時計屋「ルプネグルグ」① -曇り時計-
「私も面白い御話を知ったから聞いてくださる?」
これまでとなんら変わりない表情と視線のまま、ポツンと言い出した。
これは驚いた。彼女が自分で知識を得るために行動したということだ。
「ぜひ知りたいよ。聞かせてもらえるかい?」
驚きと好奇心を抑えながら、目力だけが気づかないうちに増して彼女の話に聞き入る。
これはある時計屋さんの話。「ルプネグルグ」という名前だったそうよ。
その時計屋さんはイタリアかドイツか・・・そのあたりの洒落た美しい街の中にあるというわ。
けどその時計屋さん、決まった場所に存在していないらしいの。ある時間、あるいくつかの場所に点々と現れるの。でも、本題なのはそのお店じゃなくて、そのお店が売っていた時計。
時計というのは723年に数学的な才能に恵まれた仏教僧が初めて機械仕掛けの時計を開発したそうね。
その前から概念は存在していて、紀元前1300年頃にはエジプト人が1日を24時間に分割していたし、古代ギリシア人のプラトンが水時計を開発したりしていたわ。
それらは一概に時間を計る、現在の時刻を知るものよ。しかしそのお店が売っていた時計は、どうやらそんな「現在の時間」を計るものじゃないらしいの。私が聞いた話は2つ。
1つ目は「曇り時計」
その老人はこの時計を「曇り時計」と呼んでいたそう。
なんでもこの時計が時を刻むのをやめると空が曇るらしいの。
時計なのに時を刻まなくなるなんて。
でもそれがある意味、空の気候を計っているともいえる。
はかっているのは時間じゃなくて天気だと。
時計という名前ではあるけれど、その目的が違う物体になっているの。
これって先生が先程言っていた「ヒト」と少し似てないかしら?
その個体の目的が、生まれ持ったものと違うことがあるってこと。
こんな時計があったら僕も欲しいです。インテリアとして。




