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クラッシュ!ムーン・トゥ・アース

作者: はやまなつお

1 米中戦争開始!


「臨時ニュースです。月資源を巡って対立していたアメリカと中国が

 核兵器使用による紛争に突入しました。


 両国とも核ミサイルを月基地に持ち込んでいて、無人の土地であることをいい事に

 爆発させて相手を威嚇しています。

 

 直接、敵基地を攻撃してはいないようですが両国の緊張が高まっています。

 双方、30発から50発を月の無人エリアに撃ち込んでいます。


 特に月の裏側、えーと、月は一定の側を常に地球に向けていますから

 その見えない裏側での爆発が多いです。


 大っぴらに核ミサイルを撃っていることを天文学者に気づかれない心遣いのようです」


1週間後のニュース。


 「核ミサイルの影響で月の軌道が変化しています。

  月の裏側を押し出したことにより、地球に接近する模様です」


2週間後。

「月の地球への接近はスピードを上げつつあります。計算では3週間後には

 地球に到達すると思われます!現在対策会議を各国が行っています」


3週間後。

「米中の宇宙軍は協力して核ミサイルを地球の衛星軌道上に展開、月攻撃が予定されています。

 これにより月を破壊できると発表しています」


4週間後

「核ミサイル群攻撃は効果なし、落下スピードが加速度的に増している月は

 地球方向からのミサイルを受けてもスピードも質量も変わりません!

 あと1週間で月は地球にぶつかります!どんな事が起きるかは神のみぞ知る状態です!」


これ以降は電波障害が発生、放送不可能。

 


2 落下する月


私は日本人。

親兄弟とは険悪な関係で、中学を出ると住み込みで働きに出た。


対人恐怖症、潔癖、正義感が強くて悪人が多いのにうんざり、

つまり人間嫌いの性格。


40歳ぐらいで仕事を辞めてからはリラックスできる場所を求めて

田舎を転々としている。


そして50才。独身、家はアパートの借家。無職。


図書館とスーパー、雑貨屋、服屋とかに定期的に運動のために歩いている。

小説と漫画とアニメが生きがい。


月落下のニュースを聞いた。

簡単に荷物をまとめて富士山の高所に移動した。


車の運転ができないので交通機関を使うしかない。

貯金はあるので前払いで3週間、宿を確保。


日本旅館は共同の風呂場でガラの悪い奴にからまれることが多いので

1室にシャワー設備のある洋風ホテルを選んだ。

ワンルームマンションに近い作りの部屋。



3 世界の終わり


月が地球にぶつかる日になった。


巨大な月がクレーターを見せて空半分を覆っている。


ホテルの者は地域の避難所へ移動。

もっと下の地域の小学校の体育館。


私は高所に居た方が安全と判断してホテルにいることにした。

烈風、地震、大津波。


1夜が開けると。

鉄筋コンクリートのホテルは何とか耐えた。


ホテルの下は海水。

富士山の高所から見て四方が海に変わっていた。


もちろん電気ガス水道インターネットも停止。



4 新生活


1週間、ホテルの食料で不自由はしなかった。

徐々に海水が引いて行った。


3ヶ月、あちこちにある無人の食料品店の缶詰で食いつないだ。

海水が引くに連れて被害が判明、生きた人間に会っていない。


4ヶ月目、ヘリがやってきた。

降りてくると。30歳ぐらいの若い男。


「ここにいるのは何人ですか?」


「私一人です。避難所に行った人たちは水の下で全滅したようです」


「そうですか。ここからなら**市に行けば100人は生き残っていますよ」


「彼らは私に食料をくれる余裕がありますか?」


「ありますよ、復興が進んでいます」


「復興?これだけひどい被害で?」


「長野県に大規模な退避場があって数万人が生き残っていますよ」


「ええっ!それは政府高官とか財界人とかですか?」


「ええ、まあ・・・自給自足できるんなら無理に合流は勧めません」


男はヘリで飛び立っていった。



5 再び戦争


大洪水から6ヶ月後。

**市に行ってみた。


難民キャンプ。テントの群れ。

小銃を持った米軍兵士たちが警備。


避難民におみやげに持っていった缶詰類は兵士に取り上げられた。

そこで状況を知った。


月は太平洋に落下、柿が地面に落ちて平べったくなるように、潰れて、

北アメリカから中国まで巨大な陸地、ムーン大陸が出現していた。


ムーン大陸は平坦な大平原。

アメリカから中国まで場所によってはジープで通行可能。

ムーン大平原とも呼べる。


アメリカの調査で貴重な鉱物資源の山であることが判明。


アメリカ、中国、ロシアなど核戦争に備えていた核保有国は

大規模な核シェルターで地球規模の大洪水を乗り越えていた。


食料を手に入れるには兵隊になるしかなくて、生き延びた民間人、

アメリカ人、日本人は、兵士として徴用されてムーン大平原の確保に動いた。


中国軍、ロシア軍、その他もムーンエリアに突入。

資源確保目的で、旧兵器での戦争が始まった。



6 死の都東京で


戦争は長くは続かなかった。

かって核兵器を大量に使用した月の土地は強力な放射能を帯びていて、

踏み込んだ兵士たちは、そのうち倒れていった。


各国軍は自分の国に撤退、ムーンエリアは資源があっても手を出せない区域になった。


誰も統計を取っていないので被害人口は不明だが何万分の1ぐらいに

激減した地球人口を無意味な戦争でさらに減らした。


核保有国の支配者層は高所に臨時政府を作って健在らしい。


田舎暮らしをしている私に食糧生産をして提供するように、

と兵士が命令してきたので逃げた。


現在、私は苦手だった自動車を動かして東京を彷徨っている。


ぶつかっても無免許でも文句を言う者はいない。

瓦礫や障害物だらけでスピードは出せないが。


東京は平坦地なので一度は全滅、海水が引いて、現在の人口は700人程度。

あちこちに隠れ潜んでいる。


用心のために小銃を手に入れた。


食料目的か、それとも無意味に攻撃してくる連中は射殺して自分の身を守っている。


どこまでも争わずには、いられないらしい。



7 提案


長野県の高所の日本政府では、女性の新首相が演説。


「タフでなければ生きていけない。だが優しくなければ生きている資格が無い。

これは探偵フィリップ・マーロウの言葉ですが。


各国の代表者はタフ、つまり軍事力で圧倒しないと危険だと思ってるらしい。

だから争うのをやめられない。


争わずにはいられない、では犬が吠える、猿が喚くのと同じ。動物です。人間の振る舞いではない。

人類は、まずこの精神病を治療すべきです。


習慣を作り変えるべきです。基本的には相手に友好的に接する、と。

武装は結構、しかしタフと優しさ、軍事力と理性ある平和的態度を共存させなくてはいけない。


月は共同管理を。各国は今こそ1つの国になりましょう。新しい言語を共通語として」



この提案を各国の権力者が承知するとは思えない。


群れるのが嫌いな私は、日本の旧海岸線に沿って西に向かった。


夜になるとムーン平原が放射能で銀色に輝いているのが見える。



手本はロバート・セドリック・シェリフ「ついらくした月」(1939年のイギリスの小説)、

サム・マーウィン・ジュニア「次元パトロール」。


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