72話 わがままと話
名前回ハマったかもしれん
翌日、オレはあいつの体を借りて街中を歩いていた。と言っても景色自体は視覚の共有で何度も見たことある。でも、ただ見てるだけと実際に歩いてみるとはだいぶ違うもので、それなりに楽しい。
『楽しんでもらえてるならいいんだが、それよりよく昨日の今日で街に出たいと思ったな』
「別に、ちょっとわがまま言ってみようと思っただけだ。後、昨日の今日だからだ」
昨日の夜のヒュウガとの衝突でオレはあいつの居場所の雰囲気を悪くした。
オレ自身、間違ったことを言ったつもりはないがあいつの居場所を壊すようなことをした罪悪感は多少だがある。だからちょっとした気分転換のようなものだ。
「にしても、すごい賑わいだな」
人混みを抜け、近くのベンチに腰を下ろす。
さっきまで歩いていた大通りを傍から見て、昼も夜も変わらない様子に感心する。
東洋は他のところよりも人口が多いと言うから当たり前なんだろうが、それでもこの人数は圧巻だ。
そう思いながら背もたれに寄りかかると妙に甲高い声が聞こえた。
「おーい、アルトー」
声のする方へ視線を向け...落胆する。
「なんだ。お前か」
「なんだとはなんだい。折角来てやったのに」
「お前に来てくれなんて一言も言ってねぇよ」
「酷いやつだなぁアルト...は...え?」
「どうした?」
オレの声を聞いたハヤテが急に石になったかのように固まった。かと思うと、鋭い目でこちらを見つめ低い声で言った。
「君...もう一人の方のアルトか...」
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「よくわかったな」
「呼び方がね...いつものアルトなら名前で呼ぶから」
絶殺の時と同じ言われ方をされ少し苛立ち、ハヤテを睨みつける。
「また呼び方か...お前らにとって呼び方はそんなに大事か?」
「まあ、それなりにはね」
とハヤテは笑って流す。それを見てオレはふと思った。
「オレはお前のことを弱いと思っていたが、意外とそうでもないんだな」
「失礼だね。これでも一応この学園の生徒なんだよ?それに...」
ハヤテの笑顔は緩いものから一瞬で鋭いものへと変わった。
「一年は生き延びてるんだ。舐めないで欲しいな」
「ッ!?」
オレは離れるようにベンチから飛び退く。
(なんだ今の...まさかオレは今...)
ゾッとするような不気味さ、鳥肌を感じる寒気、オレは今、ハヤテの殺気に怯んだ。
「安心して欲しい。僕は別に君を殺しに来た訳じゃない。それに、僕がどんなに頑張っても僕一人じゃ君は殺せないからね」
ハヤテはそう言うとオレがさっきまで座ってたベンチにゆっくりと座った。
ハヤテから殺気が無くなったところでオレも、少しハヤテから距離をとってベンチの端に座る。
多少恐怖を残しながらも、オレはハヤテの方を向き聞いた。
「...で?お前は何しに来た?最初の驚きようからして元々オレがいる前提では来てないはずだ」
「普段のアルトと違って頭はキレるんだね。でもそれじゃ半分だよ。半分は違う」
採点するようにハヤテは言う。
そのいつも通りのような様子に少しだけ安心するもオレの警戒が解けることはなかった。
「確かに最初から君がいたのは意外だったけど、目的は君と会話することさ。もう一人の方の君でも君のことは呼べるんでしょ?」
「オレが出てくるかは別だがな」
「出てこないなら出てこないで普通に話して後で共有して貰えればいいだけ」
「ちっ」
オレがなんと言おうとハヤテはちゃんとした返しを考えており、言い合いじゃ勝てないことを理解したオレは口を閉じる。
それを見てハヤテが本題を話し出した。
「昨日ヒュウガさんが言ってた廃道ね、実は僕とポチが出会った場所で、この学園に入る理由にもなった場所なんだ」
次回、ハヤテの過去回




