愛でる者②~俺ですか?~
読んでいただいてありがとうございます。今年もこの二人をよろしくお願いします。アルファポリスさんへも、こそっと投稿を始めました。
二人で建物の中に入ると、どう見ても一般人じゃなさそうな身体付きと動きをしている男たちが、ギロリと睨んできた。
「言われた通り、連れて来たわ」
タルーシャが一生懸命虚勢を張ってそう言うと、男の一人が近寄って来た。
「こっちだ、付いて来い」
その鍛えられた肉体を見て、エデルは内心で、羨ましくなんてないもん、こういう身体だったらドレスを着てアリアさんの隣に立てなかったし、などと考えていた。
まぁ、こういう身体の人がアリアの隣に正装で立ったら、それはそれでお似合いの二人にはなるのだろうけど。
悔しいけれど、それもまた事実だ。
その場合、アリアがドレスを着ることになっただろうから、ある意味、アリアの夫がエデルでよかった。
無理矢理、着たくもないドレスをアリアが着ることにならなくて、本当によかった。
現実逃避も兼ねて、軽くそんなことを考えながら歩いていたら、奥の方の部屋へと連れて行かれた。
「ねぇ、一座の皆はどこにいるの?ちゃんと逃がしてくれるのよね?」
不安になったタルーシャが聞くと、案内役の男がタルーシャをチラリと見た。
「ふん、安心しろ。すぐに解放してやる。うちの主様も、好んで旅の一座と敵対したいわけじゃないからな」
旅の一座たちの情報網が優れていることを、彼も彼の主も知っている。
敵に回すと、少々厄介だということも。
ありとあらゆる情報が抜かれて、世界中に拡散される恐れがある集団だ。
同時に、自分たちはエスカラの貴族だから、この程度のことならば許されるだろうと高をくくっていた。
「お前たちが大人しくしていれば、すぐに解放してやる」
「俺はともかく、タルーシャもちゃんと解放してくれよ」
何となく今の言い方だと、タルーシャもエデルとまとめて連れて行かれそうな感じだったので、確認のためにそう言うと、案内役の男はエデルの方をジロリと見た。
「主に会う時は、言葉遣いを改めろ。本来なら、お前たちが直接会えるような方じゃないんだからな。それから、そっちの女は一座と一緒に解放してやるよ。必要なのは、お前だけだ」
ドレス姿のエデルの言葉遣いが気に入らなかったのか、男がそう言うと、エデルはほっとした。
自分一人なら、何とか隙を突いて逃げることは出来るかもしれないが、タルーシャを人質に取られたりしたら、少々厄介なことになるところだった。
それに、すでに彼女を含めた一座の皆には、エデル個人の事情に巻き込んで迷惑をかけてしまった。
ここに来る前にタルーシャとは話をして、解放されたらすぐにアリアの庇護を受けるように伝えた。
相手がどんな人間であれ、辺境伯の庇護下にある一座に手を出すことは難しいだろう。
その代わり、一座は辺境伯の紐付きと見なされてしまうけれど、タルーシャはそっちの方が安全だからと承諾してくれた。一座の長には、タルーシャから話をしてもらうことになっている。
それで絶対に安全になるとは言えないけれど、それでも、今のままの状態よりはマシなはずだ。
「タルーシャ」
「うん、分かってる、エデル」
確認の意味も込めて名前を呼ぶと、タルーシャはしっかりと頷いていた。
「さて、そっちの女、お前はここまででいい。そっちの男に付いていけば、一座の者たちがいる場所に案内してくれる。分かっているだろうが、ここでの出来事は忘れろ。お前はもっと奥へ行け」
「……えぇ」
途中でエデルはさらに奥の行くように言われ、タルーシャはそこで違う場所へ行くように言われた。
青ざめた顔のタルーシャにエデルはにこりと笑うと、そのままタルーシャを置いて、さらに奥へと進んで行ったのだった。




