新しい日②
読んでいただいてありがとうございます。少し短めです。
アリアと共に食事の部屋に行くと、クロノスも起きてきていた。
「おはよー、クロノス。昨日の疲れは大丈夫?」
「おはようございます、お母様、お父さん。僕はぐっすり寝たので大丈夫です」
「おはよう、クロノス。無理はするなよ。まだ客も多いが、子供のお前がいなくても、誰も文句など言わないから、疲れたらすぐに休むのだぞ」
「はい。お母様」
いつも通りの夫婦の姿に、室内にいた者たちは、夫婦の間で特に何もなかったのだと確信を得た。
エデル様、初夜でしたが、アリア様に襲われなかったんですね……。
これを、アリアがエデルの疲れなどを考慮した、夫を気遣う優しい妻だと喜ぶべきか、エデルがアリアに襲われるような色気も持たない夫だと嘆くべきか。
いや、色気はあった。
あの真っ白なウエディングドレス姿のエデルを、自分色に染めてみたいときっと思ったはずだ。
「お父さんは休めましたか?」
「うん。昨日は疲れてたから、アリアさんとすぐに寝ちゃった。アリアさんも疲れてたしね」
「え?お母様も疲れてたんですか?」
「当たり前だよ、クロノス。昨日の夜のアリアさんの微笑みは、ちょっと疲れが出ていたよ」
すみません、エデル様。気が付きませんでした。
仕えている者たちから見れば、いつも通りのアリアだと思っていたが、エデルから見たら違ったらしい。
「そうなんですか?お母様はああいう人たちに慣れているので、大丈夫だと思っていました」
「慣れてはいるが、結婚式は私も初めてだ。むろん、エデル以外とやるつもりはない。だが、さすがに疲れたな」
「ですよね。人がたくさんいたので、周りを見る余裕なんてなかったです。しまったなー、アリアさんの格好良い姿や、クロノスの姿をもっと堪能しておけばよかった」
「なら、今度は家族だけの小さい式をやるか?身内だけで、小さな聖堂で。私も、もっとエデルのウエディングドレス姿を見ていたかったしな」
「いいですねー。昨日は神様に誓ったけど、その時は、アリアさんに誓います」
「ふふ、なら落ち着いてから計画しよう。あぁ、その時は、この城にいる者たちにも見てもらおう。昨日は、貴族や招待客ばかりだったからな。私たちに近い者たちにも、見てもらいたい」
……アリア様……
使用人一同は、感激した。
昨日は、忙しくてほとんどの者たちは気を張って忙しくしていたし、アリアやエデルの姿を見た者たちだって、聖堂の中まで見られたわけではない。
「いいですねー。皆が一番、俺たちの近くにいてくれますもんね。俺、貴族より、皆に見てもらいたかったし」
「ふむ、そうなるとやはり大聖堂か?人数的には、あそこが一番入るのだが」
「あ、なら、誓いの言葉を神様じゃなくて、皆に誓いますか?夫婦でこの地を大切に守っていきます、的な感じで」
「なるほど。神様には一度誓っているし、今度は皆に証人になってもらうのか。それもいいな。皆に誓うのなら、別に神殿じゃなくてもいいのかな。城の大広間の方がいいか?」
「そうですねー。城の大広間なら、皆すっと来て、すっと戻れますもんね」
「ならそうしよう」
これはひょっとして、アリア様がエデル様の、皆に見せたい、という願いを叶えるふりをして、着飾った夫を見せたいだけなのでは……?
なんて思っても、口には一切出さない。
というか、男性陣は何となく、自分たちの結婚の時も神様と皆に誓おうかな、と女性陣が考えている気がした。
領主一家は、常に民に新しい考え方や流行り物を与えてくれるのだが、少々ロマンティックな感じがして女性受けが良いことが多い。
アリアの夫は、武力からっきしで音楽の才能が飛び抜けた一点突破の女装男子でかまわないが、辺境の男性は、どちらかというと筋肉を鍛えた肉体自慢の者が多い。
ドレスは死んでも似合わない。
女装男子はエデルだけで十分だと考えていた彼らだったが、気が付いたらちょこちょこ城内でメイド服を着る男の子が現れ、告白する前にまずは性別確認をする、というのが辺境でのルールになっていくことを、この時は想像もしていなかったのだった。




