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ディフェレンター  作者: 論です
2章 キマイラ編
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65話 信頼と居場所

週一ペースはよろしくないな...

「それで......俺の元へやって来たと......」

「まあ、そうですね。ミアがいたのは意外でしたけど」

「私も......アルトがいるとは思ってなかった......」

「俺もお前らが来るとは思ってなかったよ」


机を挟んで向かいに座る生徒長改め、ジャッツが小難しそうな顔をして言った。


「はぁ、どうせあいつの差し金だろう。全く......」


あいつ......。

ジャッツは秘書のラインの淹れた紅茶を一口飲み、落ち着いた様子で話し出した。


「残念な事に、俺がお前らに流せる話はそこまで多くない。いくつかあいつに口止めされてるものがあるからな」


またあいつ......。


「さっきら出てるあいつってヒュウガの事ですか?」

「そうだ。俺とヒュウガは長い付き合いでな、この学園入ってからずっと......同じ最年長だから十年弱というところか。それくらいは長くいる。だからある程度互いに考えていることはわかっているはずだ」


途端、ジャッツの表情が暗くなった。どこか落ち込んでいるような表情だ。曇った表情に少し弱々しい声でジャッツは言った。


「俺は最近、あいつが何を考えているかわからない。わかってやれてない」


ジャッツのその台詞を聞いて後ろ立っていたラインも顔を伏せ、悲しそうな表情を浮かべている。

何か地雷踏んだか?

そう思ったがジャッツはその上で話し出した。


「俺が生徒長になったのは今から六年くらい前の事だ。当時の学園は教師以外に生徒をまとめるものがいなかった。もちろん、生徒長という立場は存在しなかった。学園をまとめているのは学園長一人だけ。だが、当然まとまるはずがない。色々生徒の感情に刺さる不安とか何やらが重なったこともあってな。結果、多くの者は自分勝手に生き、依頼や遠征で無惨に死んだ。俺も何度も死にかけたし、パートナーを亡くしたこともあった。もちろんその事を不満に思っていた。けれど、俺はこれがここでは当たり前なんだと、どこか納得していた。そんな時、疎遠気味でさほど接点のなかったあいつ......ヒュウガが俺に生徒長をやってくれと頼んできた。あいつは他国の学園には生徒長と言う立場があることを知っていて、それを俺に頼んできた。何事かと、何故お前に頼まれなければならないのだと思った。けど、あいつは俺に『お前ならできる』とそう言った。けど、俺もそう簡単に首を縦には振れなかったよ。これでもしまとめられなければ、俺はこの学園でいられなくなるかもしれない。そんな恐怖と緊張感があったからだ。それでもあいつはしつこく俺に頼んできた。二週間くらい付き纏われたか。あまりにもしつこいもんだから言い返したさ。『人に頼むくらいなら自分でやればをいいだろ!』って。そしたらあいつは『俺じゃ意味が無い。お前がやることに意味がある』と言った。我ながらちょろかったと思うよ。そんな上面だけとしか思えない期待の言葉に応えようとしたのだからな」


話していくうちにジャッツは微かに笑顔を取り戻していた。思い出話が楽しくなってきたのだろう。少し口調が砕けてきている。


「で、実際生徒長になってみた訳だが、それはもうさんざんだったさ。大して強くもない今まで同じ立場だった奴がいきなり自分より上の立場になったんだ、他の奴からすれば溜まったもんじゃないだろう。わかりやすいくらいに反感は受けたし、なんなら暗殺すらされかけた」

「暗殺って......」

「当時じゃ普通だ。けどその都度ヒュウガが俺を守ってくれた『俺が頼んだんだ。頼んだ事で死なれたら後味悪いし、お前以外にこの立場は務まらない』と言ってな。だから俺も続けようと思ったんだ」

「あのヒュウガが? 今じゃありえん......」


俺が声を震わせながら言うとラインが「意外とそうでもないですよ」と否定した。


「ヒュウガさん、素直じゃないだけ生徒長と同じくらい皆さんのこと気にかけてます。それは当時から変わってません」

「そうなんですか?」


言われてみれば何かとヒュウガに守られていたような......守られていた......守られ......殺されかけた記憶しかないな。


「すみません。ちょっとわかりません」

「あれ?」


俺の反応にラインがおかしそうに首を傾げる。


「はぁ、話を戻すぞ。俺が生徒長になって初めての遠征で俺はチームの制度を導入した。それまではなかったからな。そしてら生徒の死亡率が今までで一番低いものだった。そのお陰か俺はその日から正式に生徒長として他の生徒から認められた。まあ俺自身は何もしてなく、全てあいつのお陰だかな」


ジャッツは話を区切るように紅茶を含み、そして自分を卑下するかのように言った。


「俺に、この場に立つ資格なんてないんだよ......」


ジャッツが生徒長になるまでの出来事。それは一筋縄ではない。他人に尊敬され、時には仲間に殺されかけた。

それでもこの人は今この立場に立っている。

それは多分。


「凄いことだと思います......」


俺と同じように話を聞いていたミアが呟いた。


「確かに生徒長は何をやってないかもしれないですけど......」

「ミア? もうちょっと包んであげて?」


俺の台詞にミアは慌てて口を抑える。その様子にジャッツは「いいよ続けて」と少し困ったような笑う。

その笑顔......というか苦笑いを見てミアはゆっくりと言葉を紡ぎ出した。


「生徒長は何もやってないかもしれない......ヒュウガさんに守られていただけかもしれない.....ですけど、それでも、今そこにいるのは、生徒長が自分でなろうとしたから......なれたんだと思います......」


静かな部屋でミアの声が透き通る。


「生徒長が誰よりもこの学園のことを思って、努力したから......ヒュウガさんも、生徒長が途中で諦めるような人だったら守ろうとなんてしなかった。と思います......」


それはとても弱々しい声だ。


「私は、絶殺という求めてない......ただの模範としてこの学園の上に立たされました......」


その弱々しさは表情からも窺える。


「強くなったことは嬉しかった。でも......賞賛されて嬉しいものではなかった。それしか自分の居場所がないと思ったから......」


胸を抑えるその様子に思わず目を背けてしまう程に弱々しい。


「でも、生徒長は、()()()()()()()その場所を望んだから、求めたから、そして、周りの皆さんが認めたからある場所です。資格なんて、ないはずがない......生徒長はジャッツさんに相応しい居場所です......」


ミアの声は弱々しい。けれどその言葉は確かに俺達の胸の奥まで届いくほど強かった。

ジャッツも同じように感じたようで。


「ありがとうヴァイズ・レット。少し、気が楽になったよ......」


はにかんだ笑顔を向けた。


------------------------


ゆっくりと紅茶を飲み干した生徒長が再び口を開いた。


「あいつが......ヒュウガが今何を考えているか、俺にもわからない」


気楽になったとは言っていたが自らを悔いてる様子は変わらない。


「それでも、俺にはひとつわかることがある」


ジャッツが『()()』を語るような瞳で言った。


「あいつは俺達を裏切ることはない」


------------------------


話を終え、部屋を後にした俺とミアはいつものようにベンチに腰を掛けていた。


「......」

「......」


沈黙が続く。なんとも気まずい。

ジャッツの話を聞いたからだろうか、妙に空気が重い。何か話題を作らなければ。


「なぁ、ミア......」

「私は......」


俺が話し掛けようとした時、ちょうどミアのタイミングが被てしまった。


「アルト、先いいよ......」

「いや別に、俺はなんかこの沈黙嫌だから話そうと思っただけだからいいよ」

「そう、ありがとう」


ミアは暗い顔をして話し出した。


「生徒長は、ヒュウガさんのことを信頼してた......」

「そうだな」

「多分それは、ヒュウガさんも同じ......」

「......これ聞くのはひどいというか、性格悪いと思うんだけど、どうしてだ?」


俺が聞くとミアは顔をうつ伏せ、悔しそうな表情で呟いた。


「だって、そうじゃなきゃ、()()()()()()()()()()()()()()......」


そうか.....そういう事か。

ミア(こいつ)はまだこんなことを言っていたのか。


「私は誰かに信頼されていい立場じゃない......絶殺の私はいつかその信頼を裏切るから......」


絶殺の私か......。


「アルトは私に、絶殺である以前にパートナーだって言ってくれた......嬉しかった......けど、それは自分の罪から逃げようとしてるだけ......私は絶殺として罪を背追わなきゃいけない......」


だからと弱々しく言葉を紡ぐ、その先にある言葉がわかっているというのに。


「私に居場所なんて......痛っ!」


何もわかってないミアに俺は手刀を放つ。

そして、言う「馬鹿か」と。


「え?」


やり取りにどこかデジャブを感じるが今は置いておこう。

俺は少し強引にミアを引き寄せて話す。


「アルト!?」


いきなり掴まれてびっくりしたのか顔を真っ赤にして狼狽えている。が、気にしてたら話が出来ないので無視だ。


「あのなぁ......何度も言うし、わかってると思うけど、お前は絶殺である以前に俺のパートナーなんだよ! お前の居場所は俺の隣にあるんだよ!」

「でもそれは......」

「俺はお前の逃げ道をつくるためにこの言葉をかけたんじゃない! お前を大切なパートナーだと思ったから、お前にパートナーであって欲しいから言ったんだ!」


俺は嘘が嫌いだ。

まどろっこしいし、騙されると腹立つし、騙すのも気分良くないからな。馬鹿正直にしか話せなくて要領が悪いとエルモアにはよく言われるとけど、嘘をつくよりマシだ。

だからこれも全部俺の正直な気持ちなんだ。


「絶殺である以前にとは言ったけど、ミアが絶殺である事実は多分変わらない。けど、だからなんだ! お前が絶殺であって、罪を背負わなきゃ行けないってんなら、パートナーの俺も一緒に背負ってやるよ! 悩んでやるよ! 苦しんでやるよ! 一緒に、笑ってやるよ!!」


大声を出されたことにミアがビクッと身体を震わせる。若干脅えてすらいるのか? けど関係ない。俺は気にせず言い続ける。


「俺はお前のパートナーだ。たとえ弱くても未熟でも、辛いなら、苦しいなら、助けになってやる。だから俺を頼れ! パートナーを信じろ!」

「は......はい......」


ミアが借りてきた猫のように大人しくなっている。少し言い過ぎたかと思ったが、言わないよりはこれくらい言った方がいいだろう。


「......」

「......」


話を終えた俺はゆっくりミアを離す。

言っておくが、別に見つめ合ってるのが恥ずかしくて離したとかじゃないから。ほんとだから!

当の本人といえば、情報処理しきれてないのか、目をパチパチして固まっている。


「それと、だな......」

「アルトー、ミアー!」


遠くから聞こえるアキハに視線を向けながら言う。


「これも何度も言うけど、お前の居場所になってくれる奴らは俺だけじゃない。あいつらも俺と同じように力を貸してくれる。頼れる相手になってくれる」


こちらに向かってくるアキハ達を確認し、俺はミアに手を差し出す。


「さあ、行こうぜミア。俺達の仲間のいる所へ」

「うん!」


ミアは俺の手を柔らかく握る。

俺もその手を離さないようにしっかり握り、仲間達の元へと歩き出した。

今回は生徒長ことジャッツさんとの会談です。

結構この人との会話は話していい部分と話しちゃいけない部分があったので結構時間かかりました。

少し長くなりましたかね?

もう少しばかり日常回が続きます。あと二、三話くらいですかね。

そこまで行けばだいたい二章の前半が終わります。二章の後半からは戦闘回が続くのでそちらの方も楽しみにしてください。


久しぶりにまともな後書きを書いたような気がします。まあいいでしょう。


最後までご愛読ありがとうございます。次回も是非見てください。

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