表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/45

21、森の湖

光の方へ走ると、開けた場所に出た。森の湖だ。

月の光が降り注ぎ、湖の畔に咲き乱れる花が白く浮かび上がっている。

「綺麗……」

ミルディアは息を飲んだ。馬を止め、地面に降りる。

「これが……トリーの見たがっていた景色……」

ミルディアはその場にへたりこんだ。

「トリー……あなたは、この景色を見たの……? 夕日が差し込む、美しいこの場所を……」

ミルディアは月を仰いだ。

「貴女が呼んだの……? トリー……」

ミルディアの目に涙が浮かんでいた。

リリーが心配そうにミルディアに顔を寄せた。

近くの山から水が流れこんでいるのか、せせらぎのような音だけが聞こえていた。


そこに馬の蹄の音が近づいてくる。

「止まれ、ブルーノ!」

遅れてきたラグナードも、ミルディアを見て馬を降りた。

「ここは……」

覚えていないはずなのに、見覚えがあった。

「ここで……俺と……姉上は……」

閉じられていた記憶の蓋が開きかけている気がした。

「ダメだ、ぼんやりとしか思い出せない……」

ラグナードは頭を振った。

とりあえず馬2匹を木に繋ぎ、光の出所を探す。

光が強い方へ歩くと、湖に阻まれた。

「湖が光ってるのか……?」

濡れるのを覚悟で湖に入るべきかラグナードが悩んでいると、光が強くなった。


「湖の中から……何か……」

ミルディアが何かの気配を察知した。

「魔物か?」

ラグナードが剣に手を掛ける。

しかしラグナードは、どこか懐かしような、よく知っているような感覚を覚えていた。

「いいえ、これは……もっと強くて……神聖な、何か……」

ミルディアもはっきりとはわからず、言葉も途切れ途切れだ。

ミルディアの声に応えるように光が強くなった。

眩しくて目を開けていられない。

目が慣れた頃になんとか目を開けてみると、湖の上に立派な白い龍の姿があった。

「これは……」

ラグナードがあっけにとられる。

「神龍……?」

ミルディアが呟いた。

ミルディアも見るのは初めてだ。

人間より上位の存在、神そのものか、神に近いもの。

巫女をしていてその存在を感じることはあっても、滅多にお目にかかれるものではない。


初めて見る神龍の瞳は、ラグナードと同じ赤い色をしていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ