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妖精巫女と海の国  作者: もも野はち助


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41/50

41.王妃が望んだ反応

すみません……。今回7000文字越えで長いです。(汗)

「アズリル、いらっしゃい。さぁ、早くこちらへ!」


 上機嫌な様子のテイシアに促されて、アズリエールが王族二人が待つテーブル席に着く。すると、テイシアとは真逆の表情を浮かべた王太子妃ハルミリアが、心配そうにアズリエールへと視線を投げかけてきた。

 それを少しでも安心させようとアズリエールは、敢えて穏やかな表情で微笑んだ。


「今日はね、あなたから大事な報告があると思って、ユリアエール嬢はお誘いしていないの……」


 やや残念そうに苦笑するテイシアにアズリエールも同じような笑みを返す。

 すると侍女達が手際よく用意してくれたお茶が、アズリエールの前にも出された。それを確認したテイシアが、獲物を狙うハンターのような笑みを浮かべ、例の件をアズリエールに切り出しくる。


「それで……アズリルの方は、先週わたくしがお願いした件に関して、動いてくれたのかしら?」


 先週テイシアが、アズリエールに婚約者を姉に変更するようにオルクティスを説得して欲しいと頼んできた事を言っているのだろう。妖艶さも感じさせる美しい笑みを浮かべながら、テイシアの口角が少しづつ上がる。


 今までのアズリエールなら、そのテイシアの微妙な表情の変化を読み取り、出来るだけベストな返答を導き出しながら慎重に応えていただろう。

 しかし、もうテイシアの顔色を窺い、自分の感情を押し殺す必要はない。

 もしそれでテイシアが抱くアズリエールの印象が悪化したとしても、オルクティスが絶対に守ってくれる。

 すぐに手を差し伸べてくれる心強い存在が自分には存在している事を自覚したアズリエールには、真綿で首をジワジワ絞めてくるような会話運びをするテイシアから受ける不安が、すでに脅威ではなくなっていた。


「その件なのですが……申し訳ない事にオルクティス殿下には、お話をしておりません」

「まぁ! どうして? だって先週、あなたもその事に賛同してくれている様子だったでしょ? 何故急に心変わりをしてしまったの?」


 あからさまに落胆した表情を浮かべたテイシアに怯まぬようアズリエールは、真っ直ぐ視線を向けた。


「姉をオルクティス殿下の婚約者にされたいのは、テイシア様のご意志です。ですので、そこにはオルクティス殿下のお気持ちへの配慮がございません。オルクティス殿下のお気持ちを蔑ろにし、そのお話をわたくしが致すのは、とても失礼な行為になるかと」

「そんな事はないわ。そもそもあなたからオルクに言って貰った方が、その件を受け入れやすいと思うの。だってあの子は、あなたの事をかなり気にっているでしょ? わたくしがその婚約者変更の話をしても聞く耳など持ってはくれないだろうけれど……。()()()()()()()()()あの子のお気に入りなあなたの言葉なら、絶対に受け入れてくれるはずよ?」


 コロコロと笑いながら、悪意のない様子でテイシアが主張してくる。だが、アズリエールは今回だけは、折れる気は一切なかった。


「大変申し訳ございませんが、そちらのご要望に関してはお受け出来かねます……」

「オルクがユリアエール嬢に好意を抱く事は難しいと? でもお姉様は、オルクのお気に入りであるあなたと見分けがつかない程そっくりなのだから、きっと時間をかければ好意を抱けると思うの」


 そう言って、テイシアが更に柔らかい笑みを浮かべる。


「お願い、アズリル。考え直して、()()()()()()()二人の仲を取り持つ事に協力してくれないかしら?」


 ある一部分を強調しながら、そう懇願してくるテイシアにアズリエールの心が揺らぐ。しかし、アズリエールはその心の揺らぎを瞬時に振り払った。


 大切なものは、もう絶対に自分からは譲らない。


 今まで周りの空気を読みすぎて、身を引く事が多かった自分を変えようと決めたのだから。


「申し訳ございませんが、お断りさせて頂きます」


 ハッキリそう告げるアズリエールにテイシアが、大きく目を見開く。


「わたくしは、オルクティス殿下より直接お断りされない限り、婚約者でありたいのです」


 その言葉に驚きながら目を見開いていたテイシアが、盛大にため息をついた。

 その反応にアズリエールが、ビクリと体を強張らせる。

 予想はしていたが、今の返答でかなりテイシアを落胆させてしまった……。

 そう痛感した瞬間、罪悪感が心の中に広がり出す。


 そんな二人のやり取りを不安そうな表情を浮かべたハルミリアが、息を飲む様に見守っていた。どうやら今日のハルミリアは、テイシアより一切口を挟まぬように釘を刺されている様だ。

 その影響もあり、三人の間にかなり重苦しい空気が流れだす。

 それに拍車を掛けるようにテイシアが、鋭い視線をアズリエールに向けた。

 その視線がアズリエールの罪悪感を更に深め、思わず俯き気味にさせる。


 まるで要望を受け入れないアズリエールを非難するかのようなテイシアの視線。

 その重圧に負けそうになってしまったアズリエールは、俯きながら耐えるように唇を噛んだ。

 しかし次にテイシアから放たれた言葉は、全く予想していなかったものだった。


()()()、嫌な事は嫌だと言ったわね?」


 その瞬間、いたたまれない思いで耐えていたアズリエールはテイシアを凝視しながら、ゆっくりと驚くように目を見開く。

 対してテイシアの方は眉間に手を当てながら、苛立つような様子を見せ始めた。


「本っ当ーに、あなたという子は……。いくら人に合わせる事が得意とは言え、限度という物があるでしょう!! あれだけ自分が不快だと感じる要望を押し付けられているのに、何故それに必死に応えようとしてしまうのっ!?」

「テイシア……様? 一体、どういう……」


 すると、テイシアは一瞬だけアズリエールを一瞥した後、不機嫌そうにプイっと視線を逸らす。そしてその苛立ちを吐き出すように不満を訴えた。


「わたくし、何でも言う事を聞くだけのお人形さんは嫌いよ!」


 その言葉を聞いたアズリエールが、更に大きく目を見開く。


「アズリル、あなたのその相手が好む動きや雰囲気を瞬時に見極め、そしてすぐに実行出来る所は、とても素晴らしい特技だと思うわ。でもね、王族の……特にオルクの様な外交的な公務を担う人間の妻としては、その特技はあまり頂けないの。相手に瞬時に好印象を抱かせる、ここまでは良いのよ? でもあなたの場合、ただ相手に好印象を抱かせるだけでしょう? あなたはね、相手にとって接しやすい雰囲気作りを徹底し過ぎて、逆に相手が求めるがままの姿を完璧に演じてしまっているの……。それでは内容によって、その相手との交渉が非常にしづらくなるのよ? 相手が不快を感じる事は出来るだけ避けるそのスタイルでは、こちら側の要望を相手に押し通す事は出来ないわ。だから、わたくしがあなたに求めた部分は、相手に好印象を抱かせた上で、相手があなたの要望を受け入れやすい状態に誘導出来るかどうか……そういう部分なの。それなのに――」


 そこまで一気に言い切ったテイシアは、こめかみに手を当てながら更に眉間に皺を深く刻む。


「あなたは自分の意思を押し殺してまで、わたくしが無理強いする要望を殆ど受け入れようとした……。しかもその要望に見事応えてしまうんですもの!」


 まるでアズリエールが、その要望を拒絶する事を期待していたかのようなテイシアの言い分にアズリエールが、困惑しながら更に呆然とした表情で固まる。

 そんなアズリエールにテイシアが、落胆するような視線を投げ掛けてきた。


「お陰で試す為とは言え、あなたには意地の悪い要望を何度もする羽目になってしまったわ……。アズリル、あなたは自己犠牲精神が強過ぎるの。周りに対して献身的な性格なのは、ここ三カ月を通してよく分かったけれど、でも自分を押し殺してまで相手に合わせる行動は絶対にやめなさい。そんな事をしなくても、あなたは人から好かれやすい要素をたくさん持っているのだから。あなたの献身的な姿勢は、一歩間違えると自虐的な受け身しか出来ない人間になってしまうのよ?」


 やや同情的な表情を浮かべながら、呆れ気味なテイシアからの言葉にアズリエールの視界が歪み出す。そのテイシアの言葉は、明らかにアズリエールの為を思っての言葉だったからだ。

 大事に包み込むようなオルクティスの優しさとは真逆の……突き離しながら、それでも親身になってアズリエールの事を今まで考えてくれていた様子が、ヒシヒシと伝わってくる。


 だが、それでも今までのテイシアの接し方からは、自分よりも姉の方が望まれていたのではという考えが頭の中から離れない……。

 だからなのか……ずっと心の中で燻っていた言葉がポロリと零れる。


「テイシア様は……あまりわたくしには、良い感情をお持ちではないのでは……」


 思わず口にしてしまったその言葉にアズリエールは、自分自身で傷つく。

 更に瞳に涙がジワリと溜まり出して来たのを必死に抑えた。

 そのアズリエールの様子にテイシアは、心底呆れたという表情を返して来た。


「そんな訳ないでしょう!! 初対面時にあれだけ見事なパフォーマンスを見せられたのよっ!? それなのにどうしたら、あなたの事を嫌いになれるの!!」

「で、ですが……。わたくしよりも姉の方が……」


 ここ最近、自分は周りからは求められてはいないのではという不安を抱えていたアズリエールは、ずっと隠していたその不安を遠慮がちに吐き出した。

 すると、テイシアが苛立ったように「ああ! もう!」と声を上げる。


「そんなの当たり前でしょ!! だってあなたのお姉様は、敢えてわたくしにとっての理想的な娘像を見事に演じていたのだから! 双子であるあなただって、そういう振る舞いをするのは得意なのだから、少し考えればすぐに気付くはずよ? それに……よく思い出してごらんなさい? わたくしは、あなたのお姉様の事を何てお呼びしていたかしら?」

「『ユリアエール嬢』と――――」

「では、あなたの事は?」


 その質問にアズリエールが小さく息をのみ、やっとテイシアが言わんとしている事に気付く。


「わたくしが愛称で呼ぶのは、自分が気に入った相手だけよ。では、愛称で呼ばれていたのは、あなたとお姉様のどちらかしら?」


 やや意地の悪い笑みを浮かべながらテイシアから質問を投げかけられた瞬間、ついに堪えきれなくなったアズリエールの涙が瞳からボタボタと零れ出す。

 その状況にテイシアとハルミリアが、ギョッとした表情をで焦り出した。


「ちょ……ちょっと! 何故そんな事で泣くの!!」

「そんな事!? 泣くに決まってるではありませんか!! アズリルは、ずっとお義母様から嫌われているかもしてないと思い詰めていたのですよ!? それを……王族に嫁ぐ為には大事なことだからと勝手に決めつけて、何度も何度もアズリルに意地の悪い対応ばかりなさって!! お義母様は毎回やり過ぎなのです!!」


 今までの鬱憤を晴らすがごとく、今度はハルミリアがテイシアに食って掛かるように不満をぶち撒ける。そしてサッと席を立ち、アズリエールの前にかがみ込んだ。


「かわいそうに……。ずっとお義母様の態度に心を痛め、張り詰めていたのよね? でももう大丈夫だから……。もうお義母様は、あなたに意地の悪い事を言ったりしないわ。もしまたそのような行動をなさろうとしたら、わたくしがすぐに陛下とノクティス様にオルクの臣籍降下を早めるように進言して、お義母様と接触する機会を減らすように動くわ! だから、もう無理にお義母様に合わせなくてもいいのよ?」

「ハ、ハミ!! あなた、何て事を!! ここぞとばかりアズリルの点数を稼ごうとするだなんて、何て狡猾なの!?」

「点数稼ぎなどしておりません!! わたくしはお義母様と違って、アズリルを大切にしたいだけです!!」

「わ、わたくしだって好きであのような試す行いをした訳ではないわ! ただ……外交を担うオルクの伴侶としてはその部分を直さないと、この先アズリル自身が苦労するかと思って仕方なく……」

「それを大きなお世話と言うのです! もしそういう事態になってしまったら、その時に手を差し伸べてあげればいいではありませんか! それを今から強制的に改善させようとするだなんて……気が早すぎるのでは!?」

「この子の性格では、いざそういう状況になっても自分から助けなど求めず、一人で抱え込んでしまうから、早い段階で対策を取ったのよ! ハミ! あなた、もう少し先見の眼差しを磨いた方がいいのではなくて!?」

「お義母様こそ、あまりにも周りに完璧を求めすぎではありませんか!? 皆がお義母様のように鋼のような精神を持っている訳ではないのですよ!?」

「まぁぁぁー! なんて失礼な子なの!? せめてダイヤモンドのような硬さと言いなさい!」

「お義母様の場合、美しいダイヤモンドではなく、荒々しい印象の鋼の方がお似合いです!」


 そう言ってプイっとテイシアから顔を背けたハルミリアが、静かにボロボロと涙を零しているアズリエールの頭を撫でる。その様子から、流石のテイシアも罪悪感が駆り立てられたのだろう。


「アズリル……。あの、ね? わたくし、その……まさかこんなにも泣かせてしまう程、追いつめてしまうとは思わなくて……」

「お~か~あ~さ~ま~?」

「その……本当にごめんなさい……」


 責める様な視線をハルミリアから向けられ、テイシアがしおらしく謝罪する。

 しかし、アズリエールの方は止められない程の泣きじゃくりを見せていた。

 余程、傷付けてしまったのだと、ますますテイシアの罪悪感が募る。

 しかし、泣きじゃくるアズリエールの次の言葉にテイシアとハルミリアは大きく目を見開く事となる。


「良かっ……た……。わた、し、嫌われて……なかっ……」


 その瞬間、頭を撫でていたハルミリアがギュッとアズリエールを抱きしめた。

 どうやらアズリエールの涙が止まらなくなっている理由は、傷ついたからではなくテイシアに嫌われていなかった事への安心感からのようだ。

 その反応にテイシアも席を立ち、アズリエールの元へやって来る。


「どうして……そんな事を思ってしまったの? 確かにわたくしは試す為とは言え、あなたに意地の悪い要望を何度かしてしまったけれど、でも毎週末のお茶の時間は必ずあなたに声を掛けていたでしょ? もし嫌っていたら、そんな事はしなかったわ。そもそも何故、あなたはそんなにも自分に自信が持てないの?」


 ハルミリアに抱きしめられているアズリエールの頭をテイシアが優しく撫でる。

 それが一層、アズリエールの瞳から溢れる涙の量を増幅させた。


「だって……みん、な、ユリーを……好きに、なって、しまっ、うから……」


 まるで絞り出すかのように零されたアズリエールの言葉から、テイシアが何かに気付く様子を見せた後、急に目をつり上げた。


「あの子はっ!! 婚約前に行ったアズリルの身辺調査の資料を一部、わたくしに隠蔽したわね!?」

「あの子とは……もしやオルクの事ですか?」

「そうよっ!!」


 そう言って急に怒りを露わにしたテイシアの様子にハルミリアが、怪訝な表情を向けた。


「それが……今回の事とどう関係していると言うのですか?」

「ハミ……あなた本当に洞察力が低いわね……。今回、わたくしがアズリルに対して求めていた部分だけれど、それは彼女が周りの人間の空気を読み過ぎて自分自身の感情を抑え込みがちな所が気になっての行動だったの。でもね、そのアズリルの気遣い方が約一名だけ、かなり過剰にされている人物がいたの。それがお姉様であるユリアエール嬢よ」


 そのテイシアの考察を聞いたアズリエールが、ビクリと反応する。

 それを肯定と見なしたテイシアが、困った様に苦笑した。

 恐らくオルクティスは、7年前の事件についての報告書はテイシアに渡したが、アズリエールの縁談が姉ユリアエールの所為で何度も壊されていた事についての報告は、敢えてしなかったのだろう。


「あなたはお姉様がここへ訪れた途端、過剰にお姉様を優先するような立ち回りを率先して行っていた。初めはお姉様を慕い過ぎて姉離れが出来ず、そのような行動をしているのかと思っていたのだけれど……どうやら、そうではないようね? あなたは、まるで罪でも償うかのように無意識でお姉様に尽くすような動きばかりをしていたの。それは、自覚があった?」


 すると、ハルミリアに抱えられたまま、アズリエールが息を殺すように黙り込んでしまう。その反応にテイシアが今日何度目かのため息を漏らした。


「恐らくその理由は、オルクが隠蔽したあなたの身辺調査結果の資料に書いてあったのでしょうね……。ねぇ、アズリル。お姉様がここに来るという事を伝えた直後のあなたは、わたくしの目にどう映っていたと思う? その事を聞かされたあなたは、一瞬だけ酷く怯えるような反応をしたのよ?」


 そう告げられたアズリエールは、涙でぐちゃぐちゃになった顔をハルミリアの腕の中から、恐る恐るゆっくりと上げた。すると、憐れむ様な悲し気な表情で微笑むテイシアの視線とぶつかる。


「その後、再会したあなた達は、とても仲の良い双子姉妹として周りに見られていたわ。でもね、わたくしからすると、そのあなた達の関係はどこか演技ががって見えたの。この世で一番近い存在のはずなのにどちらも相手を警戒し、探り合っている……。特にあなたはお姉様に対して異常な程、遠慮している印象が強かったわ」


 そのテイシアの話にアズリエールがグッと唇を噛んで俯く。


「だからわたくしは、敢えてあなたとお姉様の違いがあからさまになるような要望を提案したの。あなたがお姉様を押しのけてでも自分を尊重する行動を起こさせる為に。わたくしにはね、あなたがまるでお姉様の存在に縛られている様に見えてしまっていたの」


 すると、再びアズリエールの瞳から涙がボロボロと零れ出す。

 自分達の(いびつ)な関係は、きっと周りからは決して気付いて貰えない……。

 そう思っていたアズリエールだが、それをテイシアは見事に見抜いてくれた。

 ずっと誰にも言えず、もう抱え込んで行くしかないと思っていた姉との歪な関係をテイシアが気付いてくれた事に深い安堵してしまったアズリエールは、つい気が緩んでしまって涙が止まらなくなる。

 そんなアズリエールをテイシアは、ハルミリアから奪うように自分の方へ抱き寄せた。


「先程、わたくしにオルクとの婚約解消を拒む姿勢を貫けたのだから、もうお姉様に対しても出来るわよね?」


 アズリエールが何故、姉であるユリアエールにそこまでの遠慮を抱いているのか、テイシアは敢えて確認してこなかった。だが、それがアズリエールの中で大きな障害となっている事は確信しているらしい。

 だからこそ、この言葉なのであろう。


「アズリル。あなたがお姉様に何かを譲る事が当たり前だと思っていても、周りの人間はあなたでないとダメな事もあるのよ?」


 まるで言い聞かせるように耳元で囁かれた言葉にアズリエールは、テイシアにしがみつく様に腕をまわし、声を上げて本格的に泣き出してしまった。

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