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退役兵士と砂糖人形  作者: 凪雨タクヤ
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時計屋「ルプネグルグ」② -悲壮の砂時計-


2つ目は「悲壮の砂時計」

この時計はさっきと違って、時間を計るための時計、のはずだった。

その時計屋の店主はまるで曰く付きの物件をすごすごと紹介するかのように取り出したそうよ。なんでも時計としては問題なかったのだけど、ずっと『間違えていた』時計というわ。


その時計はある人が薬を飲むのに使っていた。1番目の薬を服用してから一定時間を空けて2番目の薬を飲むことになっていた。だからこの時計を使って毎日毎日決められたとおりに間を開けて二つの薬を飲んでいた。


ところがある日、その人は薬の順番を間違えていたことに気づいたそうなの。本当は2番目の薬を先に飲むべきだったのが、どこかで間違えて順序を逆にしてしまっていたそうよ。それに気が付いたのは、この砂時計を見つめたとき、時間をはかるときにどちらからはじめても同じように見えるとふと感じたからだとか。そういえば自分の飲んでいる薬の順番はこれでよかったのだろうかと。


その時計のおかげで間違いに気づけたわけだけど、一体この時計はどれだけの間「間違った時間」をはかり続けたのか。そんな風に黄昏ながら過去を想像して悲しい気分に浸るのだそうよ。


時計を使った人、時計を売られた店主、その話を書いた著者、そして私。私も今この時をもって先生に話を伝えていて、どこまでが真実なのかわからないわね。でも重要なのは真実じゃあないわ。その話から何を知って、どんな考えや思想が浮かんだのか。どんな感情になったのか。そこが重要だと思うわ。先生、その時計は自分が作られた目的に沿ってただ時を刻んでいただけよ。でもその行動そのものが間違っていた。これが人間だったらと思うと少しゾッとするというか、虚しく感じない?私は外の世界のことはあまり詳しくないわ。でもこの話を聞いた時、人生においてそんな経験がある人は少なくないのではないかしらと思ったの。


-先生はない?そんな経験。

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