85話 蒼焔対拾壱
お待たせしました!(挨拶)
まるで震えているかのような鈍く、重い音が何度も、森中に響き渡る。
「どうしたカエデ! そんなもんか?」
一方的。
カエデはロレイの猛攻を守るので精一杯だった。
(強い......今まで戦った中でもかなり強い!)
カエデは大剣越しに、ロレイの強さを実感していた。
カエデは東洋異能力学園でも上位に入れるスペックを持っており、中でも攻撃力や防御力、耐久力は特に優れている。
多くの学生を見てきた生徒長ジャッツがその高い能力値を認めている。
そのカエデですら、ロレイの一撃を受ける度ジリジリと後退していく。
「お前それでもSランクかよ!」
「俺も、このランクには、不満を持っているっ!」
タイミング見計らい、カエデは大剣でロレイを押し返す。さらに追い討ちをかけるように左手から蒼焔を放つ。
ロレイは軽い身のこなしで炎を避けるも、距離を取らされたことにため息を吐く。
「俺と、エルモアのSランクはヒュウガのおかげだ。ヒュウガが俺達二人をSランクに推薦した。実力に見合ってないことはよくわかってる」
「そりゃそうだ。なんせ、俺一人倒すのにこの惨状だからな!」
ロレイは手を広げ、燃え上がる森を指す。
「お前の力は戦う度に何かを傷つける力だ。実に悲しいな。でもそれは、お前が人だからだ。そこで提案なんだが」
「いや、断らせてもらう」
「まだ言ってないんだが、最後まで聞けよ」
「聞く必要のある内容なら聞くが、その必要はないだろう。仮に聞いても答えは同じだ」
カエデは鋭い眼差しでロレイを睨みつけ、切りかかる。
振り下ろされる大剣をロレイは受け止め、再びカエデとの会話を望む。
「ちなみに、理由はなんだ?」
「言う必要があるか?」
「断るんならそれ相応の理由を聞かせてくれよ。じゃなきゃ、俺も諦めらんねって」
ロレイは大剣を押し返して、カエデに話すよう促す。話してる間は手を出さない。とでも言いたげにあからさまな隙を見せて。
その様にカエデは呆れながらも、短く理由を話し出した。
「俺は大事な仲間達を傷つけなくない。傷つける立場になりたくない。逆に、仲間達を傷つける立場にさせたくない。守る立場でありたい。それだけだ」
「......立派な理由だな。異能力に見合わないほどに!」
「......くッ!」
ロレイが手を突き出すと、カエデが膝を着く。ロレイは異能力を使い、カエデを抑えつける。
大剣を支えに立ち上がろうとするも、余程の重力かほとんど動けない。
「無駄だぜカエデ、この重力は疲労してたとはいえ、ヴァイズですら動けなかったんだからな」
ロレイは異能力を発動したままゆっくりとカエデに近づく。余裕の笑みこそ浮かべているが警戒は解かず、間合いに入らないギリギリのところまで近づいた。
「誰かを守るにも、助けるにも、お前一人の力じゃそれは成せない。お前は弱いんだよ」
動けないカエデを煽るようにロレイは楽しそうに話す。
「そんなことは......よくわかってる」
カエデはゆっくりと顔を動かし、ロレイを見上げる。
「だから、なんだ?」
カエデの鋭い視線にロレイ思わず息を飲んだ。
理由は不明。圧倒的有利なこの状況で、ロレイはカエデに対して恐怖を覚えていた。
不意に、ぬるい熱気がロレイの肌を撫でる。最初はカエデの焔の熱かと思われたが、視界にかかる白い湯気のような煙によって、そうではないと理解する。
同時に、小さな水の球体がロレイに触れ、破裂した。
「ロレイ言いましたよね、この技には防御と再生に徹する必要があるって」
煙が晴れた先で笑顔と銃口を向け、その少女は呟いた。
「アキハ......!」
「まあ、一度見た技は通用しないとも言ってましたけど......でも......」
アキハは銃を下ろし、視線をずらす。
「一瞬、稼げれば十分ですか?」
釣られるようにロレイはその視線を追う。その先には、
「ああ、十分だ......!」
カエデが蒼焔纏う大剣を振り下ろしていた。
「ぐっ!」
ロレイは咄嗟に腕を挟み防御するも勢いは止まらず、腕を切断される。
「く......そがっ!」
刃先が首の付け根に触れたところで異能力を使い重心をずらす。
辛うじて首の切断は防いだがカエデが勢いを途中で止めたことでロレイの体に大剣がめり込んだ形になる。
剣を抜こうとカエデに攻撃するが、アキハが水弾を放ち、腕を破裂させる。
「アキハ! 邪魔すんじゃねえよ!!」
「邪魔というか、いつも通りをしてるだけなんで」
「訳わかんねぇこと言ってんじゃねぇ!!」
愉快そうな笑みを浮かべるアキハにロレイは怒りと殺意を向けるが、カエデが損傷した両腕と体の切断面を即座に燃やして再生を阻止する。
「俺一人の力じゃ助けることも、守ることも無理だと言ったな」
アキハを狙わせない為だけでなく、絶対に逃がさない為、皮膚を瞬時に溶接に拘束する。
「その通りだ。俺一人では足りない」
死を察したのか、ロレイはあらゆる手を使い抵抗する。しかし剣は抜けず、カエデが引くことはなかった。
「だから、アキハがいる!」
カエデは最初から一人で戦っているのではない。
自身の弱さを知っており、自身が独りじゃないことを知っている。それはカエデの持つ、ロレイとの明確な差だった。
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「どいつもこいつも......」
その眼が気に入らない。
誰かのため、仲間のため、光を灯し続けるその眼が、気に入らない。
「その眼で、俺を、見るな!!」
次回の更新は早めにしたいなぁとは思ってますが、他の作家さんの作品も読みたい時期なので多分今回と同じくらいの空くと思います。すみません。




