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ディフェレンター  作者: 論です
2章 キマイラ編
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88話 それぞれの役割

あけましておめでとうございます。

今年もちまちま更新していきますので、よろしくお願いします。

「ここが例の」

「うん。ここに(キマイラ)がいる」


トンネルに着いたエルモアとハヤテがその先の暗闇を見つめていた。


「それにしても助かった。お前が迂回してたおかげで、ここまですぐに辿り着けた」

「それを言うならこっちこそ。君が迷わずトンネルに行こうって言わなきゃ、僕らは死徒の大群に足止めを受けてたかもしれないからね」


互いの適切な判断を褒め合う二人。

遠征開始直後に発生した地形変化によって状況が混雑したにも関わらず、彼らはその後数分足らずで一度も死徒と遭遇することなくトンネルへ辿り着くことなできた。


「でも、本当に良かったのかしら?」

「何がだ?」

「合流しなくてよ。あなたがいるとはいえ、このメンバーじゃ流石に戦力不足だと思いますわ」


トンネル突入を前にカザミが不安を口に出す。

それもそうだろう。今この場にいるのはエルモア、ハヤテ、カザミ、三人とポチの一羽だけ。前回、事前調査を目的にしていたとはいえ、同じ人数のアルト達で撤退するしかなかった。ミアがいてもそんな状況になった。

それがミアもいないこの三人で大丈夫か。カザミの不安は至極当然のものだ。


「大丈夫だろ。アルト達は後で合流するだろうし」

「それはそうでしょうけど......」

「それに、俺一人なら時間稼ぎくらいは出来るだろうし、無理なら大人しくここまで逃げてくればいい」

「いやだから......はあ、もういいわ。あなたが言うならそれで行きましょう」


余裕があるのか、どこか気の抜けたエルモアの考えをカザミは頭を抱えながらも承諾した。


「ポチはこの近くで待機かな?」

「うん、それでいいよ。アルト達が来た時目印にもなるしね」

「よし、じゃあ行くか」


ポチをその場に残し、エルモア達はトンネルの中へと入って行った。


------------------------


トンネルを進みながら彼らはそれぞれの役目を話していた。


「ハヤテは資料探しと捕まってるって言う動物の保護だろ?」

「あの時は気づかなかったけど、ヒュウガさんが『もしかしたら隠し部屋みたいなのがあるんじゃねぇか?』なんて言ってたからね。確かに、前の依頼だけで全部調べたって言うのは早計だったよ」


実際、キマイラの討伐は戦闘員だけで来る予定であったが、そこにハヤテが参加したのはこれが一番理由だった。


「そうか、じゃあカザミはハヤテの護衛だな」

「流石に僕一人で死徒と遭遇したらどうしようもないからね。資料も安全にじっくり確認したいし」

「それはいいけど、あなたはいいの? 私達が部屋にいる資料探しをしている間、あなた一人でキマイラと戦うのよ?」


先程からではあるが、カザミはキマイラとの戦力差を異様に気にしている。けれど、エルモアは相変わらずと言った様子で「なんとかなるだろ」と気楽に答える。


「あなたねぇ......」

「パートナーだろ? 俺の実力くらい信用してくれよ。俺も信用してるからさ」

「信用はしてるわ。それでも心配なものは心配なのよ。でも、あなたがそこまで言うならいいわ。止めても進んだろうし、それを追いかけるのが私の役目ですもの......はぁ......」


カザミの承諾も得て、それぞれの役割が決まった頃にはトンネルの深部まで来ていた。

そこは前回アルト達がキマイラを視認した場所だ。

やけに響く彼らの話し声からか、それとも彼らを感知する能力か何かか、暗闇の奥から巨大な足音がこちらに向かって近づいてくるのがわかった。


「じゃあ、そっちは頼む」

「もちろん、任せてよ。そっちこそ......」

「エルモア」


暑苦しくも拳を合わせる二人の間に入り、カザミはやはり不安げな表情を見せる。


「ん?」

「無理はしないでね」

「大丈夫だ。俺は学園で一番時間稼ぎが得意だと自負している」

「......もういいわよ。じゃあね、また後で」


彼女の心配も他所にどこまでも気楽なエルモアに、カザミは呆れ切った様子で背中を向けた。


------------------------


「カザミさんも苦労してるね」

「慣れたわよ。それに、今はこんなでも、戦う時になったらちゃんとする人だって知ってるわ」


カザミのエルモアとの付き合いは一年にも満たないがそれでも、超えた修羅場に見合うだけの信頼は寄せていた。


「やっぱりパートナーはいいね。僕も欲しいよ。人生のパートナー」


......ツッコミ不在の不便さをカザミは微かながらに感じ始めていた。

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