叫びたかった。
その時は前世の記憶も無くしていたから本当にどこに行ったら良いかも知らなかったし、自分で服も着れなかったのだ。この王宮を出ても行くところなんか無かったし、生活なんて一人で絶体に出来なかった。
私は両親以外の親戚なんてほとんど知らなかったし、そんな関係の薄い親戚が私を匿ってくれるなんて予想も出来なかった。
私は必死に堪えていたのだ。
なのに、卒業パーティーで婚約破棄されて、憎きエンゲルに引き渡されそうになったのだ。
それをルヴィに助けてもらった。
そして、久しぶりに優しい言葉をかけてもらったのだ。
「ごめん、ルヴィ、今だけ、今だけでいいから胸で泣かせて」
私はそう言うと号泣したのだ。
そして、私が泣いている時だ。
遠くから馬の一団が走ってくる音がした。
失敗した。こんな所で泣いていたから、追手に追いつかれたのだ。
「ルヴィ、逃げないと」
私は慌てて涙を拭って立ち上がった。
「リナ、良いよ。ここで俺が迎え撃つ」
そう言うと、ルヴィは私の前に立ってくれたのだ。
「えっ、でも、敵は大軍よ!」
「大丈夫さ。お前を泣かせた奴らを俺は許さない。シロ、リナを守れ」
ヒヒーン
シロは嘶くと、私の横に来てくれた。
そして、鼻を寄せてくる。
私の泣き顔を舐めてくれたんだけど。
「ちょっとシロ、止めて」
私はシロに抵抗しようとして、ほとんど出来なかったが……
「おい、いたぞ」
騎士の一団は私達を取り囲むように止まった。
こいつらハウゼンの騎士の格好だ。でも、色はエンゲルの気狂いの紫の色を纏っていたのだ。
「やっと追いついたか」
中央にいた男に私は見覚えがあった。
「パスカル! 何故あなたがここに?」
私は驚いて、聞いていた。
「これはこれは殿下。やっと追いつけましたよ。本来、私達がお迎えに上がったのに、逃げ出されて、どうしてこんな所に逃げてこられたのですかな?」
ふてぶてしくパスカルが聞いてくれた。
「何がお迎えに上がったよ。あなたがお父様を裏切ったのね」
私は理解した。こいつがエンゲルの大軍を城内に引き入れて裏切ったのだ。
「またまた威勢の良い方ですな。これからじっくりと言葉遣いも調教してあげますよ」
下ひた笑みを浮かべてパスカル入ってくれた。私は怖気が走ったのだ。
「何を言うの! あなたなんかに絶対に好きにさせないわ」
私はパスカルを睨みつけた。
私の前にルヴィが立ってくれた。
「ほう、たった一人の騎士で我々100名を相手されると言われるのですか? 笑止ですな。そこの騎士よ。我が方に付けばエンゲルの騎士に取り立ててやるぞ」
パスカルがルヴィを勧誘しているんだけど……
「フンッ、威勢のよいのは貴様だ。パスカル・クンツ。地獄で裏切ったことを後悔するが良い」
そう言うと、ルヴィは剣を抜いてくれた。
「馬鹿な、一人で何が出来るというのだ。野郎どもこの騎士をやってしまえ」
「「「おう!」」」
騎士たちが剣を抜いて斬りかかろうとした時だ。
「斬!」
ルヴィは剣を真横に薙いでくれた。
ズンッ
一瞬だった。
囲んでいた騎士たちが、一瞬で斬られて吹っ飛んでいたのだ。
100騎近くいた、騎士たちの大半がやられていた。
パスカルはその瞬間、運の良いことに落馬して地面に落ちて何とか助かったみたいだった。
「き、貴様、その剣はそ、ソニックブレード……け、剣聖か!」
恐怖に引きつった顔で、パスカルは逃げようとした。
「フンッ、地獄で後悔しろ」
そう言うとルヴィは再度、剣を斬り下げてくれた。
「ギャッ」
逃げようとしたパスカルは真っ二つに切断されていたのだ。
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