ハウゼン王国反逆者視点 王妃に与えられた屈辱を娘で晴らすことにしました
俺はパスカル・クンツ、ハウゼン王国の侯爵家の次男だ。
兄貴はクソ真面目な兄貴でいい加減な俺はよく兄貴に叱られた。
そんな俺がクラウン公国の学園に入学した時だ。
青い髪の金色の目をくりくりさせたとても可愛い少女がそこにいたのだ。
俺はひと目で彼女に恋をした。
当時クラウン公国は独立国で中立国だった。クラウン公国は学問が盛んで、その学園には世界各国から王族や優秀な貴族たちがこぞって学びに来ていた。入試も結構難しく、俺はハウゼン王国の侯爵家の次男で、王太子アレクシスの側近という理由だけで何とか入学できたに過ぎなかった。普通の貴族だったら絶対に入学試験はパスできなかった。
当時学園にはバイエルン帝国の第三皇子ヘルムートや、エンゲルの王太子カスパル、メンロスの王太子オイゲンもいた。
皆必死にその金色の瞳を輝かせた青髪の少女の気を引こうとしていた。
その少女の名前はカリーナ・ディール、帝国の名門伯爵家の娘だった。
王太子の側近の一人に過ぎない俺なんて端から相手にもされなかったのだ。
帝国の第三皇子あたりが一番可能性が高そうだと言われていた。
そんな時だ。俺がカリーナから声をかけられたのは。
その時の俺は天にも昇る気持ちだった。
でも、俺が呼ばれたのは、彼女の親戚の3年生に帝国のベルナー公爵家の令嬢オリーヴィアがいて、彼女が我が主のアレクシスに興味を持って、その恋文を託してきただけだったのだ。
俺はがっかりしたが、その手紙のやり取りで、カリーナと話せるのが嬉しかった。
「パスカル様の主はアレクシス様で良いではありませんか。私の親戚のオリーヴィア様は中々気難しい人で大変なんです」
カリーナはその公爵令嬢の相手をするのが結構大変だと、俺に愚痴ってくれるまでになっていた。
そんな事をしているうちに、俺達は4人で一緒に遊びに行ったりする仲になった。俺のとても幸せな時だった。
でも、幸せは長くは続かなかった。オリーヴィアが留学を終えて帝国に帰るとなった時に、俺の主のアレクシスがオリーヴィアとは婚約は出来ないと言い出したのだ。
俺は唖然とした。驚いたのはカリーナも同じだった。
失意に暮れて帰国するオリーヴィアを見送った俺は、その港からの帰り道で手を繋いで親しそうに歩いているアレクシスとカリーナを見て唖然としたのだ。どう見てもそれは仲の良い恋人だった。
俺はハンマーで殴られたようなショックを受けた。
次の日の夜に俺はアレクシスを問い詰めたら3ヶ月前から付き合いだしていたと言うではないか。
俺はアレクシスとカリーナに裏切られたような気持ちだった。
そう、4人で一緒に遊びに行った時は、二人だけにするために、俺とカリーナがよく一緒にいたのだ。
俺達はとても仲が良かったはずだった。カリーナは俺には少なくとも好意は持ってくれていると思ったのだ。
俺のくだらない冗談に笑ってくれていたカリーナはどこに行ったんだろう?
ひょっとして我が主のアレクシスがカリーナに無理強いしているのではないのか?
俺は一抹の希望を持ってカリーナに問いただしたのだ。
「ごめんなさい。パスカル。あなたはとても良い人だと思うわ。でも、私が愛してしまったのはアレクシス様なの」
俺はあっさりとふられてしまった。
そして、それをカリーナがアレクシスにも言ったのだろう。
「パスカル。二度とカリーナに近づくな」
俺はアレクシスから釘を刺されてしまったのだ。
俺は学園の近くの酒場で荒れ狂った。
「ふんっ、パスカルは良いやつ過ぎたんだよ。馬鹿だな」
いつの間にか俺の隣にはエンゲル王国の王太子のカスパルがいたのだ。
俺はそれ以来、アレクシスとは疎遠になって、カスパル等とつるむことが多くなったのだ。カスパルの周りには各国の問題児と思しき奴らが集まっていた。そんな奴らと学園時代俺達は皆でいろんなことに手をだした。
カスパルはいろんな遊びを知っていた。俺達は娼館にも遊びに行ったし、麻薬もやった。一通りの悪い遊びは学園時代にやり尽くしたのだ。
「パスカル、ハウゼンが嫌になったらいつでも、俺の国に来い」
学園で卒業間際にカスパルは俺に声をかけてくれたのだ。
俺はそれが嬉しかった。
俺はハウゼンに帰国すると外交部に配属になった。
俺の学園時代の交友関係をアレクシスも無視できなかったのだ。
俺は外交部に身を置いて、いろいろな難局をこなしていったのだ。
最もそれ以来王太子妃となったカリーナに会うことは殆どなかったし、カリーナには避けられていた。
そして。年月が経った。
メンロス王国の国王になったオイゲンから息子の王太子の相手にと、カリーナの娘アデリナに婚約の申し込みが来たのだ。
俺は外交使節に付き添ってメンロス王国に赴いた。
「パスカル、久しいな」
久々に会った同級生のメンロス王は元気だった。俺の名前も覚えてくれていた。
「いやあ、俺が元気ならカリーナの娘を娶るのだが、もう俺も年だ。他の奴らに取られぬうちにうちの嫁にと申し込んだ次第だ」
アルコールが進むと笑ってメンロス国王は言ってくれた。
「アデリナ王女はカリーナに似て、美しいそうではないか」
メンロス国王は言ってくれた。確かに俺も初めてアデリナに会った時に、思わず「カリーナ」と言いそうになったほど似ていた。
まあ、どちらかと言うとアデリナはカリーナよりは幼い感じが見受けられたが、それは単に俺が年を取っただけかもしれなかった。
「帝国の皇帝のヘルムートもエンゲルのカスパルも側室にと言い出しかねんからな。それではいくらなんでも娘が可哀想だろう。我が息子の嫁ならば年寄りの側室よりはマシと思ってな。アレクシスも喜んでくれたよ」
苦々しい顔で国王は言ってくれた。
未だにカリーナをアレクシスに取られたことが悔しいらしい。
「陛下の優しい心遣いに王女殿下も喜んでおられました」
俺は当たり障りないことを言ってやった。
「まあ、アデリナはさぞかし大切に育てられたのでしょうね。ただ、我が王国は南北の交易も盛んで、いろいろ覚えてもらうこともあるから、心してもらうようにお伝え願えるかしら」
メンロスの王妃が横から口を出してきた。
王妃としては王の昔の想い人の娘ということで、心は穏やかではないらしい。アデリナにはそのあたりをきちんと伝えてやろうと俺は思ったのだ。
「カスパルは未だにカリーナを忘れていないみたいだ。アレクシスには注意するように伝えてくれ」
メンロス国王は別れしなにそう注意してくれた。しかし、俺達はそれを重要視しなかったのだ。
あそこまで、カスパルの心が歪んでいるとは思ってもいなかったのだ。
勢力を拡大し始めたロンメルツ王国がクラウン公国を併合したのは10年前だった。
帝国は代替わりした所で他国にまで手を回す余裕もなく、我が国もメンロスも助ける暇もなかった。
俺達の学び舎だった学園はロンメルツに併合されたが、それ以降は他国から王族が来るのはめったに減ったそうだ。
俺達はそれがカスパルの陰謀だとは思ってもいなかったのだ。
その俺がカスパルに会ったのは1年前だった。
ハウゼン王国の使者の一員としてエンゲルに行ったのだ。
そこで久しぶりにカスパルと会った。
「パスカル、今日は久々に過ごそうではないか」
「そうだな」
俺は学生に帰った気分でカスパルと飲み明かしたのだ。
だいぶ酔いが回った時だ。
「ところで昔俺に言ったことを覚えているか」
カスパルが俺に聞いてきた。
「どんな事だ」
「お前がカリーナに振られた時に言っていたことだ。いつかカリーナをものにしてやるとお前は言っていたぞ」
カスパルが酔った勢いで言ってくれた。
「昔の戯言だろう。よく覚えていたな」
俺はカスパルに驚いた。
「そのくせ俺が冗談は寄せと言ったら、お前は俺は本気だと言っていたぞ」
笑ってカスパルが言ってくれた。
「ふん、若気の至りだ」
俺は自嘲した。
「もし、カリーナを好きにできるとなったら俺と組むか」
俺は真剣な表情のカスパルを二度見した。
「冗談を言うな」
俺が言うと
「俺が冗談を言うと思うのか」
真面目な口調でカスパルが言った。
考えたらカスパルはものにすると言った女は必ずモノにしていたのだ。
危険薬物を使って廃人同然にしたこともあった。
「貴様は俺の友人だ。お前がどうしてもカリーナをほしいと思っているなら、くれてやる。その代わり娘のアデリナをよこせ」
俺は最後の話はよく聞いていなかった。
カリーナは現王妃だ。それをアレクシスから奪ってものにするということは、反乱を起こすしかない。中々成功の可能性は薄いだろう。しかし、カスパルが計画したとすれば成功する可能性は高いはずだ。既に彼は着々とその勢力を伸ばしてエンゲル王国は領土を大きくしていたのだ。
「あなたはとてもいい人よ」
俺に向かって昔カリーナが言ってくれた言葉が蘇った。今なら判る。
あなたは単にいい人にすぎないわ。私の相手になれない人なのよ!
カリーナはそう言いたかったのだ。その言葉は俺をとても馬鹿にした言葉だった。
それに会う度にカリーナは俺を蔑んでいる所が見えた。その女を自分の好きに出来る。
今まで散々人を見下してくれたカリーナを好きにしていいというのだ。
俺は思わず、このカスパルの悪魔のささやきに乗ってしまったのだ。
反乱計画は、ものの見事に上手く言った。
最後は反乱軍の援軍で来たカスパルの軍を王城内に俺が引き入れたのだ。
俺はその報告を受けて唖然とするアレクシスの背後から剣で貫いていた。
「パスカル!」
驚いた顔のアレクシスは滑稽だった。
「ふんっ、俺からカリーナを奪うからだ」
俺はアレクシスを蹴倒すと直ちに兵士を率いて直ちに王妃の部屋に向かったのだ。
俺は鼻息も荒くカリーナの部屋に向かったのだ。今まで人を散々見下してくれた、カリーナを自由に出来るのだ。あんなことやこんな事もやってやる。
俺は狂っていた。
しかし、俺はそこで冷水を浴びせられたのだ。
そこには既に自害したカリーナの遺体が転がっていた。
周りには略奪するエンゲルの兵士たちの姿しか無かった。
「カスパル、どういう事だ!」
俺はカスパルを探して食って掛かっていた。
「はああああ! パスカル。それは先に王妃を押さえなかった貴様の手落ちではないのか」
しかし、俺は逆にカスパルに指摘されたのだ。
確かにそうだった。戦場では何が起こるか判らないのだ。
しかし、そこをちゃんとしておいてくれるのが友人ではないのか?
俺は言いたかった。
「まあ、良い。ここの掃討戦はお前に任す。王族の生き残りは一人も許すな。それ以外はお前に任す。
その代わり、アデリナが手に入ったら貴様にも抱かせてやる。それで我慢しろ」
もう賽は投げられたのだ。今更引き返せなかった。
俺は掃討戦を指揮して、王家に忠誠を誓う貴族たちを次々に殺したのだ。
その褒美として俺はアデリナの護送の任務をカスパルから命じられていた。
その体を好きにして良いという許諾のもとに。
あのカリーナに出来なかったことを心ゆくまでして辱めてやる。
俺は心に決めたのだった。
そのアデリナが騎士と一緒に国境の町に潜伏していると報告を受けた俺は直ちにその町に急行した。
寝込みを襲うことにしたのだ。俺が育て上げた、暗部を10名、宿屋に向かわせたのだ。
アデリナさえ無事に捕まえたら、騎士は殺して構わないと暗部には指示していた。
下手な兵士を使うより暗殺等に長けた暗部の方が確実だった。
俺は急遽作ったアジトで朗報を待つことにしたのだ。
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アデリナの運命やいかに
続きは明朝です
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