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24、神龍は語る・2

「我らは普通の魔物とは違う。魔物は、黒魔法の使い手の干渉によって生まれる存在で、我らほど強くはない。それでも、邪龍はフェリックスに負けたがな」

初めて聞く話だ。黒魔法に関してはまだわからないことが多い。

2人は口を挟めずにいた。

「我らは自然から生まれる。世の中に溢れるエネルギーによってだ。それは主に自然界のエネルギーの集まる場所であることが多い。永い年月をかけて、聖気の集まるここのような場所で。我と奴は、ここで生まれた同胞……双子のようなものだ。だから奴は我に助けを求め、我も奴を助ける選択をした。見捨てることができなかった」

神龍が悲しげな顔をする。


「我らは生まれたときはまだ弱く、まっさらな状態だ。神でも邪な存在でも、どちらでもない。それから何を糧とするかで変わって行くのだ」

「糧?」

ラグナードが呟いた。

「そう。良き気だけを糧にすれば、巫女の力となる、お前たちが言うところの神に近い存在になっていく。負の感情を糧に選ぶと、邪悪な存在に変化していく。少しずつな。我はここに留まる選択をし、奴は外に出ることを選んだ。それが2人の道を分けることになった」


「このような場所に留まることは、言うなれば退屈なことだ。それを嫌って外に出た者は、どうしても負の感情の影響を受ける。聖気が集まる場所は限られておるし、人が発する感情も負の感情のほうが強い者が多い。普通に生きてる者からは聖気に近いものはなかなか出ないものだ。ただ楽しいとか嬉しいとかの感情ではない。お前たちのように常に自分を高める努力をしている者や、祈りの力によってしか得られぬ。安易に腹を満たすには、人々の邪な感情を糧とするほうがはるかに楽なのだ」

そう言って神龍はミルディアを見つめた。

「若き巫女よ、そなたは昨今では比類無き力を持つが、古代の巫女の中にはもっと強い力を持つ者も珍しくはなかった」

そう言われ、ミルディアは俯いてしまった。


「お前のせいではないぞ。長い時をかけ、巫女に力を与える我らの力も衰えた。人々の祈り、信仰が減ったからだ。それは必ずしも悪いことではない。信仰に頼る必要がないほど豊かになったからだとも言える。豊かになれば、目に見えぬ物を信じなくなるのは人の世の常だ」

それは経験から来た言葉なのだろうか? とラグナードが考えていると、

「我らのような者は世界中にいる。この国の中にも、外にも。我らは遠く離れていても、感覚を共有できるのだ。我などまだこの世界では若輩者よ」

神龍がラグナードに向けて言った。

また心が読まれていたようだ。


「我は、この地で深傷を負った奴を眠りにつかせ、少しずつ邪気を抜き、聖気を取り込ませるつもりだった。途方もない時間をかけてな。一気にやれば致命傷になるが、ゆっくり時間をかければ元のまっさらな状態に戻せるはずだった。フェリックスとの取り引きは、奴を見逃す代わり、この地とお前の子孫の繁栄を約束すると。そして、いくつか頼みごとをした」

「頼み事、とは?」

ラグナードが尋ねる。

「1つは、この地に人をできるだけ立ち入らせぬこと。まれに、黒魔法の素質を持っているのにそれに気づかず、無意識に力を使う者がいるのだ。そういう者が近づくと、邪龍に影響を与えることになるからだ」


「それから、我らがこの地に眠ることは他言無用とした。黒魔法の使い手の耳に入れば、確実に利用しようとするからだ。邪龍はフェリックスに倒されたものとして伝えるように頼んだ。実際、あと一息でとどめを刺されるところだったからの。フェリックスにはその力を持っているから何の問題も無い」

なるほど、とラグナードは思った。あまり話が残っていないはずだ。

「フェリックス様は嘘が苦手だったのですね」

ミルディアが少し笑った。ラグナードは苦笑いするしかなかった。

やってもいない手柄を吹聴することに気が咎めたのだろう。

「お前はフェリックスによく似ておるな。見た目も、中身も」

見た目が似ていることは、高祖父の肖像画があるのでラグナードも自覚していた。

ただ、リーフェンシュタール家は男の子が産まれやすく、又遺伝なのかよく似ていることは珍しくなかった。

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