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退役兵士と砂糖人形  作者: 凪雨タクヤ
14/22

愛憎人形

これは私、クロエ本人が体験した話よ。

先生、覚えているでしょ?前回先生がここを訪ねたとき、一緒に町へ出かけて、出会ったあの少女。

”富士千夜”ちゃんのこと。

まるで御伽噺から出てきたかのような見た目だったから印象深いわね。

ツヤのある深くて黒いツインテールの髪にフリルを大胆にあしらった豪華な服。心の底まで見透かされそうな妖艶な目。


彼女も私と同じように壮年の男性の付き添いで来ていたわね。

どうやら彼女はその男性の親戚のようで、欲しい人形があるからそのとき買いに出かけていたそうよ。

そしてその後、私一人で彼女と再会したの。


彼女、想像とは違って元気な性格だったわ。私と洋服や小説の趣味も合ってすぐに打ち解けたの。

その時彼女は、手に入れたあの人形を添えていたわ。


-あの恐怖の人形を-


すぐその人形に気づいたわ。彼女の見た目と違った雰囲気を出していたから。

「富士千夜ちゃん。その人形。」

「可愛いでしょ?叔父様に買っていただいたの。」

「少し意外ね。身に着けている服と雰囲気がダイブ違うから。」

アハハと上機嫌に笑う姿は、健康なんて気にしなくても問題ないと言わんばかりの姿だったわ。


「この人形ね、ある日アンティーク屋さんで見つけたの。最初は通り過ぎたんだけど、どうしてもその人形のことが忘れられなくなって・・・。で、後日叔父様を連れていただいたの!そのときよね、クロエちゃんと初めてあったの。」

「そ・・・。」

「そのアンティーク屋さんったらこの人形タダでくれたのよ!イワクツキだとか言っていたけど、そんなもの関係ないわ!」

富士千夜ちゃん興奮して、こちらのこともお構いなしに話を始めたわ。

最初は気にしないつもりだったけど、思えばひとめぼれだったとか、最近はずっとこの人形を身に着けているとか、髪の質感が気に入っているだとか、その人形に対する”愛情”をこと細かく説明していたわね。その日はお気に入りの小説や紅茶の話なんかをして喫茶店で別れたわ。


その一週間後にも会う約束をしていたから、そのときも富士千夜ちゃんと待ち合わせをしたのだけれど、そこから彼女の様子、おかしかったの。ハッキリと目の下に出来たクマに、フラフラと歩く姿がまるでゾンビ映画さながらだったわ。

「富士千夜ちゃん、大丈夫?」

「何が?」

「疲れてそうだけど。」

「あぁ、これなら心配しないで。ちょっと眠れていないだけなの。」

聞けばその人形を眺めていたら日をまたいでしまって、気づけば朝日が昇ってしまっているそう。

あまりに足取りがおぼつかないから、おそらく何日か寝てない様子だったのね。


そこで私は気づいたわ。

あの人形、彼女に2体”憑いていた”の。

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