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ディフェレンター  作者: 論です
2章 キマイラ編
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86話 熱い男

「その眼で、俺を、見るな!!」


ロレイは再生を阻止された腕を自ら切り離し新しく腕を再生すると、何も無いカエデとの空間を殴った。その瞬間、カエデは勢い良く吹き飛ばされる。

咄嗟に掌から炎を噴射することで、木々への衝突を防ぐも、めり込んでいた大剣も含めロレイから離されてしまう。しかし、問題はそこではない。


「なんだ、今の......!」


ロレイが何をして、自身が吹き飛ばされたのかカエデにはわからなかった。

ロレイが拳を振った瞬間は確認したが、痛みもなければ直撃もしていない。それどころか、寸前で止められたようにすら見えた。けれど、吹き飛ばされた。

不可思議な現象に頭を悩ませながらも、ロレイの腕がアキハの方を向いたことでその考えは今は不要だと、体を動かした。


------------------------


『自分の欠点をミスしてもいい言い訳にするな』


そんなつもりはない。


『なら何故ミスをする?』


ミスをしない奴なんて存在しないだろう。


『論点がズレてるぞ馬鹿。ミスをするしないじゃなくて、何故ミスをするかのか、だ』


......。


『簡単な事だ。その欠点がミスに繋がる要因だと自覚しているからだ』


それは......その通りだろう......。


半年程前のヒュウガと会話が今になって蘇る。

考えを放棄してでも動いたはずなのに、昔話を思い出すくらいに脳は働いていた。


考えるよりも先に動いた。というのをヒュウガは好まない。それはただの馬鹿の脊髄反射だと思っているからだ。それだけで一蹴するのはどうかと思うが、反論する言葉も当時は見つからなかった。

今も見つからない。その馬鹿の脊髄反射が今の自分だと理解してしまったから。

動き出した癖にどうやってアキハを守るか、何も考えれてない。そもそも、間に合わない可能性の方が高い。


「遅い」と「()()()()()」という欠点が「間に合わない」というミスに繋がる。それを今、理解した。理解出来た。


(動くなら、考えて動け!)


カエデは走りながら炎を放ち牽制する。しかし、ロレイがこの程度で止まるような男でないことはわかっている。

故に、()()()()()蒼焔を放つ。

それは消耗が激しい上に、リュウトほど火力は出ない、とても燃費の悪い一撃。だが、腐っても最大火力。あるいは、連戦と負傷から来たロレイの消耗か。その蒼焔を耐え切れず、ロレイは吹き飛ばされる。

カエデも動きながら最大火力を放ったせいで踏ん張りがきかず、体制を崩す。それでもなんとかアキハの元に辿り着き、彼女を守るように前に立つ。


「かっこ悪いですけど、かっこいいですね」

「どっちだ。いや、どっちでもいいが」


()()()()()のアキハの軽口がカエデを安心させた。


(......()()()()()()()()())


冷静に状況を確認しているとアキハが面白そうにカエデを見つめていた。


「何だ?」

「いや、カエデって、普段はドライというか冷めてますよね、でもこういう時は()()ですよね」

「意味がわからない。こういう時とはどういう時だ」

「そういうのは、女子本人に言わせるもんじゃないですよ」

「そうか.....」


言っていることがイマイチ理解出来ず、頭にクエスチョンマークを浮かべるカエデにアキハは軽く補足する。


「まあ、簡単に言うと必死ですねってことです」

「大事な人を守るのに、必死なのは当然だろう」

「カエデ、あなたはほんとに......」


何か言いたそうなアキハと見つめ合って数秒、カエデはふと違和感を覚える。


(......ロレイは、どうなった?)


振り返ってみるがロレイが戻ってきた様子はなかった。アキハもその事に気づいたようで、会釈と共に炎を放った、もといロレイの吹き飛ばされた方へ進むよう促される。

歩き出した次の瞬間、巨大な、螺旋状に連なった氷が目の前を過ぎ去った。


------------------------


ロレイは自身を恥じていた。

格下だと思っていた、実際に実力的には格下で間違いない。けれど、その格下にここまで無様を晒すとは思ってもみなかった。


『慢心してると足元を掬われるからな』


ヒュウガの言った通りだった。

格下だと思っていた慢心していた。結果、無様にもその格下から逃げている。死した後の新たな人生における一生の恥だ。


とりあえず、死徒を寄せ集めて時間を稼いで、逃げる。そこから立て直す。トンネル先の村に行けば......


「トンネル先に何があるかは、知らねぇが」

「ッ!?」

「そのトンネルは俺らが潰しに行く。お前はその前に消えてろ」


聞こえたその声に足を止める。いや、止められる。いつの間にかにロレイは足が凍らされていた。それ気づいた次の瞬間には全身すら凍結されている。


「ヒュウガ......サキリッ!!!」

「叫ぶなよ、うるせぇ。寝てる奴だっていんだから静かにしてろ」


冷気がヒュウガの方に流れているのを感じる。何か大技を放つのだろう。それで自身が死ぬかどうかはどうでもいい。ただ、この男が生きている事が、我々と敵対してる事が危険だとロレイは改めて認識した。


「カエデは強かったか?」


大技の前の貯めなのか、ヒュウガは警戒も氷も解かずに、動きを止めてロレイに語りかける。

時間稼ぎ程度にはなるかと思ったロレイはいつもの調子で応える。


「強くは」

「なかっただろうな、いや、学園で見ればあいつは強い方だが、お前からすればそうでもないんだろ」


ロレイが応えるよりも早くにヒュウガは口を開く。そこからは独り言かのようにロレイを無視して語り出す。


「まだ、あいつは、()()()()は弱くていい。あいつらには未来(さき)がある」


ヒュウガの表情はどこか悲しげだった。それをロレイは煽ることもせず、何故か歯を食いしばってヒュウガを睨んでいた。


「先輩、異能力に反して、割と後輩思いの熱い先輩なんすね」


絞り出すように吐いた煽りは立場の優位性からか、ヒュウガは「うっせぇよ、負け犬」と鼻で笑った。


「ガキ共の経験値になってくれて助かった。運良く生きてたら今度は本気で、殺してやるよ」


ロレイの苛立ちには気づいているだろう。気づいた上でヒュウガさらに煽りる。

肌にも感じるほどの殺気を漏らして、ロレイはその煽りに答えた。


「俺もだよ、ヒュウガ先輩。あんたは生かしちゃ行けねぇ、改めてそれを理解した。お互い生きてたら、今度は最後まで、殺し合おうぜ」

「......お互い......な」


最後に言った時のヒュウガの表情は、やはり、どこか惜しむようで、けれどその真意はわからず。

ヒュウガは左手を突き出し、指を鳴らして呟いた。


「氷の技......氷牙咆哮(ひょうがほうこう)!」


次の瞬間、ものすごい勢いで螺旋状に連なるように氷が形成されていく。それはロレイを巻き込んでこの巨大な森を蹂躙した。

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