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結婚式前⑭~散る火花~

読んでいただいてありがとうございます。指が勝手に打ち込んで、なんか、こうなったんです。

 急な仕事が入り、仕方なく招待状だけ先に友人に送ったラファエロ・ファーバティ伯爵は、友人であるエデルが行方不明だと聞いてその美貌に不機嫌全開という表情を浮かべていた。

 エクルト子爵家の屋敷の部屋で、美しく整った顔立ちと金髪碧眼を持つ青年は、誘拐犯を思いっきり罵った。


「ふざけるなよ。よりにもよってエデルまで巻き込みやがって……!!犯人は誰だろうが、潰す」


 普段と全く違う乱暴な言葉遣いに、周りの者たちが顔色を悪くしていた。


「全く同感だが、潰すのは私の役目だ」


 そんな中でただ一人、顔色も変えずにそう言ったのはアリアだった。

 エデルの願いも空しく、アリアは城で大人しくなどせず現場に駆けつけていた。同時にラファエロも現場に到着し、どうやらエデル+αが誘拐されたようだと知らされて激怒していた。


「ファーバティ伯爵、貴殿もエデルが巻き込まれたと見ているのだな?」

「当然だろ。あの時点でエデルが誘拐される理由がない。ロードナイト辺境伯、貴女とエデルの関係を私だって知らなかったのに、他の誰かが知っていたとは思えない」

「エデルは貴殿の招待状を持っていたはずだが」

「エデルを誘拐してわざわざ私を敵に回す理由がない。今回の騒動の元凶は、あのヴァイオリンだ。大方、ヴァイオリン欲しさに誰かが子爵と選ばれた学生を誘拐したんだろう。そこにエデルがたまたま居合わせたんだろうよ。あいつは何故かその手の騒動に巻き込まれやすいからな」


 初めて会った時も他者の巻き添えを食って、腕っ節の強そうな男たちに絡まれていた。へらっとして巻き込まれやすいくせに、なぜか毎回無傷なのが不思議でしょうがない。

 どうせこの女帝に捕まったのも、変なのに絡まれて巻き込まれたに違いない。俺、元気だよ、とかいう手紙を寄こす前にちゃんと助けてって書いてこい。そうしたら女帝の魔の手に落ちる前に助けられたのに。


「引っ込んでいろ、ファーバティ伯爵。夫を助けるのは妻である私の役目だ」

「私が渡した招待状で親友が捕まったんだ。当然、彼の安全を確保するのは私の役目だ」


 周囲の人間には、両者の間で火花がバチバチとしているのが見えた。あと、出来ればエクルト子爵と学生も助けてあげてほしいのだが、何だか言い出せない。まぁ、エデルが無事なら彼らも無事だろうが。


「ふ、残念だが伯爵。今この場には、其方の手足となる者が少ない。私が連れて来た者たちは、うちの軍の中でも精鋭だ。この屋敷の抜け道くらいすぐに見つけられるさ」

「それはどうかな。この屋敷は古くてね。子爵もどれだけの抜け道があるのか分からないと言っていたんだ。何度か来ているうちの者たちの方が、この屋敷に慣れている」


(……変なところで張り合わないでほしい)


 この場にいるエクルト子爵家、ロードナイト辺境伯家、ファーバティ伯爵家、三家の人間の心の声が一致した。

 今この屋敷内をアリアとラファエロが配下の者たちが駆けずり回って、使用されたであろう抜け道を探している。特にジェシーという学生がいた部屋とエクルト子爵が最後に目撃された部屋を中心に探しているが、なかなか巧妙に道が隠されていて発見に至っていない。どうやらこの屋敷は、外壁と内壁の間にかなりの空間が隠されていて、そこが迷路のようになっている。隠された出入り口の仕掛けも素晴らしく、こんな状況でなければ設計した人間を褒め称えたいくらいだとアリアは思った。

 だが、邪魔だ。

 もはや戦時中でも何でもない今、隣の領主の館にこんな迷宮は必要ない。

 配下の者たちには、辺境伯の夫の安全の為(という名目で)、少々の破壊の許可は出してある。ただ、ちょっと腕っ節が強い人間ばかりなので、少々、が行き過ぎる場合もあるかもしれない。なので、この騒動が終わったら、あちこちが痛んでしまうであろうこの屋敷を建て直すように子爵には提案しようと思っている。もちろん、費用は辺境伯家で出す。何なら、材料と人材も手配しよう。


「結婚式までにそれほど日がないのだ。早くエデルを見つけ出して連れて帰らねばな」

「は?結婚式?誰の?」

「無論、私とエデルのだ」

「…………一応、聞くが、どっちがウェディングドレスを着るんだ?」

「無論、エデルだ」

「そうか。ならよかったよ。エデルに男装は無理だ」


(あっれー?エデル様って、辺境伯の夫だよね。夫=男性だよね。男装?男装ってなんだっけ?ウェディングドレスってどっちが着るものだっけ?)


 ロードナイト辺境伯家以外の者たちにさらなる混乱を招いた発言だったのだが、さすがに誰も表情には出さなかった。出したら、何だかダメな気がした。そこはプロとして頑張った。


「貴殿はエデルの友人ゆえ、招待状を送っておこう。当日は、美しく着飾ったエデルを見るがいい」


 ふふふ、と勝ち誇ったような笑顔で言うアリアに対して、ラファエロがチッと舌打ちした。


(いや、だから、エデル様って……男性?男性だったよね?男性じゃないのかな?)


 辺境伯夫婦を応援すべきか、男同士の友情を応援すべきか、そこはそれぞれの推しというものがあるので、誰も口には出さなかった。


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