74話 信じる理由
学園に着いたオレは真っ先にジャッツのいる部屋へ行き、あいつの居場所を聞く。
「邪魔するぞ。ジャッツさん、ヒュウガが今どこにいるか知ってるか?」
「なんだ急に、せめてノックをしろアルト......いや、もう一人の方か」
ジャッツもなかなか人を見る目があるらしく、最初は勢いに押されていたが冷静になった途端オレがいつものアルトじゃないと理解したようだ。
「よく気づいたな」
「見ればすぐわかる。それよりヒュウガの居場所だったか、ヒュウガなら外にいると思うはずだ。探してみるといい」
「ああ、邪魔したな」
オレだと気づいたことで特にないか言うこともなく、ジャッツは普通にヒュウガの居場所を教えた。若干トーンが下がったような気がしたが、オレも追求はせず、長居する理由もないからすぐに部屋を出た。
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その後ジャッツに言われた通り外に出て探しているとどちらかといえば会いたくなかった相手に出会った。
「アルト......じゃなくて、もう一人の方の」
「絶殺か」
「......どうかしたの?」
「お前には関係ない」
「そう」
それ以上会話はなく、オレは絶殺の元を離れ......
『なーに、終わろうとしてんだ!バカ!!』
離れようとした時、さっきまで静かだったアイツがうるさく声を上げた。そして無理やり入れ替わり、
「ようミア、久しぶり......でもないか」
「アルト」
「なんか悪いな、この馬鹿昨日から機嫌悪くてさ。今日も気晴らしに街歩いてんだけどちょっと用事が出来て戻ってきたんだ」
「そうだった」
いきなり出てきては人を馬鹿呼ばわりし、自分は楽しそうに話す。随分勝手なことをするアイツに腹が立つが一日体を借りてる以上強く言えなかった。
「それよりさ、ヒュウガ見なかった? ジャッツさんかここら辺にいるって言うからさ」
「ヒュウガさんなら裏にいたよ。一緒に行く?」
「あー......」
『来なくていい』
「来てくれたら助かる」
『おい!』
「わかった」
『おい!』
さらに勝手に話を進められて、オレが入れ替わって口を出す間もなくアイツと絶殺はヒュウガの元へと歩き出していた。
そして探して出してから一分足らずでヒュウガは見つかった。
「やっと来たか。それなりに待たされたな。で、答えは出たか?」
相変わらず全て見透かしたような態度を取るヒュウガは待ちくたびれたように後ろ髪を掻く。
何故そんなに偉そうなのか。オレは溜息をつき、アイツと替わって話し出す。
「話す前に聞かせろ。お前、一体何者だ?」
オレの質問にヒュウガ少し目を細め、やがて呆れたかのように手を挙げ答える。
「何者も何も、俺はただの人間だが? お前の望む答えを出す者でも、お前の未来を示す者でも、お前を許し認める者でもないが?」
含んだような言い方をするヒュウガに腹が立つがそれ以上に、
「お前、何を知ってる?」
ヒュウガの知る何かに疑念と不安を感じていた。
「それをお前らに、語ることは出来ない」
「なんでだ? なんで、語れない!!」
叫ぶように聞くオレと隣に居る絶殺を見て、少し困った様子で、
「悪いな」
と濁すように答えた。
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言えない。語れない。喋れない。
そう言って真実を知る者者は真実を隠してきた。オレが他人を信じられないのもそのせいだ。
オレにとって真実を知れないのは裏切られるより腹立たしく、辛いことだ。だからという訳じゃないがアイツの事は信頼してるし、他にも信頼を置いてる奴は居る。表の世界には。
けどこの男は、
湧き上がる怒りと殺意を抑えるように唇を噛みしめる。口の中に広がる鉄の味と痛みに冷静を思い出し、若干声を震わせながら言う。
「昨日も言った通りだ。お前が何も話さないならオレはお前を信用しない。協力なんてもってのほかだ。この話はオレには関係ないものとしてみる」
言うことは言った。話す気のない、信用出来ない男と長くいるだけ不快になる。
「アルト」
オレがその場を去ろうと踵を返したその時、ヒュウガが引き止めた。
振り返り睨みつけるとヒュウガは頭を下げていた。
「何してんだ?」
ヒュウガの行動の訳が分からず、恐る恐る聞く。
するとヒュウガは頭を下げたまま話し出す。
「悪いとは思ってる。身勝手な要求ばかりしてお前らに何も言ってやれないこと、本当に悪いと思ってる。けどこれは俺だけの問題じゃないから、俺だけの問題じゃないからまだ言えない」
「お前だけの問題じゃないのに言えない? 矛盾してんじゃねぇか。他を巻き込む話なら言えよ。教えろよ! 知ってることを教えないだけで、いざそん時になったらどんだけの」
「悪いと思ってる」
オレが言い終えるよりも早く、ヒュウガはただ一言を言い続けた。
どこまでも曖昧な答えばかりを述べるヒュウガにもはや苛立ちを通り越し、シンプルな殺意と聞くだけ無駄と呆れた。
そしてゆっくりと刀に手を掛ける。柄を握り刀を抜こうとしたその時、不意にアイツが入れ替わるよう言ってきた。と思えば、オレの返事を待つことなく強制的に入れ替わりヒュウガに向かって話し出す。
「ヒュウガ、いくつか質問していいか?」
「雑魚の方か、答えられる範囲なら」
「お前さ、ちょっとは状況考えようぜ? 火に油を注ぐなよ」
オレとの判断の付け方にアイツは呆れながら文句を言い話を進める。
「まず、お前は俺ともう一人のオレについて何を知ってる?」
「言えない」
「言えない理由は?」
「それも言えない」
「誰かに口止めされてるのか?」
「......それも言えない」
言えないの一点張りにアイツは思わず頭を抱える。
「黙秘の猛者かよ」
「アルト、ヒュウガさんは喋ってるから黙秘じゃない」
「確かに」
絶殺との馬鹿なやり取りを混ぜながらアイツは少し話の趣旨をずらす。
「じゃあヒュウガ、お前の話せないことは俺らに頼んだことに関してもに含まれるか?」
「......いや、そこは含まれない。俺が頼んだことに関しては持ってる情報は全て伝える。ただ情報源だけは言えない」
珍しく鋭い質問をするアイツに少し、ほんの少しだけ感心しながらオレはヒュウガの答えに首を傾げる。
何か納得がいったのかアイツは頷いた後、話を続ける。
「そうか、じゃあ次の質問だ」
アイツは一拍置き、目を細め、ヒュウガを睨むように聞いた。
「お前、どうやって俺らにその情報が正しいと説明する?どうやって俺らを信用させる?」
アイツの質問に対し、ヒュウガは困ったようにため息を吐く。
「悪いが、俺の持つ情報が正しいと説明する術は今は無い。お前らを信用させるのは無理だろう。代わりにと言ってはあれだが、一つ約束してやる」
約束とそう言ったヒュウガにオレは何故か恐怖と胸騒ぎを感じた。
「俺の持つ情報が誤情報だった場合、俺がお前らを裏切った場合」
ヒュウガは携える自分の刀に手を置き、少しだけ刀身を見せ真剣な表情で言う。
「俺はお前らの目の前で、この命を絶つ」
馬鹿げた約束をするヒュウガ。しかしそれを聞いたアイツは低い声で「そうか」と短く頷いた。
普段なら「そこまでしなくていい」や「大袈裟だ」などの一言を言うだろうアイツ
があっさりと納得ことにこれまた恐怖を感じる。
こいつらはなんでここまで落ち着いていられるのだろうか、その理由はわからないし、聞くことも出来ない。ただ、こいつらの間でオレには計り知れない考えが交錯している。それだけが理解出来た。
少しの沈黙後、アイツがもう一度口を開く。
「最後の質問だ。俺らはお前を信じていいのか?」
ヒュウガは軽く深呼吸をし、真っ直ぐこちらを見つめ答える。
「どちらでも構わない。信じるも信じないも、切り捨てるもそれは全てお前らの意思だ。自分の意思に従え」
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重い沈黙の中、アイツが糸が切れたかのようにため息を吐く。
そして隣にいる絶殺に軽く笑い掛ける。釣られるように絶殺も笑い返すとその笑顔に思わずアイツは顔を赤くして隠すように手で抑える。
何やってんだ。
その後落ち着いたアイツはオレへ、周りにも聞こえるように話し出した。
「ここまで言われても正直信じるなんて簡単に言えないな。結局根本的な疑問は解決してないからな」
飽き飽きとした口調でアイツは脱力しながらヒュウガを見て、
「でもまあ、俺はお前を信じるよ」
微笑み優しげな声で言った。
「お前の色々知ってそうな雰囲気醸し出す癖に何も喋らないのは確かに腹立つけど、今話せないことはそのうち喋らせる」
恥ずかしいのか後ろ髪を掻きながら「それに」と言葉を紡ぐ。
「お前のことを絶対に信頼してる人がいるからな。俺もお前のことを信じてみてもいいと思う」
アイツはにかんだ笑顔を見せる。それを見てヒュウガは心底嬉しそうに、「ありがとな」と返した。
「という訳なんだが、お前はどうする?」
唐突に呟くアイツに「何が?」と思ったがそれを考える必要は無いとすぐに理解する。
(こいつは、ほんとに全くだな)
今までの会話は全部前置きだとアイツは笑ってみせる。だからオレは「回りくどいな」と息を吐きながら入れ替わり、オレは口を開く。
「オレはお前を信じることは出来ない。だが......」
目の前の、何かを知ってそうな癖に何も話さない、気に食わない男に、アイツが用意した前座、理由、そして覚悟に答えるように、オレは自分の意志を伝える。
「お前を信じるアイツらのことを信じてもいい。協力もアイツらに協力する。それがオレの意志だ!オレの、信じる理由だ!!」
夏休み中に出すとか言ったのに遅くなってすみません。色々忙しかったんです(ゲームのイベントとかイベントとかイベント)




