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ディフェレンター  作者: 論です
2章 キマイラ編
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78話 見る者達の思い

今回、学園から提示された遠征の目的は北陸へ繋がる道を確保する事。事前調査で俺達が調べた廃道からだいぶ離れた森に拠点を置き、数日間かけて範囲を広げながら調査していくという。

そして俺達はその遠征の中でヒュウガの目的である廃道に捕らわれている動物達を助けなければならない。

一度の遠征に二つの目的。難易度でいえば遠征参加が二度目の奴が行うレベルのものじゃない。

それでもやらなきゃいけないのが今の俺の立場だ。例え、俺の役割が()()()()()()であろうとも、俺はその役割をこなす。


------------------------


前回の遠征でメンバーの欠けていないチームは再編成する必要がないため、今回の遠征でも俺はミアとヒュウガと同じチームになった。おかげで目的のための作戦とかを話し合えると思っていたのだが......拠点の設営中や装備の点検中、タイミングを考えて自由時間に声をかけてみたが、ヒュウガは俺のことを高身長で見下ろすだけで口を開くことはなかった。

何か理由があるのかと俺は思考を巡らせる。

そういえば、生徒長曰く、学園としては廃道に用がない現状はそちらを調べないつもりらしい。つまり俺達は学園の目を盗んでヒュウガの目的を遂行することになる。俺達の行動がバレないように無視してるのかと思ったが、どちらかといえば周りに人がいない時に話しかけていたのでその線も薄いだろう。となると単に嫌われてるだけというのもありえる。だからと言ってここまで露骨に嫌わなくてもいいと思うが......


「大丈夫?」


俺の頭を抱え考えてる時、俺の様子をどう捉えたのかわからないがミアが心配そうに声をかけてきた。俺は少し遅れて反応する。


「え、あっ、何が?」

「なんか落ち込んでるように見える」

「別に落ち込んでるはないけど......」


そう見えてしまうほどだったのだろうか。

確かに先日の、遠征前の会談で多分俺はヒュウガの地雷を踏んだだろうし、そのことを引きずってあの日以来話せてない。

それが今日もとなると、俺自身も自覚してないうちに落ち込んでいたということなのか。


「何かあったなら話して。私はアルトのパートナーだから」


ミアは優しい声で言った。

常々思ってはいるがこういう時は特にだ。ミアがパートナーで良かったと思う。


「ありがとう」


俺は一言添えて今考えてること、思ってることを話した。


------------------------


「話してくれてありがとう」


聞き終えたミアが最初に言ったのは感謝の言葉だった。話してるのは俺の方だと言うのに、いやそれもミアの優しさなんだろう。

そう勝手に納得する。

俺が感心している隣でミアは何か思いついたように口を開く。


「もしかしたら、それはヒュウガさんがアルトや自分のことを考えてだと思う」

「それはないと思うけど、一応聞く。どうしてだ?」


俺の反応を見てミアは「相変わらずだね」と苦笑して話し出す。


「ヒュウガさんは色んな意味で多くの人に見られることがある。だからアルトの印象悪くしないために、人目の多い遠征ではあまり見られないようにしてるんだと思う」

「そうかぁ?」

「うん、多分そうだよ。生徒長達も言ってたけど、ヒュウガさんは本当は優しいから、表に出さなくても、ちゃんとアルトのことを大事に考えてると思う」

「うーん、あんま信じられないけど、ミアが言うならそうなんだろうな」

「うん、だから変に落ち込まなくて大丈夫」


そう言って優しく微笑むミアを見て、本当に、パートナーがミアで良かったと心から思う。


「ありがとうミア、助かっ」

「アルト・シャドウ。少しいいですか?」


俺が言い終えるよりも早く、誰かの声がかけられた。声の主へと目を向けると、そこに居たのは今回も同じチームのアスエ・カルリ、副生徒長だった。まあ、喋り方で何となくわかったったけど。


「別にいいですけど、ここじゃダメなんですか?」

「あなたに用があります。可能であれば、あなたと二人で話がしたい」


俺は一度ミアの方を見る。目が合うと俺の考えを聞き取ったのか「私は大丈夫」と少し不安げに言った。どこか大丈夫なんだよ。とは思うが副生徒長の話も無視できる内容とは思えない。

俺は少し考え、副生徒長の話を聞くことにした。ミアには「すぐ戻ってくる。だから待っててくれ」とだけ言い副生徒長の後を着いて行った。


------------------------


「で、話ってなんですか?」」


人気のいない場所へと移動した俺は副生徒長に話を聞く。


「早く、ミア・ヴァイズ・レットの所へ戻りたいですか?」

「そりゃ、まあ......」


今考えてることを当てられたこととその内容を知られたことの気まずさと恥ずかしさが込み上げる。


「そんなことより、早く話してくれませんか?」


照れ隠すように俺は副生徒長に話を促す。すると副生徒長は「わかりました」と向き直り、瞑っている目を開く。白く濁ったような瞳がこちらを見つめ思いもよらないことを口にする。


「私は、ヒュウガ・サキリの監視を命じられています」

「..................は?」


何を言っているのかわからなかった。いや、意味はわかる。意味はわかるがその理由がわからなかった。追求しようと口を動かすが焦り過ぎてか声が出ない。それでも俺の意思を読み取ったらしい副生徒長が淡々と語る。


「誰からかは言えません。ですが、気にして欲しいのはそこではありません」

「......どういう、ことですか?」


ようやく絞り出した言葉もちゃんと言葉になっていたか怪しい。それほどまでに俺自身、動揺していたからだ。けれど副生徒長はそんな俺のことはほとんど気にせず話を続ける。


「ヒュウガ・サキリは自分が監視されてることを知っています。その上で先程ミア・ヴァイズ・レットが言ってた通り、ヒュウガ・サキリはあなた方のことを気にかけています。ですのでどうか......」

『あの男を責めないでくれ、か?』


未だ落ち着けていない俺の代わりに()()()が入れ替わり聞く。俺達の入れ替わりに気づいたのか、副生徒長はなんとも言えない表情で「はい。そういうことです」と答えた。


『それはあの男次第だ。と言ってもオレが責めようとこの馬鹿(アルト)は責めることはほとんどないだろうがな』

「おい、誰が馬鹿だ」

『うるせぇ、黙ってろ。とにかくだ。悩んでたのはこっちだが、別に、それをあんたが気にする必要はねぇってことだ』


()()()なりの優しさか、静かに言うあいつに副生徒長はどこか安心した様子で「ありがとうございます」と呟いた。


------------------------


「彼をお願いします」


話が終わりミアの所へ戻る途中、俺の後ろを歩く副生徒長が小さく呟いた。

その時の副生徒長の表情はどこか、手に入らないものを見つめるような、そんな()()を感じた。

結構意味深なことを残して終わりましたが(今更)今年のディフェレンターはこれで書き納めです!

来年もよろしくお願いします!!

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