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地球が舞台の話2

児童虐待

作者: ひつじかい
掲載日:2022/07/11

 その事件を知ったのは、夕飯時につけていたニュース番組からだった。

 幼い子供が、虐待によって亡くなった。

 顔も名前も知っていた。

 虐待の疑いがあると通報を受けて訪問したが、決定的ではなく、保護は出来なかった。

 やはり、虐待されていたのだ。



 あれから、一ヶ月。

 俺は、罪悪感を抱えながらも日々を過ごしていた。


「ねえ。おばちゃんの家の子にならない?」


 帰宅中聞こえた声に顔を向ければ、見覚えのある女性が、顔に殴られたような痣のある男児に声をかけていた。

 あれは、高校の頃の先輩?


「じゃあ、行こっか」


 子供が頷いたので、彼女は手を繋いで歩き出そうとした。


「先輩? 俺の事、覚えてますか? その子は?」



 話しかけると、先輩は俺の事を覚えていて、男児は隣の家の子供だと教えてくれた。

 結婚していて、子供が出来ない事を責められて、離婚したいのに拒否されているとも。

 それで、この子が虐待されている事を知って、欲しくなったらしい。

 この子が望むなら、二人で生きて行きたいと。


 俺は、止めるべきなのだろう。

 児童相談所が保護した後、正式に引き取るべきだと。

 だが、あの子は保護出来なかった。

 それを思うと、俺は、先輩を止める事が出来なかった。


「見逃してくれるの?」

「俺は……。俺にも、手伝わせてください」



 先輩の旦那に見つからないようにアパートを借り、先輩の仕事が決まるまで、家に帰らないつもりだ。

 仕事には行った。

 家に帰らないのは、独身だからじゃない。

 妻がいて、娘もいる。

 だが、帰る気にはならなかった。


 妻は完璧主義で、「お母さんの様にはなりたくない」が口癖だ。

 義母は、良い母では無かったらしい。

 だから、自分は良い母になるのだと、気負っているのだ。俺が、息苦しく感じる程。

 普段は兎も角、あの子を助けられなかった罪悪感がある今は、安らげないあの家には帰りたくなかった。



 そう言えば、向こうから電話が来ないなと気付いたのは、二ヶ月が経った頃だった。

 此方からは、帰らない理由をどう誤魔化せば良いか分からず連絡しなかったが、向こうから来ないのはおかしい。

 その事に、二ヶ月も経ってから気付くなんて、自分が信じられなかった。


 先輩に対する気持ちが、浮気? いや、本気なのか? だからなのか?

 だが、先輩とは何もない。

 手を繋いだ事すらない。

 先輩と結婚したい訳でも無いし、妻と別れたい訳でもない。

 娘だって……。


 その瞬間、娘に対する後ろめたさが押し寄せて来た。

 よその子ばかり可愛がって、俺は、何をしているんだ!

 俺は、娘には妻が居るから大丈夫だと思って、思い出しもしなかった。


 明日、帰ろう。

 先輩の仕事も保育園も問題無い。



 その事件を知ったのは、夕飯時につけていたニュース番組からだった。

 幼い子供が、虐待によって亡くなった。

 顔も名前も知っていた。

 俺の娘だったから。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 最後の返し >気負っているのだ。俺が、息苦しく感じる程。 あたりが伏線だろうか。
[一言] 作品は良かったんですよ! 投稿していただいてありがとうございます。ひつじかい様をお気に入り登録しておいて良かったと思います。 ただ、内容が内容で、結末も結末なので、気が引けるんです。
[気になる点] 評価を付けたくても、★やいいねを付けるのは違う気がして、難しいです。
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