75話 例外のいる依頼
とあるゲームにハマって時間を忘れた論です。二週間後テストの論です。
朝早くから馬車に揺らされるのはこれで何度目だろうか。朝が苦手な以上、早朝の移動はまだ慣れないがさすがに依頼に対する緊張はもうしない。
前回はミアの件もありギクシャクしていたが今回はそういうことも無く、いつも通りの依頼だ。
ただ一つのことだけを除いては......
「へぇ、二人はいつもこんな感じで依頼に行ってたんだ。なんかデートみたいだね」
......一体誰に話しかけているのやら。
寂しく一人で話しているのは今回のイレギュラー、ハヤテだ。
ハヤテがいるならということで今回の依頼はいつもより馬車が一台多くあり、そこをハヤテの実質的なパートナーのポチが独占している。
来るまでずっと飛んでたら疲れるだろうということで用意されたが......鳥のくせに贅沢なものだ。
ポチは荷台に収まるよう体を丸めて眠っている。
ちなみにハヤテはポチと離れて俺やミアと同じ馬車に乗っている。しかもわざとらしく、向かいう会う俺とミアの間に座っている。
正直邪魔くさい。
では、何故今回ハヤテ達と依頼に行くことになったのか、というのもそもそも今回の依頼は学園や町街からではなく、ヒュウガからの依頼である。
まあ、例のアレだ。次の遠征先の俺らの目的である動物達に関する情報集めと事前調査をしてきて欲しいとの事。
ハヤテも連れていくことを条件に依頼されたのである。
「事前調査って言っても何を調べろってんだ?」
「えっと、なんかトンネルを調べてきて欲しいって言われたけど......」
「トンネルって......てかなんであいつは自分で行かないんだよ」
「ヒュウガさんも忙しいんだよ。あの人の暇なところあまり見ないし」
「俺には暇人にしか見えないんだが?」
なんならジャッツに仕事を押し付けて暇を取るほどだ。単にめんどくさかっただけだろう。
俺の中でヒュウガの印象が悪い方に向かってる一方で出発から約一時間半、目的地から少し離れた場所に到着した。
俺達はここで馬車を降り、徒歩で目的にであるトンネルに向かう。
「なんでポチがいるのに徒歩なんだよ」
「ポチが疲れるでしょ?」
「......」
俺達は徒歩で向かった。
目的地であるトンネルに着いた俺はあることに気づく。
「ここ、太陽届かないじゃん」
来るまでは日中ということもあり死徒と遭遇することは無かったため気にしてなかったが、トンネルはトンネル。太陽の届かないトンネルである。恐らく、いや間違いなく死徒と遭遇するだろう。
ミアがいるから大丈夫だと思うが、それでも馬車の中ではなかった緊張がやってくる。
(命のやり取り。流石に慣れることはないか)
緊張を誤魔化すように俺は一歩を踏み出したその時、
「怖いのは恥じることじゃない」
ミアが俺の手を握りそう呟いた。
「音でわかる。アルトが緊張してるのは。でも誤魔化さなくていい。アルトは私が守るから」
「ミア」
その笑顔は柔らかなものだった。
なんというか。心が安らぐというか......いつの間にか緊張はどこかへ消え、少し気持ちが楽になったような気がする。
「ありがとう。もう大丈夫」
ミアの笑顔に答えるように俺も笑顔を向ける。
「それと、別に怖い訳じゃないから。単に緊張してただけだから。そこ間違えないで」
ちょっと強がりを加えて、
「おーいお二人さん、僕いること忘れてないー? 二人の仲の良さはわかったからさ、せめて僕を入れて会話してー。てかそこで止まらないで早く進んでー。日暮れちゃうよー」
後ろで鬱陶しさを放つハヤテを無視して俺とミアは歩き出す。
ああ、鬱陶しい!
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トンネルの中はそれなりに明るかった。というか、
「電気、通ってんだな」
「そういえばそうだね」
聞いた話ではここは数年前に廃道となったはずだ。それが今でも電気が通っているのはどういうことだろうか。
「つい最近まで誰かがいたとかか?」
「それはそれで怖いね」
ハヤテが苦笑しながら肩を震わせる。
確かに、人がいるということは必ずしも朗報ではない。それにもしかしたらここにいたのが人ではなく死徒という可能性もある。油断は出来ない。
「アルト、あれ」
突然、ミアが足を止め声を掛ける。
何か見つけたのか、壁の方を指している。
「なんだあれ......」
目を凝らすとその部分だけ他の壁とは微妙に違う模様をしていた。近づき触れると少し壁が動いた。壁は錆びていて動きにくかったが俺の力でも開けられた。
こちらには電気が通ってなく、ただ真っ暗な空間が広がる。ミアとハヤテと顔を見合せ俺達は部屋に足を踏み入れる。
明かりはハヤテに任せ、俺とミアはハヤテを守るような形で部屋を進む。ポチも入るくらい扉は大きかったが見張りが欲しいので外で待機してもらった。
進むとよくわかるがかなり広い部屋だ。多分学園の食堂くらいある。そして何より、色々な機材や書類が部屋のあちこちに置いている。
「ここに置いてあるのは全部動物の本だね。マイナーのものも結構ある」
ハヤテが積み上げられた本を照らしながら言う。
「ハヤテってこういうの詳しいのか?」
「まあね。異能力の関係もあって結構調べてるよ」
へぇ、まあどうでもいいが。
「アルト、君今どうでもいいって思ったでしょ?言っとくけど僕、学園で一番頭いいからね」
へぇ、どうでも......
「え、まじ?ミアよりも頭いいの!?」
ミアに視線を移すと、急に話題を振られたことに驚いたのか少し顔を赤らめて答える。
「うん。ハヤテは物知りだから、学園では一番頭いい......」
「はぁ、こいつが......信じられん」
むしろ普段のこいつの行いを見て信じられる方が少ないだろう。まじで信じられん。
「ふん、まあいいよ。今度のテストで君が教えてくれって言っても絶対に教えてあげないから」
「ハヤテ様。私、信じておりました」
「アルト......」
ミアの呆れるような視線が胸に刺さる。
お願い、そんな目で見ないで!
「それはいいとして、じゃあハヤテならこれがどんな意味かわかるか?」
俺は部屋の隅に電源の入ったパソコンを見つけ、そこに映し出された記事の内容をハヤテに聞く。
呼ばれたハヤテは俺の隣に移動し、マウスを動かして書かれた内容に目を通す。全部読み終えるとハヤテは何やら眉間に皺を寄せパソコンを睨みつける。
どうしたのか聞いて見ようとした時、ハヤテは内容について話し出した。
「これはキメラに関する記事だね」
「キメラ? なんだそれは?」
毎度の如く初めて聞く単語に俺は首を傾げるがどうやら今回は違うようだ。隣にいるミアと目が合い、俺は「知ってるか?」と聞くがミアは首を横に振り「わからない」と答えた。
俺らのやり取りに気づいたのかパソコンの内容を全て読み終えたハヤテが丁寧に説明してくれた。のだがその様子と内容はあまりにも痛々しかった。
「この記事によるとキメラっていうのは」
怒りを露にしたハヤテは声を震わせながら呟いた。
「動物の命を弄ぶ糞実験らしい」
その様子に俺は疑問と同情と、それ以上の恐怖をこの例外に対して明確に覚えた。
三千文字未満に短さを感じる論です。次回からもうすこし長くすると思います。




