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ディフェレンター  作者: 論です
序章 旅立ち編
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7話 死徒の異能

バイト。部活。宿題。やることが多い!そして暑い!

その少女は美しかった。

色の濃い短い茶色の髪、澄んだ紅い瞳、マントについた返り血すら彼女を引き立たせる飾りに過ぎない。

そう思わせるほど、その少女は美しかった。


「助けを呼んだのは、あなたたち......?」

「......え、あっ、はい!」


その美貌に見とれていたせいで反応が遅れ声が裏返ってしまった。恥ずかしさで頬に熱が溜まるのを感じたが、あちらはさほど気にしてないらしい。


「そう、大丈夫? 立てる......?」


そっと差し伸べられた手を掴む。


「ありがとうございます」

「気にしないで。そっちの子は、怪我してるの......?」

「わっ、私ですか! あっ、はい。少し足を」


カナエも私と同じような反応をしている。同性ですらここまで動揺するのだから異性からはすごくモテるのだろうとどうでも良い事を考えていると、至極当たり前なことを聞いてきた。


「どうして、こんな、人気のない、ところにいたの......?」

「えっと、この先が私の家で怪我したカナエを手当てしようと思いまして」


まじかで見ると本当に美人。

だけど自分と身長が変わらないから同い年なのかなと色々考えてながら私は少女の質問に答える。


「そう、じゃあ、あなたたちを、家まで送る。また死徒に、襲われたら、いけないから......」


そう言って次はカナエのことを起こす。


(少し申し訳ないような気はするけど、流石に事情は知らないと)


そう思い、後ろから魔眼で少女を見た。すると少女から得たすごいことが情報は予想外のものだった。


(えっ? 東洋異能力学園の生徒? こんな私達と同い年くらいの女の子が?)


驚きの事実に表情を変えないようにするのが精一杯だった。カナエを起こした少女は私とカナエの手を引き歩き出した。


(東洋異能力学園の生徒がどうしてここに?)


疑問に思っていると私の心の声が聞こえたのか少女は振り返って答える。


「私は、東洋異能力学園の生徒。この町には、遠征に来た。そしたら、あなたたちの、声が聞こえた......」

「そうだったんですか。助けていただきありがとうございます」

「ありがとうございます」

「いえ、これが、仕事ですので......」


私が感謝の気持ちを伝えると少女は照れ臭そうに答えた。

家に着いた後はこの少女、ミア・ヴァイズ・レット。と互いに情報交換をした。


「そう、そんな事が、あったんですか......」

「そうなんです! それでアルト君は山の方に行っちゃって......だからお願いですミアさん! アルト君を助けてあげてください!」


カナエに手を握られながら必死にお願いされてミアさんが少しおろおろしている。その様子見た私はというと。


(別世界に住むような人だと思ってたけど、ミアさんも普通の人なんだなぁ)


と謎の共感をしていた。

そして私もカナエと同じようにミアさんに懇願する。


「私からもお願いしますミアさん。アルトを助けてあげて下さい!」

「わ、わかりました。そのアルト君? を助ければ、いいんですね......?」


ミアさんはおろおろとしながらも私とカナエの願いを聞き入れた。


「山の方ですね? 来る途中、見てきたので、なんとなく、道はわかります。二人は護衛の、騎士か、他の東洋の生徒が来たら、事情を説明して、避難場所に行って下さい。くれぐれも、二人だけで行くことは、ないように......」

「ミアさんは一人で行くんですか?」

「はい。その方が楽ですし、誰かを呼んでる、暇も、なさそうなので。では......」


ミアさんはそう言いユキナの家を出た。


「行っちゃったね、大丈夫かな?」

「頼んだのはカナエでしょ」

「そうだけどやっぱり心配で」

「大丈夫よ。ミアさんは強い。私の眼が保証するわ」

「そうだね。きっと大丈夫だよね」


待つ事にした。

二人がちゃんと生きて帰ってくると信じて、私とカナエは待つ事にした。


------------------------


山に戻ってきてから夜が一層深くなったような気がした。いや実際に時間が過ぎているから間違いではないのだが、それでも山を進む度強く感じる。

横に飛ぶ。

すると少し遅れて先居た場所に岩が飛んできた。直前で気づいて避けたのだ。


(確かに暗いけど、目の良い俺は全然避けられる。ただ段々投石の速度が速くなってる。近づいてきてるって事だよな?)


さらに奥に進み続けて少しした時、山の頂上らしき場所に岩を持ち上げる者を捉えた。


(居た! あいつだ。間違いない!)


それが投石をしている死徒だと確信し、さらに速度を上げる。相手もこちらが近づいてきている事に気付いたらしく、慌てて岩を投げてきた。それを避けたと同時に一気に死徒懐まで飛び込む。そして刀を抜き。


(今だ!)


勢いよく斬りかかる。自分の頸を守ろうとした死徒の両腕を斬り落とす。このまま頸を斬ろうとした時、死徒が大きく口を開けそこから岩を飛ばした。


(こいつ! 口の中に岩を!)


咄嗟に避けるも微かに腕を掠れた。傷は気にするほ程でもないが相手が口から岩を作っている事がわかったため、迂闊には近づかけなくなった。


(あいつ、あのサイズの岩を何処から持ってきて投石してるかと思えば、まさか口の中に含んでるとはな。そう考えると今まで投げてきた岩ってあいつの口の中のか......)


「なにそれ汚ッ!」


俺の発言に死徒は不服そうに表情を変えた。


「悪かったな人間。汚くてよ」

「えっ、いやその、悪い......そういう意味じゃ」


まさかそんな反応されると思ってなかったので逆に困る。


「いいさ。この岩の元はお前らなんだしな」


不貞腐れた死徒の唐突な発言に俺は思わず目を見開く。


「元が俺らそれってどういう......っておわっ! 危な! 人が話してるんだから打ってくんなよ!」


話してる間に岩を投げてきたので避けるのに焦ってしまった。


「人間の話をまじまじと聞くと思うか。まあいいここまで来たんだ話してやろう」


そう言うと、死徒ひとつ口から出した岩を手元に置いて話し出した。

既に腕も再生している。


(ほんと汚ねぇな。でも口に出したら怒るから黙っとこ)


今の俺は割と冷静だった。さっき死徒を倒したばかりだからというのもあるのだろう。冷静さが消えてない。


「お前の岩と言っているコレは俺が喰った人間の体を丸めた肉塊だ」


冷静さは消えた。今俺にあるのは純粋な怒りだった。下衆な事をする目の前の死徒に対する怒りだけが残った。

そんな俺を他所に死徒は話を続ける。


「人の肉は生きている内は脆いが、死んで腐った肉ならこめて固める事で岩のように硬くなる。実にいいぜ。人の肉を使って人を殺すのは最高に楽しい」

「てめぇッ!!!」


怒りを抑えられなくなり正面から斬りかかる。飛んでくる肉塊は最小限の動きで避け、懐まで飛び込む。

目の前まで来た所で先と同じように死徒が口から肉塊を飛ばしたと同時に俺は体を回転させ、肉塊を受け流す。そのまま横の回転力で頸を斬ろうとした瞬間死徒は口を丸め小石くらいの肉塊を何個も飛ばしてきた。


「なっ! くっ!」


避ける事は出来ず直撃する。体を貫く程の威力ではなかったがそれでも近距離での威力としては十分だった。

痛みのあまり思わず膝をつく。その瞬間を死徒は見逃さず、直ぐにとどめの一撃となる肉塊を投げる。

痛みを堪えながらギリギリ避ける事が出来た。しかし


「ちっ!」


激痛に耐え切れず吐血してしまう。恐らく横腹に当たった時に内臓が傷ついたんだろう。


(くそっ、やられた! このままじゃ......いやその前にあいつを倒さないと)


俺は刀を支えになんとか立ち上がる。しかし痛みで考えも甘くなっており、飛んできた肉塊を避けようとせず刀で斬りつけた。当然速度の出てる肉塊を簡単に斬る事は出来ず吹き飛ばされる。


「くっ!」


直撃してしまい血を吐き倒れ伏す。意識が朦朧としその場から起き上がることもできない。死徒の方は投石の準備をしだす。どうやら一度口から出して、肉塊を投げているのは正確に当てる為らしい。だが、今更それがわかった所でどうしようもない。


(クソ......体が、動かねぇ......)


起き上がることのできない俺には次の投石を避ける事は不可能だ。


「これで終わりだ!」


死徒が大きく振りかぶり肉塊を投げたその時、


『起きろ!!』


何処からか声が聞こえた。と同時に俺は地面を蹴って横に飛んでいた。


「避けられた!?」


死徒も驚いている。確実に仕留めたと思った相手が、うつ伏せの体制から避けられたのだから。

さらにはゆっくりと立ち上がり刀を構えている。ここでようやく俺の意識はっきりする。


(これは一体......俺が避けたのか? いや、まさか......)


無意識のうちに自分の体が動かされていた。その事に心当たりがある。しかし、今はそれを考えるよりも死徒を倒す事が先だと考える。

感覚が薄くなっているのか、何故か痛みが少しだけ引いている。お陰で体が動くようになった。


「何故かは知らないが、いや少し心当たりはあるが、どちらにせよ、これでお前を倒せるようになったんだ」


痛みを堪えながら深呼吸をし息を整え。


「さぁ、覚悟を決めな!」


最早自分の決め台詞となった言葉を放つ。


----------------------


自分で言うのもあれだが、俺の動きはさっきまでとは全く別物といいほど良くなっている。特に言えば避け方。先程までは死徒に近づくために最小限の動きで避けるという形だったが今は、


(極力傷が痛まない避け方! それとさっきから肉塊を直でに受けた時見た肉塊の構図。あの肉塊は中心に固めた肉塊を置きその上を薄い肉を何枚も重ねている。確かにそれは中心は硬いけどその周りは脆い!)


飛んでくる肉塊を半身だけ避け、刀で当たりのそうな周りの部分だけを斬っている。


(痛い所は息を吸ってその空気で傷んだ部分を多少ながら補強する。これなら傷も痛まず前に進める!)


みるみるうちに死徒との距離が縮まる。


「なっ! また避けた!?」


死徒の放つ肉塊は大砲と同じで、球の装填に時間がかかる。更に距離を詰めて再び懐に入る。しかし死徒もそれはわかっていたらしく口を丸めていた。

俺が射程距離に入ったタイミングで打つ。刀を地面に突き刺しそれを軸に上に飛び避ける。

空中の俺を掴もうと死徒が手を伸ばす。けれどそれを障害とせず、俺は腕を難なく斬り落とす。

その後死徒の背後に着地した俺は、死徒が振り向くより早く刀を抜き、


「これで、終わりだ!」


頸を斬り落とした。


------------------------


(山に入って結構進んだはず、ここら辺で岩......いや肉塊の数が増えてる。この先......)


アルトという子に会ったことのないので、私は生きてることを信じて肉塊が増えてる山の奥を進んでいた。


(それにしても、すごい異臭。落ちてる肉塊から腐った匂いがしてる)


特別鼻がいいという訳ではないが、それでもこの匂いはきつかった。けれど異臭とは別に人の血の匂いがしていることには気づいていた。


(匂いから出血量はそんな多くないけど、鈍い匂いがする。急がないと......)


私は山を駆けた。


------------------------


倒された死徒は俺の背後で灰のように消えていく。

瞬間、全身に強烈な痛みが走った。


「くっ! まあ、この傷だ。さすがに無理しすぎたか、辛いけどまずは山を降りねぇと」


そう言い、歩き始める。

出血の量は少ないが傷を受けた場所が悪く内臓も傷ついている状態だった。

さっき覚えたやり方を駆使し、少しずつ確実に歩いている。


(クソッ! 意識が朦朧としてきた。なんとか山を降りるまで耐えてくれ)


そう願った時だった。


「弱ってる人間みっけ」


声のする方を見てみると、そこにはさっきのとは別の、新手の死徒がいた。


(まだ居たのかよ! 全部町の方に行ったと思ってたが......くそがっ!)


右手で痛む腹部を抑えながら左手で刀を構える。しかしそれは、死徒から見れば弱った子鹿が最後の力を持ってライオンに威嚇しているようなもの。獲物であることは変わりない。

目の前の死徒が姿を消す。正確には間合いを取りながら走っただけだが、今の俺にはそれすら反応するのが厳しい。

ふと左側をみると偶然にもそこに死徒がいた。

咄嗟に刀で防御したため直撃では避けたが登ってきた山の方に蹴り飛ばされてしまった。

立ち上がれない。体を支え立っている事ですら精一杯の俺には立ち上がって死徒を倒す力は残っていない。


「やっぱり人間は弱いな。今楽にしてやる」


死徒が再び迫ってくる。次喰らえば確実に死ぬだろう。けれど避ける事も出来ない。立ち上がろうとしても傷ついた内臓が痛み、血を吐いてしまう。


(死ぬ訳にはいかない。それでも死にそうだ)


意思以上に体が耐えられない。このままじゃ死んでしまう。

死徒の攻撃が当たる刹那。俺の意思とは()()の左腕が動き、迫ってきていた死徒の腕を斬り落とした。


(またか、けどもう体が、意識が)


そのまま俺はうつ伏せに倒れる。

何が起きたかわからない死徒は、斬れた自分の腕の事を無視して俺にトドメを刺そうともう片方の腕で殴る。

しかし、その腕はまた別の方向からの攻撃によって阻止される。


「次から次へと! なんなんだよ!」


死徒は腕が攻撃された後方を見るとそこには、銃を構える少女がいた。


「てめぇ、死徒狩りか! クソが! 死ねぇ!」


死徒は再生した腕で少女に掴みかかろうとしたか、その手は届くことなく、


「な、何が起きた?」


音もなく一秒にも満たない。その一瞬で少女は死徒の頸を斬り落とした。


「あなたが、アルト君? 無事?」


その一部始終を見ていた俺は死徒が死んだのを確認し、少女に声をかけられる直前で意識が途絶えた。

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