文化祭で好きでもない相手に告白される確率100パーセント ←その相手とは私のことです
「まだ占ってもらえるかな」
今年の文化祭、私のクラスでは占い喫茶をひらいていて、手相占いを担当する私の前に憧れの先輩がやってきたのは来場者も随分減った最終日の夕方のことだった。
「……もちろんです!」
一度も話したことはないけれど、先輩がチェロを弾くオケ部の発表には何度も行っている。今も先輩がソロをした時の曲を口ずさんでいたくらいだった。
「何でも占いますよ。ご希望は?」
「ええと。恋愛運を」
「れれれ、恋愛っ?」
「……僕が恋愛とか、変かな」
「そんなことないです!」
先輩のような素敵な人にこそ恋がふさわしいのですから……!
「では! 手相を見させていただきます!」
ちなみに手相占いは占い師である祖母直伝で、私の数少ない特技だったりする。先輩の手に触れた喜びと緊張を押し隠しつつ、私はじっくりと手相を読んでいった。
「ええと……恋愛運はこの線を見るんですけど。この手相だと……うえええっ?」
思わず大声をあげた私に、先輩の肩が驚きで跳ねた。
「どうしたの?」
「あ。えっと」
口ごもりながらも私は混乱していた。なんと、今すぐにでも恋人ができるという相がでていたのである。
「何か悪いことが起きるの?」
「えっと。違くて。……先輩。あなたは今日、告白されます」
驚いた真の理由をごまかすために、私はとっさに違うことを――今日の後夜祭で私自身が決行しようとしていたこと――をなぜか口にしていた。
「すごい。手相でそんなことまでわかるんだ。でも告白してくれるような人に心当たりがないし、ちょっと困るかな」
そうか。告白されると困るんだ。でもそれも当然か。
「でしょうね。好きでもない相手からの告白ですから」
先輩の手のひらを見つめてうつむく私は一人で勝手に泣きそうになっている。告白する前に失恋確定って辛すぎる。
「でも大丈夫です。先輩にはすぐに素敵な恋人ができます」
すると、しばらく黙っていた先輩が唐突に口をひらいた。
「その占いってホントに当たるの?」
「100%当たります」
断言した私に先輩が小さく息を飲み、やがてふうっと息を吐いた。
「いいや。当たらないね」
その言い方に、涙目の顔を思わず上げてしまった。すると先輩は私の手をきゅっと握りしめた。
「だってその子が僕の好きな人だから」
*
初めは君の口ずさんでいた曲に興味がわいて、一目ぼれして――好きになった人のことだから気持ちが伝わってきたのだと、そう言って笑った先輩が今日から私の恋人です。