22、森の湖・2
予想外の存在の登場に、ラグナードとミルディアはただただ戸惑っていた。
(あなたはどなたですか?)
(私たちを呼んだのはあなたですか?)
(私たちのことを知っているのですか?)
(姉が死んだときのことを知っているのですか?)
(この光が私たちにしか見えない理由は?)
色んな疑問が浮かんでは消え、どれから尋ねるべきかすらわからない。
長い沈黙の後、神龍がしゃべりだした。
「よく来た。待っていたぞ」
低く響く声。しかし、耳から聞こえるのではなく、直接頭に響いている感じがする。
「あ、あの、失礼ながら……」
膝を付き深く頭を垂れ、ミルディアがおずおずとしゃべりだした。
「我はこの湖に住まう者だ。お前たちが神龍とか水神とか呼ぶ者だな。そう畏まらずとも良い、巫女よ」
(言われてみれば、この湖は神聖な気に満ちている)
ミルディアは思った。トリーのことで頭がいっぱいで、気が回っていなかった。
(もしかして、高祖父がこの地に立ち入るなと言った理由は……)
ラグナードが考えていると、
「その通りだ。察しがいいな」
神龍の声が響く。
(考えを読まれた……?)
ラグナードは少なからず驚いた。神龍と言うのは本当らしい。
ラグナードも慌てて膝を付いた。
「お前たちをここに呼んだのは私だ。長い間、2人が揃うのを待っていた」
そう言われ、2人は顔を見合わせる。
まだ何のことかよくわからない。
「始まりは15年前、この地で起きた惨劇まで遡る」
神龍の言葉に、2人の息が止まった。
「姉は……ここで命を落としたのですか?」
ラグナードの声が震える。
「その通りだ。そしてそれは、我に責任の一端がある。その話をするなら、お前の高祖父の話まで遡らねばならん」
重々しく神龍が言う。
長い夜になりそうだった。