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ディフェレンター  作者: 論です
2章 キマイラ編
96/154

94話 キマイラ戦 5

キマイラ戦が長すぎるのでちょっとペース上げます。

(と言っても大事な部分は割けれないので結局長くなりそう)

灰色の長い髪と巨大な翼、そして聞き馴染んだ声で誰か来たのかを理解する。


「ハヤテ!」

「......お待たせ」


名前を呼べば、そいつはいつになく真剣な様子で答えた。

聞き馴染んだ声のはずなのに、いつも聞いた声のはずなのに、いつものハヤテと雰囲気が違うように感じた。


「お前も遅いんだよ。カザミ」

「遅れてごめんなさい。遅れた分の働きはするわ」


名を呼ばれた少女、カザミは申し訳なさそうに頭を下げながら視界の端で倒れるミアを見て表情を歪ませた。


「てかハヤテはその手大丈夫なのか?」


視線をハヤテに移し、彼の右手を見て思わず不安になる。けれど当のハヤテは「大丈夫だよ」と平気そうな顔をしている。巻かれた包帯が赤く滲み、見ているだけで痛々しいくらいだというのに。


「動物は可哀想だよね。ほんの少し違う姿になるだけで、怪物扱いされるんだから!」


突然そう口にしたハヤテを見て、理解する。


(ハヤテ、怒ってるのか......)


前回もここに来た時、ハヤテは怒りを垣間見せていた。こちらが恐怖してしまうほどの。

それでも、ハヤテは怒りを抑え込んでいた。冷静であろうとしていた。

そのハヤテが、今、堪忍袋の緒を切らして完全に怒っている。痛みを忘れてしまうほどに。


「行こうみんな。絶対にキマイラ(あいつ)を倒そう......」


合わせた訳でもなければ、倒さなくていいと思ってる者が居た訳でもない。けれど、鳥肌が立つほどのハヤテの怒りが、まるでこの場を支配してるようだった。

ハヤテの言葉に全員が強く頷いた。


------------------------


「アルト、あなた、盾役やるとか言ったそうね。調子はどう?」

「ノーコメント。強いて答えるなら、出来なくてもやる。だよ」

「よくある台詞だけど、勇気と無謀は違うわよ」


知っている。と簡単には答えられなかった。それを知っていながら自分がその無謀に挑んでいることを自覚していたから。


「交代よ。私がやるわ」

「いや別に」

「いいから任せなさい。あなたよりはマシよ」


そう言ってカザミは俺の前に立ってキマイラと正面で向かい合う。

カザミは学園最高の盾と言われているらしい。その実態を俺は知らないし、色々納得しがたいところもあるが......まあ、お手並みくらいは拝見しようか。


キマイラは再び胸を切り裂き、再生と共にいくつもの鋭い針を飛ばす。それもカザミだけでなく、ここにいる全員に当たるように飛ばす。

方向も距離も速度も全て違う針に対して、カザミは鎌を振るい渦を巻く風の壁を作り出す。そしてその風は渦の中心から外に押し出すよう流れ全ての針を弾いた。


「その程度?」


カザミは攻撃が止むと風の壁を解き、足下から風を発生させ浮遊し、同じ目線からキマイラを挑発する。


「舐メルナヨ、人間のノ、メス風情ガ!」


キマイラが殴りかかるとカザミはさっきと同じように風の壁を()()()()()()()()作り出す。

防御範囲を自分のみに絞ったことで防御力が増したようだが、単純火力はキマイラの方が上らしく、多少風に流されようともキマイラの拳は風の壁を突破しようとしていた。


「盾役というのは、こうやるものよ」


カザミは呟くと、風の壁から離れハヤテと共に俺やミア、アキハを抱いて距離を取った。キマイラが風の壁を貫く頃にはその先に誰もおらずただ空を殴っただけだった。


「漠然と攻撃を防ぐのは盾じゃなくてただの壁よ」


カザミは未だ眠るミアの頬を撫でながら静かな声で語る。


「確かに相手の攻撃を防ぐ高い防御力も大事よ。でもそれはあればいい程度の前提条件。それより大事なのは、どうやってを守るかよ」

「どうやって、守るか......」


振り返ってみれば今まで俺は、結果的に守れてればいいと、そう思ってる節があったかもしれない。

その癖に盾役をやるとか、何を言っているんだ。俺は。


「多分、単純な壁の防御力や耐久度はヒュウガの方が上なんだよ」


不意にエルモアが俺の肩に手を乗せ、カザミの後ろ姿を見つめて喋り出す。


「でもカザミの強みは壁の硬さじゃなくて自分や仲間を守る力と思い。それが誰よりも優れているからカザミは最高の盾なんだよ。その盾があるから、俺は迷わず突っ込めるんだよ」

「......流石だわ」


カザミの凄さを理解し彼女に盾役を任せることに。

そして俺達はキマイラに勝つための作戦をハヤテから聞いていた。


「率直に、キマイラには二つの明確な弱点がある」

「二つの、弱点?」


視線はキマイラを睨んだままハヤテは左手で漠然と資料を捲っていた。


「一つ目は奴の異能力。理解してると思うけど、キマイラの異能力は傷ついた時、傷つく前とは別の動物の身体へと再生する能力」


ハヤテが怒っているのは肌で感じるほどだが、それでも説明は丁寧でわかりやすい。

恐らく怒りを向ける相手を間違えず、そのうえで聞き手の俺達にも考慮しているのだろう。


「あの異能力は、というか糞野郎(キマイラ)の身体は動物達の細胞で出来ている。だから同じ動物に弱い」


訂正。わかりにくい。多分考慮してはいるけどやっぱ怒りの方が大きいんだと思う。ルビ変だったし。


「ハヤテ、もうちょいわかりやすく」

「キマイラに取って動物はアレルギーみたいなもの」

「なるほど、わかりやすい」

「異能力で再生した部分は同じ動物に弱い。だから、彼らと共に倒す」


ハヤテが手を挙げるとそれを目掛けるように背後から地響きのような音とともに何種もの動物がやってきた。獅子や熊、狼、蟻や鉢などの昆虫もいる。


「彼らはキマイラ実験の被害者達だ」

「それって......確か、ヒュウガが言ってた例の動物達か」

「彼らの力でキマイラの異能力を破る」

「もしかしてこの動物達って個々で異能力持ってたりするのか?」

「ポチじゃないんだ。持ってるわけないだろ」


無能力。いや、動物なら普通なのかもしれないが、本当にこの動物達がキマイラの弱点になるのか、不安を抱いているとその不安を断ち切るように何匹かの動物がキマイラに向かって走り出す。

キマイラは当然のように拳を放ち動物達を対処しようとするがカザミとアキハが防ぐ。そして獅子と虎がキマイラの脛を噛み切る。

攻撃力で言えば俺やエルモアよりも劣る程度のもので喰らったキマイラの方も大して効いていない......はずだった。


「ナン…ダト…!?」


突然、キマイラが足を抑え悶えだした。

何が起こったのか目を凝らしてみれば噛み切られた脛が()()していない。


「言っただろう? 彼らはキマイラにとってアレルギーのようなもんだって」

「アレルギーって......つまり、あの動物達に受けた攻撃からは異能力による再生は出来ないのか?」

「そういうこと」


ハヤテが指鳴らし、それに応じて次々に動物達がキマイラに向かう。しかし、キマイラも既に動物達を脅威と認識した。二度目は喰らわないと言いたげにキマイラ暴れ回る。が、それは言い換えれば隙であり。


「十文字!」

「黒雷!」


左右から黒い雷と十字架の蒼焔がキマイラに直撃する。


「クソ......共ガァァ!!」


元より耐久度の落ちているキマイラはあまりのダメージに苦しそうに悶えながらも焼けた腕から更に腕を再生し同時に反撃するが、今度はそれを動物達が噛み砕き、カエデとエルモアを助けた。


「すげぇ......行ける。これなら行ける! なぁハヤ......テ」

「っ!」


状況の好転に喜ぶもハヤテに視線を向ければ何故か鼻血を出していた。


「どうしたハヤテ、どこかぶつけたのか?」

「いや、別に」

「別にじゃないだろ。どうしたんだよ」

「......今ここで動物達と意思疎通出来るのは僕だけ。それを全員同時に、個々別々に指示を出すのは負荷が大きいってだけ」

「だけって......あんま無理するな。怪我もしてるんだしこれ以上血流すと......」

「無理するな? それは本気で言ってるのかい? アルト」


ハヤテは鋭い眼差しで真っ直ぐこちらを見つめてきた。

ここ最近はずっとでだが、時折、ハヤテからこちらが萎縮してしまうほどの威圧感を感じることがある。それも底知れないものだ。

俺の方が強いはずなのに。なんて言うのは言い訳だろうか。俺は、ハヤテ相手にビビっていた。


「僕は君達ほど強くない。自分で戦う力を持ってない役立たずだ」

「そんなこと無......」

「でも今、僕にしか出来ない事が、勝利に繋がる最大の力になってる。何より、彼らに信じて欲しいと願ったんだ。ここで無理しないで、いつ、彼らの気持ちに応えるんだ!」

「ハヤテ......」


ハヤテに何があったかはわからない。けれど、ハヤテの背負っている覚悟が生半可なものではないということは伝わった。何より、今のハヤテを止めることは俺には出来なかった。

ハヤテの思いは傷つけられた動物達へのものだったから。


(俺も、せめてヒュウガの代わりに......)


俺はポチから飛び降りて参戦しようしたその時、ハヤテの声が俺の足を止めた。


「もう一つの弱点」

「え?」

「キマイラのもう一つの弱点。君にはそれを()()()()()()()()


------------------------


「キマイラには胸の中心に、文字通り、核がある。それを破壊すると奴の身体は大幅に弱体化する」

「弱体化?」

「具体的には知らないよ。資料にそう書いてあっただけだからね。でもやる価値はある。そしてそれは君がやるんだアルト」

「俺?」


そう言ってハヤテは巨大な銃のようなものをこちらに投げる。軽く受け取ればその見た目に合わせた重量に腕を持ってかれかける。


「重っ! なんだこれ?」

「レールガン」

「レールガン?」

「今回の遠征用にヒュウガさんがトオルに作らせた物らしい。道中は僕に運ばせてたけど。アルトも心当たりないかい? どっかで装飾店になんか貰わなかったかい?」

「装飾店......確かジェルとかいう奴の所で......ミアがなんか受け取ってた気がする」

「多分ミアさんがジェルさんから受け取ったのは、レールガンの弾の素材となる鉱石。それをトオルが加工したんだろうね」

「なるほど」


事の経緯は理解した。けどそのレールガンを何故俺に渡す。問い詰めようとするよりも早くハヤテが答える。


「今、君しかそれを撃てる人が居ない」

「俺、銃とか撃ったことないんだけど、他の奴は?」

「本来はミアさんに渡すはずだったよ。けど、ミアさんは倒れてる。カエデとエルモアも注意を引くように動物達とキマイラを削っている。アキハとカザミさんもそれぞれの役目をこなしていて手が離せない。僕もこのザマだ。それを撃てるほどの余裕はない」


周りを見渡せば、全員が全員必死でハヤテの言う通り、レールガンを撃つ余裕は無さそうだ。


「だからアルト、君が撃つんだ。そのレールガンを」


改めて、ハヤテは俺にレールガンを撃つよう促す。


「ちなみに弾は二発しかない。外さないように......アルト?」

「なあ、ハヤテ。俺以外の誰かなら、問題なくできるんだよな?」

「だから、その余裕が誰にもないって言ってるんだよ」

「わかってるよ。だから俺は、その余裕のない誰かの()()()になればいい訳だ」


それぽさを出して答え、レールガンを構える。


(俺は、ミアの代わりに核を撃ち抜かなければならない)


スコープを覗き照準を合わせ、引き金に指を掛ける。


(弾は二発しかない。俺に出来るのか? 初めて銃を撃つ俺に、出来るのか?)


()()()なんて慣れたつもりの筈なのに、指先が重くなるのは何故か。

責任の重さからか、単純に自信がないからか、そのどちらもか。


荒くなった息を整えようと俺はうっかり引き金を引いてしまった。


「やべっ!」


言った頃にはもう遅い。レールガンの高威力の反動に吹き飛ばされながらも、その弾丸がキマイラの顔を避け天井に命中したのを見た。

貴重な一発を外してしまった。


「......悪い、ハヤテ......一発外しちまった」

「いや、それよりも......」


緊張や責任感、色々な良くない方向の感情に押しつぶされそうになりながらも俺は頭を下げてハヤテに謝る。けれどハヤテは天井を見上げたまま顔を青ざめていた。


「崩れる! みんな、離れるんだ!!」


ハヤテが声を上げると動物達がカエデらを乗せキマイラから離れる。そして次の瞬間、レールガンの弾が刺さった場所から天井が()()した。

元々離れていた俺とハヤテは被害がなかった。だが、他の、カエデ達は間に合ったか分からない。

土煙が舞う中、光を刺す月明かりが天井が崩れたことを示していた。


あまりの惨状に声も出ない。俺はただ呆然とその光景を見尽くしていた。


「全員、無事かい?」


ハヤテだけはすぐに状況を確認しようと、声を上げた。「これで誰も返事をしなかったら......」そんな不安が過ぎる中「大丈夫、みんな無事」と聞こえた。

透き通るような綺麗な声が聞こえた。安心すら覚える聞き慣れた声だ。

いつの間にか、俺はその声へ向かって走り出していた。


土煙の中を進み、そいつの元へ辿り着く。

そして名を呼ぶ。


「ミア!!」

「おはよう、アルト」

割と早く更新出来で良かったです。

後2話くらいで終わります......多分......。

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